大久保 勲の人民元論壇    
     第26号 2007.1.22発行
福山大学経済学部教授
大久保 勲
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今年は人民元の上昇速度が若干速まる
 
 (資料)国家外為管理局発表データにより、21世紀中国総研事務局作製
 
 本稿執筆時点の1月16日の基準値(仲値)は1米ドルが7.7890元となっている。今年は、昨年に比して人民元相場上昇速度が速まると見たい。
 理由は、2006年12月に開かれた中央経済工作会議で、国際収支均衡を今年の最重要課題としていること、2006年の貿易黒字が前年比74%増の1774億ドルとなったこと、外貨準備高は2006年末で1兆663億ドルとなり、年間で2473億ドルも増えてしまったこと、中国人民銀行が2007年1月に《個人外為管理弁法実施細則》を出し、個人が年間に購入することの出来る外貨額を2万ドルから5万ドルに引き上げたが、外貨減らしの点では効果は限定的であると見られること等である。
 それでは今年人民元はどの程度上昇すると見るか。
 2005年7月に人民元が2%切り上がった後、2006年末までに約3.8%上昇した。うち、2006年は年間で3.4%程度の上昇であった。商務部は1月15日付で報告書「貿易の発展と人民元」を発表した。
 人民元が切り上げ前の水準から仮に10%上昇すると見るならば、人民元は切り上げ前の水準から、既に約5.8%切り上がった水準にあり、残りは4.2%となる。そうであるならば、2006年に3.4%上昇した人民元が今年は4%あまり上昇する可能性があるということになる。時期的には、3月の全人代が終わるまでは比較的緩やかに上昇し、第二回米中戦略対話が行なわれる5月に向けて上昇が加速すると見たい。
 
米国の対中貿易赤字は過去最大で、人民元切り上げ圧力が増大
 商務部の薄熙来部長は1月15日に開かれた全国商務工作会議で「貿易黒字の削減は今年、最優先で取り組むべき課題だ」と指摘したとされる。1月10日に発表された税関の輸出入統計では、2006年の中国の対外貿易規模は17606.9億ドル、対前年比23.8%増となり、連続5年20%以上の増加となった。輸出が9690.8億ドル、輸入が7916.1億ドルで、1774.7億ドルの黒字となった。
 2006年12月上旬に開かれた中央経済工作会議では、経済成長、就業、物価、国際収支均衡の四大マクロコントロール目標中、国際収支均衡の促進を既に2007年の経済工作の突出した位置に置くことが決まっている。
 米中間の貿易不均衡の是正を目指す「米中戦略対話」の初会合が2006年12月中旬に開かれた。人民元制度の改革が必要との認識で一致し、米国がそれに協力することで合意した。ただ米国が改革の速度を増すように求めたのに対し、中国は経済の混乱を理由に慎重姿勢を示した。米国はポールソン財務長官を代表にグティエレス商務長官らが出席し、中国は呉儀副首相や金人慶財政相などが参加した。両国は今後の検討課題について「中国の為替制度改革」と発表した。米国が人民元上昇やコピー製品の摘発強化を求めたのに対し、中国は改革を一気に進めることで失業が増えると説明し、経済発展を阻害しない形での改革推進を訴えたとみられる。改革の進捗状況は2007年5月にワシントンで開く第二回会合で点検する。(2006年12月16日付け『日本経済新聞』)
 米国の貿易赤字は2006年も過去最大になる見通しだ。2006年1-11月の貿易赤字は前年同期比7.5%増の7016億900万ドルとなり、5年連続の過去最大の更新がほぼ確実となった。1-11月の対中貿易赤字は同15.2%増の2135億4900万ドルで、すでに過去最大の年間赤字を記録した2005年の水準を突破した。2006年1-11月の累計の対中赤字は2005年の年間赤字(2015億4400万ドル)をすでに上回った。対中赤字は米貿易赤字の約3割を占めており、中国の人民元改革が遅いことに対する米議会の不満が強まるものと見られる。
 人民元の上昇時期については、全国人民代表大会が終了するまでの期間は比較的緩やかな上昇を続け、第二回米中戦略対話がワシントンで開かれる5月に向けて上昇が加速するのではないだろうか。
(2007年1月17日記す)


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