大久保 勲の人民元論壇    
     第36号 2009.1.10発行
福山大学経済学部教授
大久保 勲
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2009年の人民元相場

 08年12月31日に中国外為取引センターが発表した人民元対米ドル相場中間値は、6.8346元となり、5日連続上昇した。
人民元対米ドル相場は、
05年末が1ドル=8.0702元で前年末比2.56%上昇、
06年末が7.8087元で前年末比3.35%上昇、
07年末が7.3046元で、前年末比6.90%上昇、
08年も前年末比6.88%上昇となり、上昇幅は07年とほぼ同じとなった。
 新華網によれば、12月30日現在、人民元は07年末比、対米ドルで6.87%上昇、対ユーロで10.99%上昇、対英ポンドで47.3%上昇、対香港ドルで6.17%上昇し、対日本円で17.39%下落した。
 市場は、EU経済に対して米国経済、英国経済よりも楽観視しており、最近の人民元は対米ドルでは上昇し、特に対英ポンドでは大幅に上昇している。これは英国経済の衰退が明らかとなり、具体的には英国の基準金利が10月の5%から2%に下落したが、EU金利は2.5%を維持しているからとされている。
 結論から先に書けば、世界的な金融危機の影響で、中国の輸出が振るわなくなってきているものの、中国は人民元の切り下げで輸出を促進することはしないとしており、当面人民元対米ドル相場の大幅な切上げはないであろう。しかし、問題は米ドルが今後強くなるのか、弱くなるのかであろう。市場には、09年の人民元対米ドル相場は、6.6元から7.0元との間との見方もある。外貨準備高も増加一方の時代は終わり、増えたり減ったりの時代になるとの見方がある。人民元対米ドル相場も上昇一方の時代は終わり、上下に変動しながらも、中国経済の基本面が悪くないことから、緩やかに上昇するのではないかとの期待がある。
 08年1-11月の中国の輸出入総額は23783.7億ドルとなり、前年同期比20.9%増(輸出19.3%増、輸入22.8%増)となった。貿易黒字は2559.5億ドルとなり、6.9%増加し、163.9億ドルの純増であった。11月の中国の輸出額は1149.9億ドルで、前年同期比2.2%下降した。税関統計では、11月の中国の輸入額は749億ドルで、前年同期比17.9%下降した。前月よりも33.5%下落した。11月の中国の輸出入総額は1898.9億ドルで、前年同期比9%下降した。前月よりも26.6%下落した。11月の中国の輸出が前年同月比マイナスとなったことが注目されている。
 中国の外貨準備高は、08年9月末に、1兆9056億ドルとなったが、10月には150億ドル以上減少し、10月末残高は1.89兆ドル前後とされる。
 人民元相場が08年夏まで三年間上昇するだけで、下落しなかったので、ホットマネーはリスクなしで大きな収益をあげた。中国は4兆元の景気刺激策を出したが、社会保障体系があまり健全でなく、庶民の収入増加速度には限りがある現状では、短期間に消費を増やすことは難しい。こうした複雑な経済情勢の下で、出来る限り輸出を増やすことは内需を増やすことと同様に緊迫した任務といえる。
 人民元切り下げについては、”以隣為壑”(洪水を治めるのに、隣国を谷にして水を流し込む;自分の利益ばかりを考えて災いや困難を他人に押し付けるたとえ)の結果になると心配している人が少なくない。一旦経済情勢が落ち着きを取り戻せば、人民元は引き続き市場化改革の道を前進するであろう。しかし、再び上昇一方といった相場を出現させてはならない。つまり、予測しないでも相場の先行きがわかるような為替市場では、長期に健康的な市場運営は出来ない。(12月5日付け『新華網』)
 12月10日に閉幕した中央経済工作会議は、09年の中国は人民元相場を“合理的な均衡水準で基本的に安定”させるとした。一部のエコノミストは、この表現は中国が人民元の切り下げで輸出を牽引するとの予測を打ち消し、世界的な金融危機下での厳しい経済情勢のもとで、人民元は大幅に上昇することも大幅に下落することもないと分析した。中央経済工作会議は“努力して輸出の安定的増加を保持する”ことを要求しており、このことは人民元には切り上げの余地がないことを説明している。一部のエコノミストは次のように指摘している。中央経済工作会議は“さらに金融が経済発展を促進する積極作用を発揮”しなければならないと強調しており、人民元の大幅切り下げは資本の流出加速を引き起こす可能性があり、金融市場の安定に不利である。こうした状況下で、人民元相場の基本的安定を保持することは最も良い選択である。                          (新華網12月12日電)
 なお、米国財務省が最近発表した国際資本流動報告(TIC)によれば、10月末に中国が保有する米国国債は9月に比して659億ドル増加し、年初来の最大の増加幅となった。年後半以降、中国が購入した米国国債は7月150億ドル、8月237億ドル、9月446億ドル、10月659億ドルとなっている。
 報告によれば、2008年10月現在、中国が保有する米国国債は6529億ドルで、9月に日本を追い越してから引き続き世界一となっている。日本は5855億ドル、英国は3602億ドルとなっている。中、日、英三国が保有する米国国債は総量の52.5%を占めている。                       
(2009年1月2日記す)


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