北京NOW (B)    
     第1号 2004.6.2発行 by 江原 規由
    経済都市北京へ向けた挑戦 <目次>へ戻る
 北京には、「顔」が2つある。国家(中央)の首都としての「顔」と地方大都市北京市としての「顔」である。よくいわれる「政治都市」としての北京の「顔」は前者で、当然、多くの国家機関が居を構えている。中国のシリコンバレーといわれ、IT企業や研究機関の注目を集めている「中関村」などは、後者の「顔」を代表している。最近、後者の「顔」が主張を強め、大いに目立とうとしている。一言でいえば、北京市が、「経済都市」の側面を主張をはじめたということである。
 
中関村科技園西区
http://www.zhongguancun.com.cn/intro/yqgh.html より
「総部経済」。このところマスコミでよく目立つようになったのがこの用語である。その意味するところは、北京市には中国の「経済センター」としての機能と能力があり、更にこれを高めていこうという主張といってよい。目下、北京市には、外国企業の事務所6000余社が、フォーチュン誌の選ぶ世界500傑の大企業のうち160社が、外国企業の設立したR&Dセンター50余ヵ所が、そして多国籍企業の地域本部25所が存在する。「総部経済」たる資源は十分あるというわけである。北京は、「首都」や「政治都市」として内外の注目を集めてはいるが、北京市としてもっともっと「資金」や「外資企業」の集積もあってもよいのではというのが、「総部経済」を主張し出した本音である。今の世の中は経済全盛である。北京市には、経済面で、上海市や深市にこれ以上、水をあけられたくないたくないという焦りがある。
 北京市が経済都市として主張をはじめたことの証として、このところよくいわれるのが、「京三角」経済圏である。上海市を中心とする「長江三角洲(揚子江デルタ)経済圏」、深市などを中心都市とする「珠江三角州(珠江デルタ)経済圏」は中国経済を牽引する2大経済圏として定着しているが、中国第三の経済圏として期待されていた、京津唐(北京市、天津市、唐山市)経済圏、或いは京津冀(冀は河北省のこと)経済圏、すなわち北京市、天津市を核とする「首都経済圏」は、これまで纏まりを欠き上記2大経済圏から大きく遅れをとっていた。「京三角」経済圏とは、この「首都経済圏」のことにほかならないが、長江や珠工といった大河があるわけではないが、あえて「三角」と命名し、上海市や深市を核とする三角州経済圏を意識しているところに、「総部経済」の実現を目指す北京市の決意なり、意気込みが読み取れる。
  そればかりではない。「総部経済」の実現に向け、「京三角」と、目下成長著しい環渤海経済圏(注1)との融合を図ろうとの動きが俄かに活発化している。「京三角」は、よく「金三角」(ゴールデン・トライアングル)とも言い換えられるが、敢えて、「京」を「金」に置き換えるところ(注2)にも、北京市を中国の「経済センター」にしたいとの「熱い思い」が感じられる。こうした「積年の思い」を秘めているのは北京市だけではない。今年5月、李允石河北省省長(日本の知事に相当)は、同省の経済貿易商談会(第21回)で「北京市、天津市、環渤海地区の優位性を発展させ、一体化する中で、河北省自信の発展を図る」と表明している。
北京市は、国家の首都であり政治都市であるが故に、自己主張が強く、周辺都市から一目置かれつつも敬遠されてきたということもある。それが、経済を中心に近隣を纏めようとしている北京市の豹変ぶりに、経済重視の中国の「今」と「その先」が投影されているといってよい。国家の政治都市から、第3の経済圏の中核都市を目指す北京市の挑戦が始まったということでもある。
(注1) 京三角経済圏(ここでは、京津唐経済圏、京津冀経済圏、首都経済圏と同意語)を形成する都市の中には、例えば
    天津、秦皇島など渤海経済圏に含まれている都市もある。
(注2) 京(jing)と金(jin)と発音が似ていることによる語呂合わせ的意味もある。


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