大久保 勲の人民元論壇    
     第41号 2010.06.21発行
福山大学名誉教授
大久保 勲
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人民元相場弾力性強化による人民元相場の大幅な上昇は無い

 中国人民銀行スポークスマンは6月19日、談話を発表し、人民元相場形成メカニズム改革を更に推進し、人民元相場の弾力性を増強すると表明した。
 このニュースを6月20日付け各紙は大きく報じているが、6月26日からカナダで始まる20カ国・地域(G20)首脳会議へ向けての政治的意味はともかく、人民元対米ドル相場の大幅な切り上げ等はなく、従来からの上下に各0.5%の変動幅の範囲内で、従来よりも大きく変動するが、年内にせいぜい3~5%の上昇となるであろう。
 6月20日の新華網は、人民銀行は今回の人民元相場改革を更に推進するということは、人民元相場に対して一度で調整することではない、としていると報じている。
 今年3月6日の記者会見で、中国人民銀行の周小川総裁は、およそ次のように述べていた。「人民元為替相場形成メカニズムは、絶えず変化し、改善の過程にある。2005年7月以来、中国は市場の需給を基礎とする、通貨バスケットを参考にした、管理された変動相場制を実行してきた。為替相場は、合理的で均衡の取れた水準で、基本的安定を保持している。ただし特殊な段階を排除しない。例えば危機の条件下で、特殊な為替相場形成メカニズムを含む、特殊な政策をとることである。これは危機に対応する一連の政策の中の、一つの組成部分である。」
 今回のスポークスマン談話で、「経済運営は既に平穏に向かっており、人民元相場形成メカニズム改革を更に推進し、人民元為替相場の弾力性を増強することが必要である」としている。つまり、人民銀行としては、特殊な段階の特殊な政策から抜け出すことを表明したことになる。
 しかし、今回の談話で、「国際収支が均衡しつつあり、当面人民元相場には大幅な変動と変化の基礎は存在しない」としている。今年1-5月の貿易黒字は353.9億ドルで前年同期比59.9%の減少となっている。また、引き続き通貨バスケットを参考にしており、年初来、人民元が対ユーロで15%上昇していることも、人民元の急激な上昇を抑える要素となる。
 中国人民銀行ホームページによれば、6月19日の中国人民銀行スポークス談話の全文直訳は以下の通りである。
 中国人民銀行スポークスマンは本日談話を発表し、“人民元相場形成メカニズム改革を更に推進し、人民元相場の弾力性を増強する”と表明した。
 国内外の経済金融情勢とわが国の国際収支状況に基づいて、中国人民銀行は人民元相場形成メカニズム改革を推進し、人民元為替相場の弾力性を増強することを決定した。
 2005年7月21日から、わが国は市場の需給を基礎とし、通貨バスケットを参考に調節する管理された変動相場制度を実行し始めた。数年来、人民元相場形成メカニズム改革は順序だてて推進されてきており、予期した効果をあげ、積極的な作用を発揮した。
 今回の国際金融危機が最も厳しかった時に、多くの国家の通貨は米ドルに対して大幅に切り下がった。しかしながら人民元は基本的に安定を保持し、国際金融危機を防ぎとめるために重要な働きをし、アジア、ひいては全世界の経済回復のために巨大な貢献をした。またわが国は世界経済の均衡促進のための努力をはっきりと示した。
 当面、世界経済は徐々に回復しており、わが国経済が回復し、上昇する基礎は更に強固となった。経済運営は既に平穏に向かっており、人民元相場形成メカニズム改革を更に推進し、人民元為替相場の弾力性を増強することが必要である。
 人民元相場形成メカニズム改革をさらに推進することは、重点は市場の需給を基礎とすることを堅持し、通貨バスケットを参考に調節する。引き続き既に公布した外為市場の為替変動幅の中で、人民元相場の変動に対して、動態管理と調節を行う。
 当面、わが国の輸出入は徐々に均衡しつつあり、2009年のわが国の経常項目の黒字と国内総生産の比率は既に顕著に下降し、今年年初来、この比率は更に下降しつつある。国際収支が均衡に向かう状態は更に均衡しつつあり、当面人民元相場には大幅な変動と変化の基礎は存在しない。人民銀行は市場における資源配置の中での基礎的作用を更に発揮し、国際収支の基本的均衡を促進し、人民元相場の合理的均衡水準での基本的安定を保持し、マクロ経済と金融市場の安定を維持する。
(2010年6月20日記す)


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