大久保 勲の人民元論壇    
     第37号 2009.2.28発行
福山大学経済学部教授
大久保 勲
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人民元対ドル相場下落の可能性

 クリントン国務長官の訪中で、人民元切上げ圧力がかかるのではないかとの一部の見方があったが、米中は金融危機対応への協力強化で一致し、人民元切り上げ圧力などはかからなかった。
 昨年後半以来、中国は税収、金融、為替相場等一連の政策措置で輸出企業を支援してきた。(09年2月12日付け『経済日報』)
 しかし、世界的な金融危機の影響もあり、中国の輸出は振るわない。輸出商品分類の具体的数字からみると、服装の輸出、靴類製品の輸出等はみなある程度増加しているが、中国の輸出総額の54.3%を占める機電製品の輸出は491.4億ドルで20.9%下降した。そのほか、電器および電子製品の輸出は181.2億ドルで28.3%下降した。機械及び設備の輸出は169.4億ドルで16%下降した。ハイテク製品の輸出は216.6億ドルで28%下降した。(09年2月12日付け『新華網』)
 当局の発表では、春節の要素を除くと、1月分の輸出は前年同期比6.8%増となる。今年1月が12月に比して6営業日少ない要素を除くと、1月の輸出は12月よりも10.1%増えた、となっている。しかし、営業日が少ないと言っても、単純に計算は出来ず、国際金融危機がまだ底に達しておらず、輸出が既に回復し始めたと判断することは出来ないとの慎重な見方がある。
 中国の加工貿易輸出入は最近数カ月どちらも委縮しており、特に輸入の下落幅が輸出よりも顕著である。同時に昨年後半以来、中国への直接投資も振るわず、目下のところ、輸出がすぐに正の増加に転じるかどうかを予測することは難しい。
 内需振興で経済成長率を高めるといっても、やはり輸出も重要である。そうした中で、中国はこれからどのような為替政策を採るか。
 去る2月18日の『日本経済新聞』は、“人民元「1ドル7元台も」”という見出しで、
“中国国家発展改革委員会の張暁強副主任は英字紙「チャイナ・ブリーフィング」の最新号で、人民元相場について「中国経済は減速し、失業者は増えている。元の対ドル相場は6.95-7元くらいまで下がる可能性がある」と指摘した。中国政府の高官が元相場の切り下げに言及したのは初めて”、と報じた。
 ところが、本部が北京にある中国域内では最大の外資税務諮詢機構である協力管理諮詢旗下の月刊《China Briefing》 が2月17日火曜日に、そのホームページのインタビューで、中国国家発展改革委員会の張暁強副主任の話として、人民元はまだいかなる切上げ圧力にも直面していないが、今年の中国経済は下降し、失業率が上昇し、人民元対米ドル相場は6.95-7元付近の水準に切り下がる可能性がある、と述べたと書いたところ、このニュースは直ちにインターネットで迅速に転載され、外為市場で大きな反響を呼んだ。国家発展改革院会はホームページで、これは捏造だと声明を出した。そうするとこの雑誌は、これは銀監会の劉明康主席から出たとした。そこで銀監会も声明を出して捏造だとした。(09年2月19日付け『中国経済網』)
 中国政府高官の発言の真偽はともかく、人民元対米ドル相場は安定している。
 08年12月31日の人民元対米ドル相場中間値は6.8346元であった。本稿執筆時点で最新の2月20日の中間値は6.8359元であった。
 中国の輸出支援のために、輸出税還付率を引き上げる等一連の政策が採られてきたが、人民元相場についても当面、切り上げる状況には無い。6.83-6.84元前後での現状維持か、あるいは若干、人民元安となる可能性がある。
 参考までに、2%切り上げが行われた05年7月以降の人民元対米ドル相場は、
05年末が1ドル=8.0702元で前年末比2.56%上昇、
06年末が7.8087元で前年末比3.35%上昇、
07年末が7.3046元で、前年末比6.90%上昇、
08年も前年末比6.88%上昇となり、上昇幅は07年とほぼ同じとなった。
                       
(2009年2月22日記す)


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