第91号 2016.08.15発行 by 矢吹 晋
    沖ノ鳥島沈没物語 資料一覧
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資料1 石原慎太郎「沖ノ鳥島の戦略的意味」
石原慎太郎エッセイ『日本よ』より再転載
http://210.136.153.187/mailmagazine/no36.html




2005年6月6日発売の産経新聞より転載 
産経新聞社HP http://www.sankei.co.jp/

「沖ノ鳥島の戦略的意味」
「沖ノ鳥島の戦略的意味」
 文明と技術の進展によって我々はようやく、この地球の構造や未知の経済的可能性について知れるようになってきた。海洋も含めて、その地下資源の開発もその所産の一つだ。そして領土はその可能性の開発推進のための有力な起点となる。

  国連の海洋法条約はそれを踏まえて作成された。しかしそのはるか以前からあちこちの局所でさまざまな国家の営みは行われてきている。沖ノ鳥島が、後発した国連の決めた条約の領土として該当しようがしまいが、我々の先祖はすでに昭和十四年からあの絶海の環礁に資金を投じ手を加え、将来の可能性のための措置を講じてきた。
 戦争中は発進基地としての水路を開き、戦後もまたそれを踏まえ将来の可能性の確保のために、昭和六十二年から三百億円もの国費を投じて岩礁の補強に努め、浅い礁湖を利用し打ち込む波を凌ぐために高い足に支えられた三階建ての住居も構築してきた。さらにその保全のための工事総額は五百五十億円に及び、そのうち百十億円を東京都が負担してもきた。
 その歴史的事実は後から出来た、大ざっぱな国連条約でどう否定され得るものではない。国には国の歴史があり、それを後発の国連がどう否定出来るものでもありはしまい。問題は折角あれだけの施設を作りながらその維持と活用を怠ってきた政治の継続性の欠如と鈍感さにある。
 私の東京知事としての今回の沖ノ鳥島行きをニューズウィークのある記者は中国への挑発を意図した政治的パフォーマンスだなどと書き立てているが、日本をさまざまな不法の言動で挑発し続けているのは中国の方ではないか。こうした手合いには今日の政治情勢におけるこの島の戦略的意味合いが分かっていないようだ。
 先般アメリカ政府内の知己の一人であるボルトン国務次官がその席を退く直前に来日した際、私は彼に西北太平洋の地図を示して、この島がいかなる位置に在り、いかなる地政学的意味を持つかを説明し彼は初めての認識を持った。
 この島と環礁はアメリカの戦略基地であるグアムと、グアムを凌ぐ重要な基地沖縄を直線で結ぶ中間点に在る。原子力空母を含めてアメリカの艦船が何らかの目的で日本周辺に向かって西進する最短の航路の上に在る沖ノ鳥島周辺の海域は、アメリカに対抗し西太平洋の覇権を狙う中国にとっても戦略的に重要なものだ。中国の調査船がこの水域を日本に無断で調査しまくっていた所以は、深い海溝の在る海域の海底資源の調査などではなしに、いつかの将来、西太平洋の覇権を巡ってアメリカとの衝突も辞さない中国の、潜水艦を中心にした戦略展開のためのものに他ならない。
 中国はロシアからの購入も含めて年ごとに潜水艦の保有量を増やしつづけている。アメリカ当局の推定では十年後その数は百三十隻となり、数の上ではアメリカの二十五隻をはるかに凌駕する。その時点でのミサイルを搭載したアメリカの潜水艦はわずかに七隻でしかない。これは日本にとっても看過出来ぬ事態で、冷戦時代アメリカの太平洋艦隊と協力しソヴィエト原潜の追跡監視に効果を上げた日本側にとって、さらに厄介な新しい事態に他ならない。
 私のやったことがあたかも中国を刺激、挑発することでのナショナリズムの高揚のようにいう筋もあるが、それは現今の中国の西太平洋における軍事的野心の実態を知らぬ者の能天気ないい分でしかない。あの浅い礁湖は開発すれば簡単に、US1のような無類の国産飛行艇の離着陸の水路たり得るし係留基地ともなる。あの島の領土としての確保、そのための島周辺における漁業を中心にした経済活動による水域の実効支配は、日米安保を踏まえた自衛のための我々の責任に繋がるものだ。
 仮に、数で勝る中国の潜水艦隊がピラニアのようにアメリカの空母を取り囲み撃沈したとすれば、一挙に五千四、五百という乗務員の生命が失われアメリカの世論は大きく規制され、政府の姿勢もぐらつくだろう。
 そしてあの島周辺の海は、調査による推定では豊穣な漁場たり得る。沖縄や八丈島で行っている種の漁礁は極めて有効だし、すでに国交省が予算づけした、日本人学者による、世界のパテントも獲得した、南の深海の海水と表面の海水との温度差を利用し、アンモニアを混合した溶液の短時間での気化熱による発電装置を島にもうければ、二千メートルの深海の底から汲み上げられた海水に含まれる豊かなプランクトンとミネラルは魚を呼び寄せる巨きな吸引力となり得る。これはおそらく世界で初めての漁業のための深海開発となるに違いない。
 小笠原に属する最先端の日本領土について東京都に出来るのは漁礁の造成と漁業活動限りのことで、発電を含めた開発と維持はあくまで国家の責任である。先般の会談で日本の先端技術を駆使しての開発の可能性について報告した際、総理も強い関心を示してくれた。国民の支持と期待があれば、いやその前に中国への経済進出にうつつをぬかしながらも、彼等の軍事的野心について、他ならぬこの我が身のために懸念する冷静な認識があれば、この試みは容易に遂行されるに違いない。そしてそれは、夜間には獣しか通らないような田舎の高速道路を作って増やすよりもはるかに有効な、国家民族の安全のための投資となるはずである。
 これほど将来を見越しての、有効で穏やかな自己主張はあるまいに。ことあるごとにいってきたが、まさに「天は自ら助くる者をのみ助く」である。


資料2 沖ノ鳥島血税浪費年表
日時 出来事
1931年5月 沖ノ鳥島領有を閣議決定し、東京府小笠原支庁に編入
1946年1月 沖ノ鳥島等が日本の行政権を離れ、GHQの直接統治となる
1968年6月 沖ノ鳥島等が米国より返還される
1983 日本が海洋法条約に調印
1987 国による沖沖ノ鳥島護岸工事が始まる
1988年1月21日 Prof. Dyke, Letter to the Editor, Speck in the ocean meets law of the sea, N.Y. Times, Jan. 21, 1988 資料2
2005年6月 Prof. DykeReconciliation between Korea and Japan資料3
2006年7月 Prof. Dyke and Melody K. Mackenzie An Introduction to the Rights of the Native Hawaiian People資料4
2008 国連大陸棚限界委員会に日本が大陸棚延伸を申請、中国と韓国がクレーム「沖ノ鳥島はイワだから、EEZをもつ資格なし」資料8で再論
2009年12月 総合海洋政策本部、「海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針」資料5
2010年6月 排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律 資料6
2010年8月 国交省港湾局、「沖ノ鳥島における活動拠点整備事業説明資料」資料7
2011年8月 中国口上書「沖ノ鳥島は岩である」資料8
2012年4月 大陸棚限界委員会が対日勧告書を発表、沖ノ鳥島を基点とする九州パラオ海嶺南部海域の延伸案審議は「賛成5、反対8、棄権3」で3分の2に届かず。資料9
2016年2月 国交省関東地方整備局、「沖ノ鳥島における活動拠点整備事業」(再評価) 資料10
2016年7月12日 国連海洋法仲裁法廷が「比中仲裁裁定」のなかで、第1213項島の定義を厳格に解釈して、「南シナ海に島なし」と裁定。(44㌶の太平島が岩ならば、沖ノ鳥島は当然イワと認定される)資料11

資料3 Prof. Dyke, Letter to the Editor, Speck in the ocean meets law of the sea, N.Y. Times, Jan. 21, 1988
To the Editor: Speck in the Ocean Meets Law of the Sea,January 21, 1988
A front page article from Tokyo Jan. 4 on the attempts by Japan to build up the tiny islet of Okinotori-shima and keep it from being swallowed by the sea leaves the impression that international law permits a nation to claim exclusive jurisdiction over ocean resources in a 200-mile zone around such an uninhabitable islet. The opposite is the case. Article 121(3) of the 1982 Law of the Sea Convention, which Japan has signed, states that ''Rocks which cannot sustain human habitation or economic life of their own shall have no exclusive economic zone or continental shelf.'' Okinotori-shima -- which consists of two eroding protrusions no larger than king-size beds -- certainly meets the description of an uninhabitable rock that cannot sustain economic life of its own. It is not, therefore, entitled to generate a 200-mile exclusive economic zone. The Law of the Sea Convention is also quite clear - in Article 60 (8) -that artificially built islands do not generate 200-mile resource zones. The more than $200 million the Japanese are spending to construct what is in essence an artificial island cannot, therefore, be the basis for a claim to the exclusive control over the resources in the waters around such a construction. JON VAN DYKE Professor of Law University of Hawaii at Manoa Honolulu, Jan. 7, 1988
資料4 ダイク教授の日韓和解提案
Jon M. Van Dyke,Reconciliation between Korea and Japan Abstract
Although Japan and Korea formally normalized their relations in 1965, these neighbors remain wary of each other because of their awkward history during the first half of the twentieth century, when Japan annexed Korea and oppressed the Koreans in many ways. Korean scholars believe strongly that this annexation was ‘‘illegal’’ and that it constituted a violation of international law when it occurred. Japanese scholars tend to admit that the Japanese occupation of Korea was brutal and caused enormous suffering, but they are reluctant to acknowledge that the annexation was ‘‘illegal’’, because other great powers were annexing small countries during that period. The US action supporting the overthrow of the Kingdom of Hawaii in 1893 and annexing Hawaii in 1898 may be helpful in finding an appropriate resolution to the Japan–Korea standoff. In 1993, the US Congress enacted a joint resolution formally apologizing to the Native Hawaiian people and calling for a ‘‘reconciliation’’ between the United States and the Native Hawaiians. This resolution acknowledged that the US diplomatic and military support for the 1893 overthrow was ‘‘illegal’’ and was in violation of ‘‘international law’’. This strong statement seems to be an application of ‘‘intertemporal law’’, whereby present views of international law are applied to the events of the 1890s, but, in any event, it is a powerful acknowledgment that a wrong occurred, causing injuries that can still be felt today. The reconciliation process between the United States and Native Hawaiians is now under way and, to be complete, it will require the restoration of the sovereignty of the Native Hawaiians and a return of land and resources to them. Japanese officials have offered apologies to the Koreans, but the reconciliation between the two countries can become complete only if these apologies are accompanied by a transfer of items of real value. This paper proposes that proper payments to the Korean comfort women and a renunciation by Japan of its claim to Dokdo/Takeshima (the tiny islands claimed by both countries) could serve to formalize the reconciliation between these two neighbors. Chinese Journal of International Law (2006), Vol. 5, No. 1, 215–239 oi:10.1093/chinesejil/jml005 Professor of Law, University of Hawaii at Manoa, Honolulu, Hawaii (email: jvandyke@hawaii.edu). This article is a modified version of a paper delivered at the conference: From the 1905 ‘‘Protectorate Convention’’ to the 1965 Normalization of Diplomatic Relations Between Korea and Japan: A Reconsideration and Proposals for Genuine Reconciliation Between the Two Countries, KINTEX Convention Center, Kyunggi Do, Korea, 3–4 June 2005. Published by Oxford University Press.
資料5 ダイク教授のハワイ併合謝罪解説
By Jon M. Van Dyke and Melody K. Mackenzie An Introduction to the Rights of the Native Hawaiian People July 2006 HAWAII BAR JOURNAL Conclusion
Native Hawaiians are one of the largest groups of indigenous peoples in the United States. They stand alone, however, in having never been granted a settlement or access to a claims commission. The deprivations and injustices they have suffered are well documented. Congress acknowledged in the 1993 Apology Resolution that the United States violated international law when it provided the crucial support to the overthrow that allowed it to succeed, and Congress called for a “reconciliation” between the United States and the Native Hawaiian people. Although some steps have been taken in that direction, the recognition of claims to sovereignty and the return of the land and resources to the Native Hawaiian people remain unfinished business. In 1893, President Cleveland acknowledged that a substantial wrong had been done to the Hawaiian people and urged that “a due regard for our national character” required repair of that wrong. After more than a century, the failure to address and resolve the claims of the Native Hawaiian people continues to be a significant stain on the national character of the United States.
資料6 総合海洋政策本部、離島の保全・管理の基本方針




資料7 血税800億円浪費を決定した悪法
 「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律」(2010年6月2日法律第41号)
 第一章 総則(目的)第一条 この法律は、我が国の排他的経済水域及び大陸棚が天然資源の探査及び開発、海洋環境の保全その他の活動の場として重要であることにかんがみ、排他的経済水域等の保持を図るために必要な低潮線の保全並びに排他的経済水域等の保全及び利用に関する活動の拠点として重要な離島における拠点施設の整備等に関し、基本計画の策定、低潮線保全区域における海底の掘削等の行為の規制、特定離島港湾施設の建設その他の措置を講ずることにより、排他的経済水域等の保全及び利用の促進を図り、もって我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上に寄与することを目的とする。(定義等)第二条、1. この法律において「排他的経済水域等」とは、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律(平成八年法律第七十四号)第一条第一項の排他的経済水域及び同法第二条の大陸棚をいう。2. この法律において「低潮線の保全」とは、排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第一条第二項の海域若しくは同法第二条 第一号の海域の限界を画する基礎となる低潮線又は これらの海域の限界を画する基礎となる直線基線及び湾口若しくは湾内若しくは河口に引 かれる直線を定めるために必要となる低潮線を保全することをいう。3. この法律において「特定離島」とは、本土から遠隔の地にある離島であって、天然資源 の存在状況その他当該離島の周辺の排他的経済水域等の状況に照らして、排他的経済水域 等の保全及び利用に関する活動の拠点として重要であり、かつ、当該離島及びその周辺に 港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条 第三項に規定する港湾区域、同法第五十 六条第一項の規定により都道府県知事が公告した水域及び漁港漁場整備法(昭和二十五年 法律第百三十七号)第六条第一項から第四項までの規定により市町村長、都道府県知事又 は農林水産大臣が指定した漁港の区域が存在しないことその他公共施設の整備の状況に照 らして当該活動の拠点となる施設の整備を図ることが特に必要なものとして政令で定める ものをいう。4. この法律において「拠点施設」とは、特定離島において排他的経済水域等の保全及び利 用に関する活動の拠点として整備される施設をいう。5. この法律において「低潮線保全区域」とは、低潮線の保全が必要な海域(海底及びその 下を含む。)として政令で定めるものをいう。6. 内閣総理大臣は、第三項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、あらかじ め、関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。7. 低潮線保全区域は、低潮線の保全を通じて排他的経済水域等の保持を図るために必要な最小限度の区域に限って定めるものとし、やむを得ない事情により、海底の地形、地質その他の低潮線及びその周辺の自然的条件について、調査によってその確認を行うことができない海域については定めないものとする。以下略。
資料8 国交省港湾局、沖ノ鳥島における活動拠点整備事業説明資料










資料9 中国口上書「沖ノ鳥島は岩rockである」







資料10 大陸棚延伸委員会対日勧告書




資料11 沖ノ鳥島における活動拠点再評価









資料12 南シナ海における仲裁判断


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