北京NOW (B)    
     第5号 2004.12.1発行 by 江原 規由
    加速化する中国企業の海外展開 <目次>へ戻る
 2004年に入り、「走出去」(中国企業の海外進出)注1が目立って多くなってきた。まず、以下に、過去2ヵ月の代表事例(発表、報道ベースを含む)をみてみる。
@ 10月 中国最大の自動車メーカーの上海汽車集団は韓国・双竜自動車の主要債権所有者の朝陽銀行と双竜売却に関する本契約を締結
A 10月 上海証券取引所上場のエン州煤業公司が豪州のNSW州の炭鉱を買収
B 11月 中国大手固定通信ネットワーク会社の中国網通がNYと香港で同時上場
C 11月 英国のMGローバーが上海自動車工業から金融支援を受け実質的傘下に
D 11月 江蘇賽博集団が台湾企業とフィリピンで液晶TVの生産すると発表など。

 日本の事例では、
@ 8月 工作機械メーカーの池貝が上海電気集団出資を受け傘下に入ることで合意、
A 10月 中国の金融情報サービス会社の新華ファイナンスが東証マザーズに外国企業として初の上場など。
      
 上記はほんの一例で、走出去の事例には枚挙に暇がない状況にある。なぜか。何よりも、中国経済の国際化の当然の帰結ということになろう。中国は、50余万社の外資系企業(批准ベース、実際に進出している企業は約23万社)を受け入れており、2002年と2003年には、実質的な世界第一位の直接投資受入国となっている。逆に、海外展開している中国企業は約8000社で、その比率は約60:1。中国経済の国際化とは、この差を縮めることでもある。今後、中国は選別的に外資を受け入れ(外資見直し論については、前回のレポートを参照)、かつ積極的に海外展開する時代に入ったということである。同時に、経済規模が拡大したことから、経済発展に必要な資源を海外に求める必要性が生じたという点注2も、走出去の拡大要因として見逃せない。
 
「中国自動車は打って出るべだ」と気炎をあげる
吉利集団(民営自動車メーカー)李書福董事長
http://www.people.com.cn/GB/qiche/1049/2407284.html

 「走出去」のねらいは、主として、外国企業の技術、ブランド、そして資源、海外市場をねらったもの、さらに資金確保(海外上場)などが指摘できる。注目すべきは、M&Aによる海外進出が目立ってきたことであろう。経済日報(11月22日付、米国のトムソン・フィナンシャル社発表)によれば、2004年1月〜10月、中国企業による海外での大型M&A案件は44件(前年同期比33%増)、金額にして40%増となったとのことだ。
 中国政府は走出去を国家戦略として積極的に推進しており、今年7月には、中国企業の海外展開のための羅針盤といえる「対外投資国別産業導向目録」を発表、海外進出先(進出分野を含む)として67国をリストアップ注3したほか、10月10日から、中国企業の対外投資の促進措置を折り込んだ「対外投資および企業設立の審査事項に関する規定」注4(商務部令2004年第16号)を施行し、さらに11月には、中国国家発展改革委員会と中国輸出入銀行が共同で「海外投資特別融資制度」注5を設立、海外投資の重点プロジェクトの支援に活用するとの通知を出している。
 今後の走出去の行方を見ると、最近一段と高まっている人民元調整の圧力を回避する上(外貨準備の削減という視点)で、走出去は有効的な処方箋となり得ること、また、近い将来ありうる人民元の調整があった場合、走出去が展開しやすくなる(人民元レートの切り上げで海外展開がコスト安になるという視点)、中国企業の海外での資金調達機会の増大、経済規模の拡大と深刻化する資源・エネルギー不足への対応、QDII制度注6の導入が近いこと、そして国家の積極的支援など、走出去は一段と加速する情勢にある。
 中国社会科学院の予測では、第11次5ヵ年計画期(2006年〜2010年)に、年平均80億ドル〜100億ドルの対外投資を実行するという。2003年の中国の対外投資総額は21億ドルであったことから、毎年この4〜5倍の投資が行われる計算になる。
今や、世界のいたるところで中国人観光客の姿がみられるようになったが、近い将来人民元の調整があった場合、今やそれと同じ程度に中国資本が海外で意識されていくことになろう。

     
        
注1 「走出去」は、広義の意味では、1.対外投資、2.製品・技術輸出、3.労務輸出、工事請負、4.海外上場などだが、主流は対外投資(工場建設、研究開発拠点の設置、資源開発、海外企業のM&A)と海外株式市場への上場である。
注2 2003年、中国は鉄鉱石と酸化アルミの約50%、銅資源の約60%、原油の34%を輸入に依存している。 
注3 中国企業の対日展開では、製造業で電気機械、印刷機械、計器・メーター類、事務用機械、サービス業で小売り、R&D、ソフト開発などが奨励されている。
注4 対外投資および企業設立とは、中国企業が新設(合弁、合作、独資)M&A、資本参加、出資、株式交換などにより、海外で企業を設立したり、企業の所有権などを取得する行為とされる。
注5 本制度は、@国内資源の不足を補う海外開発プロジェクトの促進、A国内製品、技術、設備輸出の促進、海外先進技術・管理システムの導入、中国企業による外資企業のM&Aの加速化などをねらいとしている。
注6 適格機関投資家制度のこと。これが導入されれば、条件に合った中国国内の機関投資家や非銀行金融機構が海外で自己資金あるいは社会から集めた資金(生命保険会社の資金など)での証券投資が可能となる。


       
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