第28号 2006.11.6発行 by 矢吹 晋
    第二次朝鮮戦争に対する米韓連合軍「5027作戦計画」

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 六か国会議は曲折の末ようやく再開されることになった。
 しかし朝鮮半島情勢はいよいよキナ臭い。中国の『軍事文摘』が掲げた米韓連合軍による「5027作戦計画」修正への動きを紹介しよう。
 北朝鮮が核実験を行ったことによって米軍と韓国軍とは、朝鮮半島で戦争が起こった場合の作戦計画を修正し始めた。「アメリカのシンクタンクとメディアが最近明らかにしたところによると」というふれこみで、『軍事文摘』は書いているが、どのようなシンクタンクがどのようなメディアに対して明らかにしたのかは不明だが、それはさておき、書かれているのは、次のような情勢分析である。
 
米韓は「5027作戦計画」を急いで訂正中
 「5027作戦計画」は米韓連合司令部の最も主要な作戦計画であり、米韓両政府が協議の形式で定めたものである。計画によれば、一旦朝鮮半島で戦争が爆発したならば、米国は軍隊を派遣して韓国を援助する。北朝鮮が核実験の成功を宣言したことによって、朝鮮半島情勢には根本的変化が発生した。ペンタゴンと韓国国防部はともに「5027作戦計画」の修正を焦眉の急と考えるに至った。ペンタゴンと韓国情報機関が考えるには、北朝鮮は核実験の成功を宣言し、国連は制裁を実施して後、北朝鮮指導部は次のような冒険的決定を行う可能性が強い。すなわち武装衝突を挑発し、一定の戦略目的を達成するものである。では米韓連合作戦計画の最新バージョンはどのようなものか。核保有北朝鮮と米韓との戦争勃発をどのように想定しているのか。
 
想定Ⅰ:核兵器を后盾とした北朝鮮が電撃侵攻を行った場合
 「5027作戦計画」によれば、新たな朝鮮戦争の勃発は核兵器を后盾とした北朝鮮が韓国に対して電撃侵攻を行うことによって勃発する。北朝鮮の韓国に対する侵攻は三つの段階に分けられる。
 第一段階は“三八度線”を突破し,韓国の前線部隊を徹底的に壊滅すること
 第二段階はソウルを封鎖し、既得の戦果を固めること、
 第三段階は韓国軍を追撃し、朝鮮半島占領の機会を狙うこと、
 である。米韓の「5027作戦計画」によれば、ソウル以北地区の韓国軍を第一波攻撃として、北朝鮮人民軍第1,2,4,5軍が攻撃するが、これらの4部隊の目標は“三八度線の韓国軍をその場で全滅させること”である。北朝鮮人民軍第3,6,7,8軍と首都衛戍部隊がその後に執行する任務には以下のものが含まれる。すなわち:縦深配置した韓国軍を殲滅し、撤退した韓国軍を迂回して包囲し、後方部隊が平壤の防衛に責任をもつ。北朝鮮人民軍の特殊戦部隊は韓国に対して攪乱作戦のみを行う。北朝鮮人民軍の侵攻部隊は三つの梯隊に分かれて韓国に侵攻する。
 第一梯隊は前線部隊からなり、その任務は“三八度線”に対して歩兵攻撃を行い、韓国軍の防衛線を突破することである。
 第二梯隊は機械化・装甲部隊からなり、その任務は韓国前線部隊を徹底的に壊滅することである。
 第三梯隊は機械化・装甲部隊からなり、その任務は敗走する韓国軍を追撃することである。
 北朝鮮人民軍の韓国侵攻には、三つの主要なルートがある。
 一つは是開城から紋山へ、
 二つは楚山谷道、
 三つは是朝鮮半島の東海岸
 である。攻撃の全段階を通じて、北朝鮮人民軍の核武装によって恫喝態勢を示し、米軍とその他武装勢力の介入を威嚇し阻止する。
 
想定Ⅱ:韓国の必至の抵抗20日間
 北朝鮮人民軍の電撃侵攻に直面して、韓国がもちこたえられるかどうかは、二つの面から見る。
 第一に、韓国軍が独力で北朝鮮人民軍の攻撃を5~15日もちこたえられるかどうか。
 第二に、韓国軍が米軍と韓国軍の総動員期間に、防衛線を15~20日間引き続き守りきれるかどうか
 である。
 韓国軍は“三八度線”付近に数段の防衛線を設けているが、地形の制約のゆえに、防衛線は極めて不十分である。これらの防衛線の戦略目標は北朝鮮人民軍が大規模に侵攻して可能な限り北朝鮮軍の兵員と装備を消耗させることである。韓国軍の防衛線は名づけて“朝鮮障害システム”という。このシステムは地雷区、有刺鉄線網、犬釘からなり、地雷区は北朝鮮人民軍歩兵の侵攻を遅延させる。「5027作戦計画」によれば、地雷区は少なくとも1~3日侵攻を遅延させるが、もしこれらの障害がなければ北朝鮮軍は24~72時間でソウルを攻撃できる。
 
想定Ⅲ:米軍82空挺師団が平壤を攻撃する
 一旦韓国が北朝鮮の侵攻をもちこたえるならば、米軍の増援部隊は計画通りに朝鮮半島に到着し、“北朝鮮を徹底的に壊滅する”計画を実行する。具体的には平壤を占領し、北朝鮮政権を転覆させる。この戦略目的を実現するために,米軍は半分の軍隊を動員する。すなわち69万の陸軍と160隻の戦艦および1600機の戦闘機である。米軍は北朝鮮に対して全面的侵攻を発動する前に、やはり大規模な空襲を行い、それに続けて米軍第82空挺師団、海軍陸戦隊第1遠征旅団と韓国の多くの師団が北朝鮮東海岸で水陸両用侵攻を発動する。これと同時に、ソウルの米韓軍隊も反攻を開始する。米韓連合軍は平壤へ向けてすみやかに進撃し、最後に平壤で会師する。
 これまでの「5027作戦計画」との違いは、この段階で米韓連合軍が直面する最大の脅威は北朝鮮人民軍の核兵器である。平壤が極度の脅威に直面した状況下で、米韓連合軍は北朝鮮人民軍が核兵器を使用する可能性を考慮せざるをえない。
 新たな「5027作戦計画」の最大の変化は、北朝鮮人民軍の核兵器動態をいかに捕捉するかであり、いかなる状況下で戦術核兵器を用いて、「先んずれば人を制する」ことができるか、それによって北朝鮮人民軍の核兵器の「使用可能」な状態をなくするかである。
 実際にはペンタゴンであれ、韓国国防部であれ、新たな「5027作戦計画」では戦術核兵器で交戦する結果をはっきりと想定することは、想定しようがない、これが現実である。
 
図:朝鮮軍事力
図:朝鮮軍事力(陸軍)
図:朝鮮軍事力(海軍)
図:朝鮮軍事力(空軍)

 

               
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