北京NOW (B)    
     第7号 2005.2.1発行 by 江原 規由
    QFIIとQDIIについて <目次>へ戻る
 QFII(有資格国外機関投資家)とは、制限付きながら中国国内証券市場で取引を行えるの機関(銀行、証券会社など)のことで、2005年1月末現在、モルガンスタンレ―、ゴールドマンサックス、香港上海銀行など海外24機関(日本は野村証券、日興アセットマネジメント、大和証券SMBCの3機関)がこの資格を取っている。QDII(有資格国内機関投資家)は、海外の証券市場で取引を行える資格をもった機関のことで、中国政府はまだ認可していないが、最近解禁間近との観測が流れ注目を呼んでいる。
 このQFIIとQDII は中国経済の最先端に位置しているといってよい。すなわち、その行方は、中国経済の資本主義化のバロメーターであるということである。QFIIにより、海外の投資家も中国株など証券投資が可能となった。今年1月、日興アセット・マネジメントがA株市場(人民元建て株式市場)を対象とした投資信託を、日本を中心とした海外の投資家向けに世界で初めて販売を始めると発表した。こうして中国の証券市場の対外開放が進めば、長期的には中国企業は世界の個人が経営に参加する多国籍株主企業に脱皮するということになる。
 問題は、中国の証券市場の発展が遅れているということである。例えば、株式市場を例にとると、現在、上海と深圳にある株式市場に上場している流通株は約1300銘柄だが、上場企業の株式の3分の2が非流通株(国有株、国有法人株)であることだ。最近、この非流通株を流通株にしようとする議論が話題となっているが、流通株が増えると、このところ低迷している株価がさらに下がり、株式市場が破綻しかねないなどとの憶測が根強く、その行方は未定の状況だ。
 次が、上場条件が厳しく上場したくてもなかなか出来ないということだ。コーポレートガバナンスが確立してない企業が多いこと、インサイダー取引など不正行為が多発したことなどから、当局としては上場による株式市場の混乱や信頼性の喪失を避けたいとの判断がある。このため、2004年8月、中国企業によるIPO(新規株式公開)を停止したほどである。この停止措置は今年1月解除されることになったが、それでも株式市場がまだまだ未整備ところが多く、勢い海外での上場を選択する中国企業予備軍が多いのが現状だ。いわんや、昨年10月、ロンドン証券取引所が香港事務所を開設したほか、ニューヨーク証券取引所も今年北京事務所を開設する予定にあり、また、東京証券取引所も、同12月北京で中国全土の300余企業を対象に日本での上場を歓迎する説明会を行っているなど中国企業の海外上場には海外関係各方面から触手が伸びている状況だ。現段階では、未知数、不透明なところもあるが、中国の高度成長や国際化を支えている中国企業の上場は「奇貨」であるといえよう。
 QDIIが実施されれば、資格ある中国国内機関投資家(証券会社、保険会社など)は海外の証券市場で資金を運用できるようになり、中国人個人も機関投資家を通せば、海外の証券市場に投資できるということになる。QDIIが実施されれば、膨大な国内貯蓄や外資流入で溜りに溜まった国内資金を活用する道が拓けるとみる識者が多い。例えば、2004年末時点の中国の外貨準備は6099億ドルに達したが、そのうち2067億万ドルが実に2004年の1年間に積み上がっている。加えて、保険金の積立金なども年々増えており、2004年12月末時点保険外貨資金は100余億ドルに達しているという。こうした資金が中国が今最も必要としている農業、社会保障、教育分野そして株式市場などに向かえばいいわけだが、投資収益率が低いことなどから資金流入は多くを望めない状況だ。有効な資金運用先がなければインフレ圧力や人民元の切上げ圧力が増し経済の先行きにマイナスとなるわけだ。
 2004年2月、国務院は社会保障基金の海外投資計画を承認したほか、同8月から国内保険会社の一部外貸資金の海外投資を可能とし注〔1〕、また11月から中国人民銀行(中央銀行)が規定の範囲内で個人の合法的財産を海外に移転することを認めたり、2005年1月から人民元の個人の海外持ち出し制限を従来の6000元から2万元に引き上げるなど国内余剰資金活用・削減の道を探っている。国内の余剰資金を海外に向けるこうした措置は、結果的に中国が制限している資本流出を加速化していくことになりかねない。こうしてみると、QDIIの実施にむけた環境つくりが着々と進行しているとみられる。
 QDII実施慎重派は、株式市場などで資金を流通させ経済建設や人民の社会保障などに役立てるべきで、いたずらにQDIIを実施し国内資金を国外に流出させるべき出はないという。とはいえ、1年間に2000余億ドルも外資が積み上がる状況下で、資金の国内流通には限度がある以上、国際的な流通で活用を図るとするのが説得力をもつといえる。目下、中国は「走出去」(中国企業の海外展開)を国家戦略としておりしており、中国企業による海外株式市場での上場や年初の中国コンピューター最大手の聯想によるIBMのパソコン部門の買収劇など、国有企業を中心に対外進出が積極化する一方、海外資源や権益の買収も目立ってきている。QDIIの実施は中国の「走出去」を促進することになり、中国経済の進む方向にあるといえよう。同時に、QDIIが実施されるということは、中国経済の国際化が商品やサービスから資金そして資本への進むことでもあり、また、資金(資本)の運用主体が国家から機関、企業へ、そして人民個人へと拡大することでもある。
 こうみると、QFIIは世界市民の中国経済への参画を意味し、QDIIはチャイナマネーが世界へ還流しつつある、すなわち、中国経済の資本主義化が進みつつあると見るのは時期尚早ではないであろう。




                
注〔1〕 具体的には、平安保険が17.5億ドルを限度に海外市場での投資が批准されたことを指し、QDII実施の前触れかと注目された。同時に、海外上場した平安、国寿、人寿の三保険会社がIPOにより集金した約60億ドルを海外市場に投資する意向にある。なお、ここでいう外貨資金とは、外資、合弁保険会社の資本金や外貨運営資金、中国の保険会社が株式制改造過程で吸収した外貨(株式取得分外貨など)、外貨建保険業務で蓄積された外貨、上記三保険会社が海外上場により集めた外貨などを指す。   もどる>>





     
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