大久保 勲の人民元論壇    
     第31号 2007.11.14発行
福山大学経済学部教授
大久保 勲
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人民元対米ドル相場上昇が速まる

(資料)国家外為管理局発表データにより、21世紀中国総研事務局作製
 サブプライムローン等の影響で、米ドル相場が弱くなっていること及び中国の大幅な貿易黒字による中国に対する国際的な人民元切り上げ圧力等から、人民元対米ドル相場が急上昇している。特に11月5日から9日までの一週間で人民元対米ドル相場は462BP(Basic Point)上昇した。つまり11月5日の中間値(仲値)1米ドルが7.4624元から9日の7.4162元となった。
 今後の米ドルの相場動向如何にもよるが、年末にかけて人民元対米ドル相場は上昇を続けると見込まれる。市場の予測では、12月に米国のFRBは更に金利を引き下げ4.25%とする可能性があり、FRBの利下げで米ドル相場の下降が加速されるとの見方がある。香港の先物予約(NDF,ノンデリバラブル・フォワード)取引から見ると、市場の人民元相場上昇に対する期待は増すばかりである。
 人民元対米ドル相場は年末には7.34-7.39に上昇する可能性があるとの見方や7.30以下の可能性も存在するとの見方が出ている。更に年内に7を突破するのではないかとの予測も出てきた。
 東方証券研究所梁宇峰氏は、明年は人民元相場が大幅に上昇し、上昇幅は15%ないし20%としている。中金公司の11月9日の分析では、今後金融引き締めが更に強まり、人民元の年間の上昇幅は6.5%、年末は1米ドルが7.3元の判断を維持するとしている。明年は年間で7%上昇し、明年末には6.79%の水準に達するとしている。(2007年11月10日、新華網)
 復旦大学世界経済研究所所長華民氏は、「中国経済発展の特殊性から、市場要素以外に、政策要素がある。現在の中国経済発展からいうと、政策の影響が市場自身の影響よりも大きい。そこで、人民元切上げが中国経済発展にとって耐えうる臨界点に達した時に、自然と切上げはなくなる」としている。(2007年11月8日、新華網)
 中国工商銀行都市金融研究所課題組は11月5日に報告を出して、次のように指摘した。目下FRBの金利引き下げは中国の適度に厳しい通貨政策に掣肘とはなっていないが、但し一定時間後には域外流動性の中国への流入が加速する可能性があり、人民元切上げ圧力を高め、株式市場と不動産市場の”理性的でない繁栄“局面を激化させるであろう。
 この《2007年第3四半期国際経済金融情勢分析と今後の展望》という報告によれば、中国と米国の金利差が縮小に向かっているが、中国の更なる金融引き締めに大きな制約になる可能性はあまりない。主たる原因は一に監督管理層の政策着眼点は、主として中国経済の内部均衡であって外部均衡ではない。とりわけ2007年以来、消費者小売物価(CPI)上昇と金融機関の貸出し増加がかなり速く、通貨政策面で更に引き締めの圧力が増している。二に、中米金利差の他に、域外短期資金は人民元切り上げ、中国の株価、不動産等の資産価格の高騰がもたらす利益を重視している。但し、注目すべきは、FRBの大幅な金利引き下げと今後予測される更なる金融緩和による過剰流動性が、期待利益がかなり高い中国市場に流入してくる可能性が高いことである。この種の国際資本流動の変化が中国経済に二重のリスクをもたらす。一に、人民元切上げ圧力と金融開放の圧力が更に強まる。二に、中国株式市場と不動産市場が“理性的でない繁栄”の局面に向かう趨勢を更に激化させる。報告は、更に大きな国際圧力のもとで、年内の人民元相場上昇は更に速まると見込まれる、としている。(2007年11月7日、新華網)
 2005年7月21日午後7時、人民元対米ドル相場が2%切り上がって以来、人民元対米ドル相場が緩やかに上昇してきた。これまでの人民元対米ドル相場の歩みをまとめると次のようになる。
 2006年5月15日に8:1を突破
 2006年9月28日には7.9:1を突破
 2007年1月11日には7.8:1を突破
 2007年5月8日には7.7:1を突破
 2007年7月3日には7.6:1を突破
 2007年10月24日には7.5:1を突破
 中央銀行が8日に出した第3四半期通貨政策執行報告によれば、目下人民元相場の双方向への変動と弾力性が明らかに強まった。2007年5月21日から銀行間直物外為市場人民元対米ドル相場変動幅が0.3%から0.5%に拡大されて以来、人民元の変動弾性も更に拡大された。
 2007年1-9月に銀行間外為市場で合計182取引日があり、うち人民元相場は108取引日で上昇した。74取引日で下落した。人民元対米ドル相場仲値は36取引日で、1日で0.1%以上上昇した。最大で一日あたり0.41%(310BP)上昇し、2007年5月21日以前の変動幅0.3%の水準を超えた。14取引日で、1日で0.1%以上下落した。最大で一日で0.27%(209BP)下落した。人民元相場は一日平均57BP変動した。2006年の40BPよりも拡大した。同時に銀行間外為市場の人民元対米ドル相場の日中の変動も明らかに大きくなった。(2007年11月8日、新華網)
 (2007年11月11日記す)
 


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