本書は廖亦武の『中国低層訪談録』(2001年、長江文芸出版社版)、同書の台湾麦田出版社版(全3巻、2002年)および大陸での地下出版『中国冤案録』(2005年)、および未発表インタビューを日本に住む研究者・劉燕子が編訳したものである。劉燕子の「訳者あとがき」によると、著書廖亦武は1958年四川省塩貞県の農村に生まれた。今年50歳になる。80年代は前衛詩人として活躍し、「体制側から与えられる賞」を20余受賞した。天安門事件を告発した長詩「大虐殺」やその姉妹編の映画詩「安魂」を制作し、反革命煽動罪で4年間投獄された。出獄後、職を得られず、獄中で僧侶から学んだ簫を吹く大道芸人として生活を立てながら、中国社会の最低層の人々の声を記録し続けてきた。その際に、録音機やノートなどは一切使わず、記憶力だけに依拠するという。95年には米国のヘルマン・ハメット賞を受賞した。2001年に前掲『中国低層訪談録』を出版し、反響を呼んだが、発禁にされた。翌2002年台湾の麦田出版社から刊行された版本で「自由創作賞」(『傾向』誌)を受賞した。2003年には『中国低層訪談録』のフランス語版が刊行され、2回目のヘルマン・ハメット賞を受賞した。2008年には英語版がランダムハウスから出版された。
目次を一瞥してみよう。
Ⅰ「はみだし者」の章に収められたのは、1浮浪児、2出稼ぎ労働者、3乞食の大将、4麻薬中毒者、5ハンセン病患者と誤認された者、6不法越境者、の6名である。
Ⅱ「性をめぐる虚と実」に収められたのは、7同性愛者、8女遊びに熱中する男、9「三陪(サンペイ)小姐」、10新々人類、11人買い業者、12新疆生産建設兵団女性兵士の息子、の6名である。
Ⅲ「変転する社会を生き抜いて」の章に収められたのは、13公衆トイレの番人、14死化粧師、15葬儀の楽師兼泣き男、16老地主、17老右派、18老紅衛兵、19「厳打キャンペーン」の生存者、20再開発で立ち退きを命じられた市民、21大陸反攻のために金門島から大陸に潜入して逮捕された者、22胡風(張光人)の囚人仲間、の10名である。
Ⅳ「暴力と欺瞞の世界に真実を求めて」の章に収められたのは、23法輪功の修業者、24地下カトリック教徒、25百三歳の和尚、26チベット巡礼者、の4名である。
Ⅴ「一寸の虫にも五分の魂」の章に収められたのは、27破産した企業家、28冤罪の農民、29「上訪」する詩人、30「反戦」を唱える反革命分子、31天安門事件の反革命分子、の5名である。 |