北京NOW (B)    
     第2号 2004.7.27発行 by 江原 規由
    東北振興策の意義 <目次>へ戻る
 2002年11月の党16回全国代表大会に中国東北地区(ほぼ旧満州地区に相当)の産業振興が上程されてから、まもなく2年を迎えようとしている。この東北振興は、正式には「振興東北地区等老工業基地」といわれる。東北地区等と「等」の字が入っているのは、同じく地域開発として江沢民―李鵬の前政権が始めた「西部大開発」を意識した現政権の配慮〜西部大開発をやめたわけではありませんよ〜である。ともあれ、2年前に中国の高成長を支えている珠江デルタ経済圏、長江デルタ経済圏、環渤海経済圏に次ぐ第4の経済発展の極として、東北地区が華々しくデビューしたわけである。
 東北振興とは、重化学工業の振興にほかならない。東北地区は、国有企業の集積する中国を代表する重化学工業の拠点である。これまで成長への「負の遺産」を抱えていたが、その清算に国家が本腰を入れたということである。なぜか? 党と国家の人民への公約である2020年までのGDP4倍増、その成果としての「小康社会」(誰もが豊かさを実感できる社会)の実現のためということになる。2000年までのGDP4倍増には、華南や上海地区の軽工業と外資が大いに貢献したが、今後20年先を見据えた時に、新たな発展ポイントとして、東北の重化学工業がクローズアップされたということである。
 では、どう東北を振興するのか? 現政権は国家資金の投入を控え、政策支援を重点とするという。東北開発銀行の開設(今年8月8日)や税負担軽減などだが、東北振興のカギは外資導入である。この点、話題を集めたのが、世界の最大のビールメーカーである米国のAB社(アンハイザー・ブッシュ社)と世界第二位の南アフリカ系ビールメーカーであるSABミラー社が競って中国第四位のハルビンビール社をM&Aしようとした事例である。結果は、SABミラー社がハルビンビール社の持ち株をアンハイザー・ブッシュ社に譲渡して落着したが、珍しく八方丸く収まったようで、7月、ハルビンを訪問したAB社ミッションに、張左己省長が会見したほどである。中国政府が、国有企業の改革などに外資によるM&Aを奨励していることから、今後、M&A方式(買収、経営請負、株式参加、リース、技術供与など)による外資導入が東北振興の決め手となる可能性は大きい。
 外資系企業の関心はどうか。遼寧省の省都瀋陽市では、投資関連ミッションが目白押しの状況と、外資の東北地区への関心は急上昇中である。東北地区は、宇宙、航空機、自動化、環境など未来産業のほか、石化、工作機械、造船、機関車、鉄鋼など世界に類のない重厚長大な生産拠点、そして人材や関連企業を有し、外資という「黒船」の来訪を待ち望んでいる。つい最近、北京とハルビンを結ぶ高速鉄道(日本的にいえば、新幹線)建設計画が発表されたが、今後、シベリア鉄道経由で欧州への陸路の経済路線が見直されよう。
 「負の遺産」は根強いが、外資の進出で、東北地区が中国経済を牽引する日が来るのはそう遠くないと見るべきであろう。
 その一方、重化学工業の発展は、資源エネルギー問題、環境問題を先鋭化させかねない。目下、中国は非効率・資源多消費型産業構造からの転換に努めている。今後、大量の外資の参入を得てGDP4倍増の可能性が高まる中、資源・エネルギー問題と環境問題にどう対峙するのか。東北振興は、正に地球的規模の命題を投げかけているともいえよう。

(注) SABミラー社はAB社に持ち株を高値売却、AB社はハルビンビール社の筆頭株主として成長著しい中国のビール市場に参入機会を得たほか中国ビール市場で競争相手であるSABミラー社の拡大を阻止することが出来たこと。また、ハルビンビール社は、AB社の経営参加により新たな発展機会を得ることが出来、ハルビンビールの株主は、ハルビンビール社の株価が上がったため利益を得られたこと。

三省概況 (http://www1.china.org.cn/chinese/zhuanti/dbzz/409023.htm より)
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