第2号 2004.7.15発行 by 稲垣 清
    香港の機能と国際競争力―中国との「共生」と「競争」 <目次>戻る
 昨今、香港は選挙制度や言論の自由などをめぐって揺れている。「高度自治」が維持されているか、今後はどうか、についての評価は分かれるところであるが、政治的には中国の影響(介入)をますます受けている、といってよい。中国と香港・マカオとの間のFTAであるCEPA(経済貿易関係緊密化協定)にみるように、経済的にも中国とのリンケージを強めている。
 中国返還後、そしてアジア通貨危機を経て、香港はそれまで維持していた国際金融センターなどの機能、競争力にややかげりが出ている。さまざまなビジネスコストの上昇の中で、その競争力が相対的に低下しているとともに、中国およびその周辺地域、とりわけ上海や広東の急激な追い上げもあり、激しい競争にさらされているためである。
 こうした中で、香港の選択はこれまでのように、香港独自の機能を維持強化するとともに、中国南部の広東(珠江デルタ)との連携を深めることによって、新たな機能を模索しているように思われる。
 香港は、これまで、中継貿易基地(貿易センター)、貨物輸送基地(国際物流ハブ)、国際部品調達基地(IPO)、金融センター(決済・調達機能)、中国ビジネスの窓口などさまざまな機能を併せ持っていた。その主要機能の現状と問題を検証してみよう。
 まず、中継貿易機能についてである。1980年から2000年の香港と中国の貿易は10倍に伸びた。それは、中国の開放政策が香港の貿易拡大に寄与したこと、華南への生産拠点の移転も貿易拡大に寄与1980年代の日米依存から大陸依存を強める香港。再輸出が地場輸出を大きく上回る貿易構造の変化が見られる。

1表 香港の対外貿易の構造変化
1985年 1990年 1995年 2003年
香港の再輸出のシェア 44.3% 67.5% 82.7% 89.6%
再輸出に占める中国向けシェア 33.3 26.7 34.5 43.5
再輸出の原産地中国のシェア 46.1 59.0 57.2 59.7
香港の地場輸出に占める中国のシェア 11.7 21.0 27.4 30.2
香港の輸入に占める中国のシェア 25.5 35.7 36.2 43.5
資料:香港政府統計

 香港の再輸出のウエイトは90%(1985年比5割増加、直近は94%)、再輸出製品の原産地は中国が6割(1985年比、10%ポイントアップ)、再輸出の4割は中国向け(同上)である。これは、香港製造業の中国への生産拠点移転の完了、香港経由の新規進出停滞、部品調達機能の拡大によるものであろう。
 香港の再輸出の中国を原産地とする比率は6割、電機、通信機器、事務機械関連は4割から6割、衣類、靴など軽工業品は9割前後、再輸出の最終仕向地の米国のシェアは2割、米国向け再輸出では軽工業品は3割以上、機械は1割前後である。
 このように、中国を中心とした香港の中継貿易機能は貿易規模の拡大とともに、ますます高まっているとみることができる。

 コンテナ取り扱いにみる港湾機能の追い上げ
 しかし、周辺地域の追い上げが顕著なのが、ハードとしての港湾機能である。香港は世界屈指のコンテナ港であり、1999年を除いて、常にコンテナ扱い量は世界第一位である。2003年は2045万TEU(20トンコンテナ換算単位)であった。深圳と上海、深圳も上海を凌駕する勢い、香港の高コスト構造が課題(塩田港のハンドリングチャージは葵涌ヤードの半分以下)、しかし、ソフトは香港有利(深圳手続きの煩雑さ)、インフラのみならず、定期船の便数の違い。深圳と香港は「華南」として共生して生きるほかない。この点、最近の華南への製造業の集積は追い風である。同様に、上海は寧波などと「華東」として共生していくであろう。


 国際ビジネスセンターとしての香港の地位
 香港を地域本部とする外資は増大傾向、地域本部は中国のみならず、アジアの地域本部、ただし、地域本部としての優遇策はない
 日本企業の地域拠点数は頭打ち、広州、深圳などにシフト、ちなみに、在香港日本企業数は、商工会議所ベース 620社(1997年792社)。華南地域全体では、推定5,000社以上とみられる。
 ビジネスインフラはシンガポール、香港が上海を上回る、上海のビジネスコストも安くない。最近、米国GMはアジア拠点をシンガポールから上海に移転することを検討している。このほか、シンガポール、香港から上海に地域本部を移す多国籍企業が増加傾向(米GM、ハネウエルなど)している。上海政府は北京、香港に競って、地域本部を奨励し、優遇措置も与えている。
 人民元調達機能は強化、中国人民元の交換性実現までは香港の優位性動かず。ただし、金融インフラ整備、人材の確保と充実が必要であり、不動産、家賃などのビジネスコストの一層の調整も必要であろう。
 国際金融センター、ビジネスセンターとしての見直し、効率的な行政、低税率などを改めてアピール。中国との一体化の促進(華南経済、珠江デルタの一翼)ボーダーでの工業団地(深圳・珠海)。中継貿易基地の機能高まる、「三通」の実現はマイナス要因となる。
 貨物輸送基地(国際物流ハブ)の面では、上海・深圳の激しい追い上げを受けているが、香港のトータルコストとソフト充実をアピールする必要がある。国際調達拠点としての機能回復のためには、ビジネスコストの調整と地域拠点として優遇策が必要である。しかし、香港の機能の最大の強みは、国際金融センターとしての地位である。これこそが競争力維持の中核である。また、中国とのビジネスの窓口(ゲートウエイ)の面では、上海・沿岸部の追い上げを受けているが、最近の華南融合でビジネスチャンス広がる、部品調達拠点としての役割は増大、前回提示した、CEPAの利用する必要があろう。

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