北京NOW (A)    
     第2号 2004.7.1発行 by 武田 勝年
    中国経済過熱の背景

  プロフィール>>
 昨年夏以来、中国当局は一部業界における投資過熱に対して自制と警戒を呼びかけていたが、危険ラインを突破したと判断した中央政府は本年4月以降、新規融資停止を含む銀行の融資規制、個別案件の再審査、開発区の整理・統合強化、違法プロジェクトの凍結等矢継ぎ早に抑制策を打ち出した。
 これらの施策が極めて有効に働き、5月〜6月の投資や資本財価格が低下したことを踏まえて、中国政府、経済専門家はソフトランディングが可能であるとして経済運営に自信を示している。この問題は、中国「社会主義市場経済」の歴史と構造の中で理解しておく必要があると思われる。所謂「改革・開放」政策は1978年に始まるが、市場経済メカニズムの本格的導入が始まったのは1992年であり、「社会主義市場経済」の歴史は12年に過ぎない。この間、国家レベルでは、統制価格撤廃、法制整備、三大改革(国有企業、金融、行政)、WTO加盟、「三つの代表」理論の採択等があり、企業レベルでは、多量の外資導入、民営企業の勃興、国有企業所有権(株主)の多元化があって、昨年春、国家計画委員会が国家発展・改革委員会に改称されたことに象徴される様に、計画経済からの転換が進んだ中国の経済活動は今や市場経済が太宗を占めていると言える。
 しかしながら、今回の過熱抑制では、行政手段が主役、金融政策は目立たない脇役であった。ここに現時点での中国経済運営メカニズムの過渡期的性格が見える。一朝事があると「計画経済」が顔を出さざるを得ないのである。一方、ホットな領域に性急に投資しようとする企業は、市場全体を俯瞰するマクロ的視点で情報を収集、分析しているとは思えない。
 調査不十分なまま特定の領域に重複投資が集中する傾向にあり、それをGDP病の地方政府、不良債権を抱える金融機関が後押ししているために局部的過熱を発生する。同じ現象は今後も発生しうる。経済が発展途上にあることは活力の源泉であるが、必然的に危うさを伴うことも知らされた。

国民経済景気動向
 
工業生産
 
固定資産投資
 
物価
(資料) 『中国経済景気月報』(国家統計局、2004年5月、6月) より



back number >> 第01号 2004.05.15 山東省と華北の復活