北京NOW (B)    
     第3号 2004.9.28発行 by 江原 規由
    上場熱〜経済過熱の落とし子〜 <目次>へ戻る
 目下、中国企業が株式上場など直接金融による資金調達を活発化しつつある。なぜか。「風が吹くと桶屋が儲かる」というこじつけ話があるが、上場熱にもこの因果関係が当てはまりそうだ。
 
 まず、「経済が過熱加熱すると、」から始めたい。このところ、中国経済は「軟着陸」できるのかといった喧喧諤諤の加熱論議に一服感が出てきたが、これは、昨年下半期以来の一連のマクロコントロールが奏功した結果とされている。特に、中国人民銀行(中央銀行)による預金準備率の引下げや商業銀行に対する「窓口指導」を強化するなどの金融政策によるところ大である。簡単に言えば、銀行が金を貸すのを渋るような状況が作られたということである。その結果、例えば、自動車ローンの審査が厳しくなり、自動車の売行きが今年4月以降前月割れするといった後遺症を生んだ。
 
 企業にとっては、銀行融資が難しくなれば、運転資金の確保やら設備投資資金に事欠くようになり、最悪倒産ということにもなりかねない。倒産のすべてが、融資難によるものとはいえないが、金融引締め政策で経営難に陥った企業は少なくない。事業拡張をしようとしている企業にとっては、計画見直しを迫られることになる。加えて、最近では消費者物価上昇率が3月から7月まで連続して前月を上回り、8月単月では前年同月比5.3%とインフレ圧力が根強く、金利引上げもささやかれているなど、マクロコントロールはしばらく続きそうで、資金確保に頭を悩ます企業は少なくない状況だ。
 
2003年8月−2004年8月 資金調達額の推移 2003年8月−2004年8月 株式取引高の推移
中国証券監督管理委員会  http://www.csrc.gov.cn/cn/homepage/index.jsp より

 そこで、株式市場への上場および増資など直接金融による資金調達に、企業の目が向くということになる。証券監督管理委員会によれば、今年1―7月、中国企業の上海、深圳、香港株式市場での調達額は1078億元(約1兆4000円、1元/130円)で、史上最高水準に達したという。例えば、同時期のVC(ベンチャーキャピタル)支持により海外上場した企業は11社(香港証券取引所5社、ナスダック3社、NY証券取引所1社、シンガポール証券取引所1社、香港創業板<GEM>1社)で、当該企業の業種は通信、電信、ITなど。
 もう一つ、新たな投資拠点として、外資の注目を集めている山東省を例にとると、今年上半期、銀行融資は昨年同期比412億元(約5500億円)減少、一方、内外での直接金融による資金調達額は同期67.3億元(12社、昨年同期比50億余元)で急増したという。現在、同省の上場企業は85社(上場銘柄93種、総額640.8億元、内訳、国内A株73種、B株6種、香港上場株10株、シンガポール上場株3種など)で、今年さらに11社が上場許可待ちであり、通年では史上最高の130億元に達する見込みという。
 
 上場予備軍を含めると、今後、直接金融による中国企業の資金調達は大きく進展する威勢である。国有企業改革の一環として、企業の株式化や上場など直接金融の推進は既定路線であるが、昨今のマクロコントロールが、中国企業の直接金融に弾みをつけた、少なくとも、直接金融への関心を改めて喚起したことは否定できない。しばらく、「経済過熱で中国企業の上場が増えた」という因果関係が続くということである。
 
 中国政府は、証券市場の発展や中国企業の海外進出を積極化する方針であり、そのための法制度の制定、実施など環境整備に余念がない。中国企業の国内外での直接金融は今後大きく展開しよう。中国企業の日本での上場はまだ1社もないのは残念だが、この9月、大阪証券取引所と上海証券取引所が情報交流、人材養成などで覚書調印するなど、中国企業の直接金融に貢献する道が着実に構築されつつあるようである。既に、QFII(適格海外機関投資家制度)は機能しており、制限的ではあるが、海外投資家(個人)の中国における株式投資が可能となっている。中国企業の上場などによる直接金融はいよいよこれからが本番である。



  
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