第9号 2006.10.23発行 by 稲垣 清
    華南のサービス産業―香港と競う展覧会・
会議センターの地位
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華南のサービス産業―30年の変化
 「世界の工場」と呼ばれる華南地域であり、製造基地として注目されてきたが、ここにきて、サービス業の発展も目立っている。その背景には、製造業の進出による波及効果、そして香港との機能争いがある。
 1980年代前半の中国および華南では、ホテルが極めて不足、事前予約がほとんどできず、招待単位(受け入れ機関)に依頼をしても、どのホテルになるかは、現地に行ってみないことには、まったくわからなかった。部屋があれば御の字であり、病院のような集団部屋のホテル(バストイレ別、北京)、中心から離れた湿っぽい布団のホテル(上海)などに泊まった経験もある。広州、東莞なども、まったく外資系ホテルがなく、「賓館」という名の民族系ホテルであったが、北京、上海の大都会の名もないホテルよりは良かった。日本料理店、カラオケなどのエンターテイメントもほとんどなく、日系駐在員も領事館、商社だけで、メーカーの進出や事務所はほとんどない状態であった。
 香港系ホテル「ホワイトスワン」の某ニホン料理店が、広州で初めての日本料理店ではなかったかと思う。広州東方賓館に西洋レストランが開設され、生野菜のサラダが食べられたのも1980年代はじめである。あれから、30年、広州はもとより、華南全域にさまざまなホテル、レストランなど飲食・サービス業があふれ、選択に困るほどである。目的、予算、ロケーションなどに応じて選べることになった。
 製造業の発展がサービス業の充実を誘発したのである。「ヒト、モノ、カネ」の要素移動により、「ホテル、マンション、レストラン、カラオケ、ゴルフ」という「衣食住」とエンターテイメント(趣味・娯楽)のニーズが一層高まった結果である。まさに、需給が市場を生んだのである。しかし、量的な発展だけではサービス業の充実にはならない。これに、「国際化」という要素が加わってこそ、真の「国際都市」といえる。
 委託加工の華南に日本および欧米多国籍企業の進出が華やかになった。広州などの5ッ星ホテルの朝食バイキングにそれがよく表れており、さまざまな外国人が、こんな場所まで、と思うほど国際色豊かになっている。大手製造業と並んで、流通(スーパー・コンビニ)、金融・保険、人材派遣、会計事務所などの進出も増加しつつある。広州が生産基地からサービス・消費基地に転換しつつあることを示しているといえよう。広州新空港はじめ、国際線の充実も華南の「国際化」を促している。しかし、広州は、まだソフト面での遅れが目立つ。
 「国際化」の萌芽も出始めている。広州市のビジネスの中心は香港からの直通列車の発着駅である広州東駅周辺の「天河区」に移りつつある。日系企業の多くが入居する「中信広場」(高層ビル)の周辺には、ホテル、マンション、銀行、コンビニ、スーパーなどが集積しており、最近ではビジネスコンビニ(FedxKinko’s)、フランス系のクリーニング店などの“ニュービジネス”も登場している。ビジネスのみならず、生活空間としての発展を示している。
 
写真:広州天河区
(写真は、広州天河区―中央のビルは多くの日系企業が入居する「中信広場ビル」、2006年9月11日、稲垣撮影)。
 
コンベンション機能を競う広州と香港
 広州は中国でも有数の展覧会・見本市機能が優れている都市である(注:2003年の広東省の展覧会収入は中国全体の37%という)。伝統ある「中国輸出商品交易会」(広州交易会)は2006年10月で100回を迎えた。次回からは、「中国輸出入商品交易会」とその名も改める。また、2001年からは、中国三大自動車ショーとなったところで、広州自動車ショーが開催されている。その会場となっている広州国際会議展覧センターは、市中心部から珠江を渡った海珠区であり、広州の新しい開発地域である。隣には新たな輸出商品展覧会場(広州交易会)ともなった(写真参照)。近く、5ツ星のシャングリラホテルがオープンする。いま、広州は香港からの直行列車の発着駅である広州東駅のある天河区がビジネスの中心に変化・発展しているほか、海珠区(会議展覧センター)、広州大学城(華南師範大学、華南理工大学、広東外語外貿大学などの集結)などが大変貌をとげている上海、蘇州、杭州、西安などに比べ広州で国際会議の開催が少ないことも知名度を高められない理由である。2010年にはアジア大会が広州で開催される。2008年の北京五輪、2010年上海万博に並ぶ中国にとっての国際的イベントである。これを契機にインフラ整備はもとより、国際都市としての広州をアピールする環境整備が必要であろう。
 広東省と香港は返還後、一体化が進んでいる。と同時に互いにその機能を競い合ってもいる。そのひとつが、コンベンション(展示会・見本市・会議)機能である。2005年、広州で763件の交易会・見本市および会議・展覧会などが開催された。広州以外にも、東莞、珠海など国際的見本市も多く、広東省全体でみると、相当の数にのぼっているであろう。この中で、広州交易会や広州自動車ショーがその代表的なものであり、日本の貿易振興機構(JETRO)が主催する国際的な産業展示会・商談会もある。
 他方、2005年香港では237の国際会議、55の展覧会が開催された(香港旅遊発展局)。開催件数でみると、広州の半分以下であるが、国際会議の開催数では広州を圧倒的に上回っており、1997年にはIMF総会や2005年末には、WTO閣僚会議が開かれた。国際ビジネス都市香港の面目躍如といったところである。これだけの国際会議ができることは、会場設備(ハードウエア)の充実とともに、会議運営ノウハウ・通訳を含むソフト人材が必要となり、その点でも広州・華南は香港よりも一歩も二歩も遅れをとっているといわざるを得ない。しかし、広州(華南)は香港を意識して、金融、サービス、会議センターなどの機能を強化している。新しい広州のコンベンションセンターは33万㎡という世界最大のエキジビションセンターとなる予定である。おそらく、規模的にみると、広州は香港を追い抜くであろう。問題はソフトの充実であり、その背景となるトータルのサービス産業の発展である。それでも、広州と香港は、今後、国際商品展覧会、各種イベントなどにおいて、激しく競い合うであろう。
 
写真:広州海珠区のコンベンションセンター、シャングリラホテル
(開発が進む、広州海珠区のコンベンションセンター、シャングリラホテル2006年8月1日、稲垣撮影)
 
以上

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