第11号 2005.3.1発行 by 中村 公省
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 1. 外資何するものぞ
 WTO加盟後3年目の2004年12月11日、中国小売業が外資に全面開放された。外資の出資制限、地域制限、数量制限(会社数、店舗数)、そしてフランチャイズによるチェーン展開規制などの「門檻」がはずされたのである。これを踏まえて、2005年2月に上海で開催された「2005年中国小売業発展高峰論壇」では、外資何するものぞ、との怪気炎があがった。
 強大な資金力と先進的な経営手法を擁した外資大手が中国市場を席捲するのではないか、弱小な地場小売業は壊滅的打撃を受けるのではないか。こうした心配をよそに、WTO加盟の中心人物であった龍永図元商業部副部長は、「実践で証明されたように、最良の保護は開放である」と言い切った。
 現場で奮闘する北京の電器ストアである国美電器経営センターの華天総経理も自信みなぎった発言をした。
 「外資小売企業はブランド、人材、販売技術、資金力、経営管理能力などの面で優位にあるが、実際の営業状況を見ると、中国市場で慣れない文化、特に消費文化の面で影響を受けている。また、国内の効率の低い物流システム、数の多い供給業者、分散したアフターサービスなどが越えることの難しい無形の「ハードル」になっている。」(新華報業網2005.02.24、訳文は中国通信.02.28による)


 2. 上位独占の地場企業
 中国商務部が発表した「2004年商業チエーンストア売上げトップ30」を見てみると、なるほど、売上高でも店舗数でも地場企業が主導的地位を占めている。(下表参照
 トップ30中に入っている外資系は、5位仏カルフール、7位、15位香港華潤集団の2社、13位台湾誠達集団、14位米ケンタッキー、20位米ウオルマート、21位タイCP集団、23位独メトロの8社しかいない。
 トップの百聯(集団)は、外資の来襲に備えて2003年4月に、上海の商業界が大同団結した「超大型空母」であり、売上高、店舗数とも他を圧倒している。売上げ676億元、前年比22.5%増、店舗数5493店、前年比25%増で、成長力も相当なものである。その傘下には、上海第一百貨店、華聯、上海友誼、上海物資総公司など7社の上場企業があり、百貨店20、スパー2458店、コンビニ1565店を含めて全国23省市に店舗を展開している。
 第2位の北京国美電器有限公司は、1987年に発足した家電量販店である。北京の一家電販売店だったものが、天津、上海、成都、重慶、西安、鄭州、瀋陽、青海、済南、広州、深圳、武漢、杭州、昆明、福州、寧波、大連、石家荘、ハルビン、包頭、無錫、長沙、太原、長春など全国大都市に店舗を網羅するに至った。その数、2003年139店、2004年218店と急激に拠点を増やしている。
 第3位の大連大商集団有限公司は、政府当局の強大小売業育成策による合併再編で巨大化した地場グループである。大連を本拠に、東北、山東、華北の17都市に120店舗を配している。2005年にはさらに40都市に100店舗を新設すると打ち上げている。
 第4位の蘇寧電器集団は、南京に本拠を置く家電量販店であり、2004年上海A株上場した。南京のほかに北京、上海、広州、杭州、西安、深圳、合肥、福州、長沙などに200店近くのチェーン網を持つ。2004年売上げ80%増という驚異的な成長振りである。


 3. 欧米グローバル外資の現勢
 5位にランクされている仏カルフールは世界第2位の小売商であり、ハイパーマーケットをもって1995年中国市場に参入した。それから10年足らずの間に、30近くの都市に62店舗を設け、162億元を売上げるに至った。中国においては、2004年12月以前は13都市という地域制限をはじめ様々な規制があったにもかかわらず、地方政府の融通無碍な認可をたくみに取り付けて、強引にここまで勢いを伸ばした。日本に2000年に上陸しながら(8店)、早々と撤退を決めたのと好対照であるが、その日本責任者が中国総経理に転じた。2005年、カルフールは20店新規出店、3~5年の間に全国1000店という計画が伝えられる。
 世界一の小売商である米ウオルマートは、中国ではまだ20位に甘んじている。中国初進出は、カルフールの翌年1996年で、深圳を皮切りに8年の間に北京、ハルピン、長春、瀋陽、大連、天津、済南、青島、南京、南昌、長沙、福州、厦門、昆明、深圳、東莞、スワトウ、南寧、貴陽など20ほどの大都市に43店舗を構えた。業態としては三つ、スパーセンターを主力にして、会員制ホールセールクラブ、スーパーマーケットを組み合わせている。2月に大連に3号店を出店、今年中に15店舗を新設して全店舗網を58にするという。
 世界第3位の独メトロは、1997年に上海の観光・小売業者の錦江集団と合弁の錦江麦徳龍現購自運有限公司を設立して、中国市場参入を図った。「現購自運」とは、会員制のキャッシュ・アンド・キャリイー方式の倉庫型店舗を意味している。1号店は上海普陀店で、この旗艦店が現在も中国本部をかねている。上海を中心に同心円状に拡大していく店舗配置戦略を採って、寧波、杭州、南京、武漢、長沙、重慶、成都など長江流域を主にして、全国で32店舗を数えている。中国での地位は第23位にある。
 ここで忘れてならないのが、ファーストフード・チェーンのケンタッキーである(14位)。ケンタッキーの北京1号店開店は米中国交回復の6年後の1978年で、81年にペプシ、コカコーラがボトリング工場を開き、1992年にマクドナルドが北京王府井を開店した。それ以来すでに四半世紀になろうとしているが、アメリカンスタイルの食文化は中華食帝国の深部に浸透したと言い得る。ケンタッキーはフライドチキン8対ピザハット1の割合でネットワークを広げているが、2004年現在、中国に合わせて1400店にもなっている。ちなみに、ライバルのマクドナルドはケンタッキーの半分ほどで、このトップ30のランキングにも顔を出しておらず、中国では断然ケンタッキーに軍配が上がっている。清潔、迅速をモットーとする両店が中国人にサービス業とは何かを教えた教育効果は計り知れない。


 4. 中国流通業態のトレンド
 「チエーンストア売上げトップ30」の個別企業を取り上げていくと紙幅が足りなくなるので、これくらいではしょって、全体を眺めなおしてみよう。このランキングを発表した中国商業部新聞弁公室のあげる特徴を以下に意訳する。
コンビニの急激な成長
 北京国美電器、蘇寧電器集団、上海永楽家用電器、江蘇五星電器の中で、コンビニの売上額伸び率は49.7%で、流通業各業態のトップにある。店舗数の伸びも20.2%に上る。第9位にある北京物美投資集団有限公司は、「民族小売産業の発展、大衆の生活品質の向上」を掲げてスーパーマーケット、コンビンニを展開しているが、そのコンビニ店舗は605店に達している。対前年伸び率は、売上高31.2%増、店舗数15.9%増である。 
スパーは成長期
 スーパーマーケット(ハイパーマーケット、会員制倉庫型店を含む)の売上額伸び率は32.8%である。チエーンストア売上げトップ30において、売上高総計の半分以上の52.9%、全店舗数5分の1(20.2%)を占める。スパーは中国の小売業で広範に採用されている業態で、主力業態と言える。カルフールのハイパーマーケット一店あたり売上げは2.9億元であり、錦江麦徳龍現購自運[独メトロ]、北京物美、北京華聯、利群集団などのスーパーマーケット一店あたり売上げは2億元以上である。 
家電専門店の持続的発展
 大型専門店は「チエーンストア売上げトップ30」の総売上高の約4分の1(23.5%)を占める。伸び率は売上高で46.5%でコンビニについで高く、店舗数では34.9%でコンビニより勢いがいい。中でも家電専門店チェーンの発展が急激である。「トップ30」中に5社ランクインしており、その売上高伸び率は24.2%~83.7%、店舗数伸び率は25.0%~92.7%である。北京国美電器、蘇寧電器集団、上海永楽家用電器、江蘇五星電器の4社の売上げは100億元を超える。家電専門店の高度成長は、家電商品が中国都市住民の消費のホットポイントであることを物語っている。 
デパートの革新
 デパートの売上高伸び率は18.8%である。「チエーンストア売上げトップ30」の総売上高の14.9%、総店舗数の21.8%を占める。大連大商集団、武漢武商集団、北京王府井百貨(集団)などがデパートを主要業態とする企業で、積極的にチェーンストア化を模索して成長を維持している。武漢武商集団のデパート一店あたり売上額は9.6億元である。 
外資の占める地位
 外資系8社の売上額を合計すると864億元で、「チエーンストア売上げトップ30」総売上額の22.5%を占める(伸び率は34.6%)。店舗数は3478店で、「トップ30」総店舗数の25.2%を占める(伸び率は21.2%)。おおまかな見方をすれば、外資系8社は、「チエーンストア売上げトップ30」のうち4分の1を牛耳っていると言えよう。 

 5. 黒船来襲効果
 中国大都市には今やスパーマーケット、コンビニ、ハイパーマーケット、倉庫型店舗、大型専門店など、欧米で開発されたありとあらゆる流通新業態が輩出している。これらは厳重な規制を突破して試行的、先進的に参入した外資か、その手法を模倣した地場流通業者がもたらしたものである。時期的には1990年代後半以降、とりわけこの5年足らずの間のことである。以上の「トップ30」のうち、20社は商務部によって重点育成小売企業に指定されたエリート中のエリートなのである。これは、WTO加盟で公約された小売業の全面開放を前にした、いわば黒船来襲効果だと言えよう。
 外資系8社が「トップ30」のうち4分の1を牛耳っているという数字が大きいか、小さいか、脅威的か恐れるに足らずかはともかく、政策当局からすれば、「最良の保護は開放である」には違いない。
 「門檻」は外されたばかりである。中国流通業の未来は、これからのエンドレスの激烈な市場競争いかんにある。

中国商業チェーンストア売上トップ30(2004年)
(資料)商務部商業改革発展司
 
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