第03号 2004.7.7発行 by 中村 公省
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 社会主義の物質生産体系(MPS)から資本主義の国民経済計算体系(SNA)への統計計算方法の移行期にあるところから、中国の統計には種々の問題を含んでいるが、中国国家統計は全く信頼が置けないという類のジャーナリスティックな批判は当たらない。経済実態と経済統計とのズレは、何処の国、何時の統計も抱えている問題であり、枝葉の問題と根幹の問題とはおのずから異なる。現在の中国の国民経済統計が基本的に信頼に置けるものであることは、世界銀行を初めとする国際機関が中国国家統計を採用していることが、何よりの証であろう。
 しかしながら、地方統計は事情が異なり、極めて重大な問題を孕んでいる。ちなみに、2003年の省レベル地方統計合計と国家統計値を比べてみると、下表のようになる。
 
省レベル地方統計合計と国家統計値の差(2003年)
    GDP(億元) 対前年伸び率 一次:二次:三次産業の構成比
省レベル統計値合計 134892 9.1%以下2省のみ 13:49:38
国家統計値 116250 9.1 15:52:33
相違点 差の18642は国家統計値の16% 29省が全国以上 第三次産業が5ポイント差
(資料)2003年中央および地方の統計広報
 
 GDPにおいては省レベル合計値が1兆8642億元も多く、これは国家統計の16%に相当する。
 対前年伸び率においては奇妙にも全31省市自治区のうち29省市自治区が全国数値を上回っていて、全国を下回るのはただの1省のみである。
 また一次:二次:三次産業の構成比を見ると、それぞれズレがあり、第3次産業においては5ポイントもの差がある。
 これは国家統計の不備を証明するものではなく、地方統計の不備を証明するものである。国家統計は、地方からの統計データの報告とその総和によって計算されているのではなく、地方統計とは独立した直接調査データに依拠しており、生産、所得、分配の三面等価の検証を経て統計精度がアップしている。しかし、地方統計は主に計画経済時代の下からの生産業務報告に依拠していて、「役人がデータをつくり、データが役人をつくる」というメカニズムにさらされている。
 また、時代ズレした90年不変価格を用いていること、地区間のモノ、サービス、カネの移動を重複なく把握でき難くなっていること、第3次産業の統計調査が不備なこと、など統計方法の未整備の問題も多々ある。
 李徳水国家統計局長によれば、省レベルGDPの伸び率は全国統計と比べて、2000年1.7ポイント、2001年2.0ポイント、2002年2.6ポイント、2003年2.8ポイント高く出ている。さらに同局長の経験では、省を構成する地区級市レベルGDP伸び率は省レベルより2ポイント程度高く、地区級市を構成する県レベルのGDP伸び率は地区級市レベルより1−2ポイント高いという。
 中国には「村が郷を騙し、郷が県を騙し、騙し騙して国務院を騙す」(村騙郷,郷騙県,一直騙到国務院)というコトバがある。われわれは、当分の間は地方GDP統計にこうした問題があることを前提にして、データを読まなくてはならない。

2003年 GDP
       
地区

GDP
(億元)
対前年伸び率
(%)
第1次産業
構成比
(%)
第2次産業
構成比
(%)
第3次産業
構成比
(%)
東部地区 78788.4    9.3 50.9 39.8
北京 3,611.9 10.5 2.6 35.9 61.4
天津 2,386.9 14.3 3.8 50.8 45.5
河北 7,095.4 11.6 15.0 51.8 33.2
遼寧 6,002.5 11.5 10.4 47.5 42.1
上海 6,250.8 11.8 1.5 50.1 48.4
江蘇 12,451.8 13.5 8.9 54.5 36.6
浙江 9,200.0 14.0 7.8 52.5 39.7
福建 5,241.7 11.5 13.5 47.6 38.9
山東 12,420.0 13.7 12.1 53.5 34.4
広東 13,449.9 13.6 7.8 52.4 39.8
海南 677.5 10.5 37.9 22.3 39.8
中部地区 33,259.2     16.4 48.1 35.5
山西 2,445.6 13.2 8.7 57.2 34.0
吉林 2,521.8 10.2 19.4 45.2 35.4
黒龍江 4,433.1 10.3 11.6 57.0 31.4
安徽 3,973.2 9.1 18.9 44.8 36.3
江西 2,830.0 13.0 19.8 43.4 36.9
河南 7,025.9 10.5 17.6 50.5 31.9
湖北 5,395.9 9.3 14.7 47.8 37.5
湖南 4,633.7 9.6 19.1 38.7 42.2
西部地区 22844.8     19.3 42.9 37.8
内蒙古 2,092.9 16.3 20.2 45.3 34.6
広西 2,733.2 10.2 23.0 36.8 40.2
重慶 2,250.1 11.4 15.2 43.4 41.4
四川 5,456.3 11.8 20.7 41.5 37.8
貴州 1,344.3 10.1 21.9 42.5 35.6
雲南 2,458.8 8.6 20.3 43.4 36.3
チベット 184.6     22.2 26.1 51.7
陝西 2,398.6 10.9 13.3 47.3 39.4
甘粛 1,301.1 10.1 18.4 46.7 34.9
青海 390.2 12.1 12.0 47.2 40.7
寧夏 384.9 12.2 14.4 49.8 35.8
新疆 1,849.8 10.8 21.0 43.0 36.0
地方合計 134,892.4     12.7 48.9 38.4
全 国 116,249.6 9.1 14.6 52.3 33.1
(資料)『中国統計摘要』2004年版

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 (注)国家統計局は2004年から地域のGDPにつについて、以下のように改めるように通達している。
   (1) GDPの中国語表記の変更
      中国ではこれまで、国内総生産も域内総生産も、「国内生産総値」の用語で統一してきた。しかし、
      GDP(Gross Domestic Product)には「国内」の意味は含まれないため、今後は地域のGDPについ
      ては「××省生産総値」、略称「××省GDP」の用語を採用する。各地のGDPは「各地生産総値」と
      称する。
   (2) GDPデータ発表時期の変更
      各省市自治区の統計局による年度GDPの速報値は、翌年1月15日以前には発表してはならない。
      また、四半期GDPデータは当該四半期末後10日以前に発表してはならない。
                                   (2004年1月20日、李徳水国家統計局長談話)

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