第14号 2005.6.1発行 by 中村 公省
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 1. 独裁者としての共産党員
 まず中国政治をウオッチするに際しての、イロハのイの字を確認しておきたい。
 中国共産党は中国を独裁していて、国家機関、司法、軍隊、行政を掌握している。その独裁党の目標は共産主義の実現にある。
 「中国共産党は中国労働者階級の先鋒隊であり、同時に中国人民と中華民族の先鋒隊であり、中国の特色をもった社会主義事業の指導核心であり、中国の先進的生産力発展の要求を代表し、中国の先進的文化の前進方向を代表し、中国の最も広大な人民の根本的利益を代表する。党の最高の理想と最終目標は共産主義の実現にある。」(「中国共産党章程」総綱)
 しかし、共産主義はあまりに遠ければ、過渡期の目標として社会主義市場経済社会の実現を目指している。
 共産党員になる資格は、満18歳以上の中国の労働者、農民、知識分子、その他社会階層の先進分子で、党の綱領・章程を承認して、党組織に参加して積極的の活動し、党の決議を執行して、党費を納入することにある。共産党員の本務は献身的に人民のために服務することにある。
 「真剣にマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論と“三つの代表”思想を学び、党の路線、方針、政策および決議を学び、党の基本知識を学び,科学・文化・業務知識を学び、人民に服務する本務のレベルアップに努める。」(「中国共産党章程」第一章 党員)
 「人民」の反対語は「敵人」である。「敵」は誰か。


 2. 2004年末の中国共産党員数
 2004年末現在の中国共産党員数は6930.3万人と発表された。(以下資料源は人民網2005年05月24日、共産党員総数超過6960万名隊伍構成更加合理http://politics.people.com.cn/GB/1026/3411171.html
 同時期の総人口は12億9988万人であるから対人口比は5.4%で、約20人に一人の割合で人民の先鋒隊員が存在する。中国の家庭戸数3億6628戸と対比させれば19.0%で、5家族に一人は共産党員がいる計算で五人組組織論が生きている。
 中国国民には参政権(普通選挙権)がない。共産党員だけが独裁党の中央委員会委員を選出する選挙権を持つことによって、政治に物言う権利を持っている。仮に18歳以上の中国国民に参政権を付与すると選挙権保有者はざっと9億5000万人で、これは憲法に言う「公民」の概念に近いのではないかと思われる。そのうち共産党員は7.2%を占めるにすぎない。言い換えると、100人の「公民」がいると、93人は政治から締め出されていて、1割に満たない7人の先鋒隊員だけが政治的権利を保有しているわけである。
 共産党が独裁する中国の政治は、直接には共産党員6930万人を主体とする政治であると言える。しかし、6930万という数は巨大で、日本の人口の半分強に相当し、イタリアの人口5800万、フランス6000万、ドイツ8300万と比較してみれば規模が知れ、党員を御する政治は一国を統御する政治に匹敵する。
中国共産党が党員を組織する原理は代行制である。
 「党員は党組織に服従し、少数は多数に服従し、下級組織は上級組織に服従し、全党各組織と全党員は党の全国代表大会と中央委員会に服従する。」(「中国共産党章程」第二章 党の組織制度)
 最下層の組織は、企業、農村、機関、学校、科学研究所、街道コミュニティ、社会団体、社会仲介組織、軍隊などにおいて党員三人以上で組織される。党の基層組織は347.7万、そのうち基層党委員会が17.1万、党総支部が20万、党支部が310.6万ある。
 党の全国代表大会は5年毎に開催される。代表数は第16回大会(2002年)の場合は2120人である。全国代表大会の最大の任務は中共中央委員の選出であり、16回大会では委員198人、候補委員158人、合計356人を選んだ。この中央委員会は中央政治局によって召集され1年に1回開催される。
 その中央政治局員は中央委員会によって選出される。16期中央政治局員は委員24人、候補委員1人を合わせて25人である。
 中央政治局員なかには地方に常駐する者もいるが、中央に常駐して中共の最高意思決定をする権利を持つ常務委員が9人いて、この9人が中共中央政治局常務委員会を構成する。
 中央政治局常務委員は必ず国家機関、司法、軍隊、行政議会・政府の最高職を兼務することによって、それらの中央機関に対して中国共産党の独裁を全うする。16期中央政治局常務委員の場合は、常務委員№1の胡錦涛が国家主席、中央軍事委員会主席を兼務している。また、№2の呉国邦が全国人民代表大会常務委員長、№3の温家宝が国務院総理を兼ねて、この三人で軍、議会、政府を牛耳ることが出来る体制を築いている。常務委員№4以下は、賈慶林(全国政協主席)、曽慶紅(中央書記処書記)、黄菊(国務院副総理)、李長春(中共中央規律検査委員会書記)といった具合である。
 中央政治局常務委員の№1は中国共産党中央委員会総書記をも兼務して、中央政治局会議と中央政治局常務委員会会議を召集するとともに、中央政治局の常設事務機構である中央書記処の活動を主宰して、党の最高位に位する。
 こうして、中国共産党員6930万人の代行制が完結する。総括すれば、6930万人の意思が全国代表大会代表2120人で代行され、中共中央委員356人で代行され、さらにそれらが中央政治局員24人で代行され、中央政治局常務委員9人で代行され、ついには総書記1人で代行される。毛沢東の独裁の弊害を反面教師にして、文化大革命後、個人独裁は固く戒められているが、中国共産党の組織体制自体が、民主集中制と称される代行制によって成り立っていることは変わりない。


 3. 中国共産党員の構成
 次に、2004年中国共産党員の主要項目別構成を詳しく見てみたい。


 (1)性別、民族、学歴別構成
 女性党員は1295.9万人で、全党員の18.6%を占めるにすぎない。天の半分を女性が支えるというタテマエとは裏腹に女性の政治的地位は著しく低いと言わなくてはならない。
 少数民族は441.4万名で6.3%ある。少数民族の人口比は8%程度であるから、これは共産党組織部が人口構成によって割り当てた枠だと見ていいだろう。
 学歴は高等教育、中等教育以上の学歴の党員が3940.7万人、56.6%を占める。ということは、なお初等教育以下の党員が43.4%もいることを意味する。大学・専門学校以上の学歴を持つ者は4分の1をわずかに超える27.3%である。
 (2)年齢別構成
 35歳以下22.7%、36-59歳54.6%、60歳以上22.7%という構成である。
 人口ピラミット構成のほうは18-35歳以下12%、36-59歳29%、60歳以上12%である(2003年)から、これも組織部の計画数値に合わせた形跡がある。
 (3)入党時期別構成
 入党時期は、①建国前、②建国-文革前、③文革期、④文革後-14回大会、⑤14回大会(1992年)以後の5期に分けて報告されている(図表1参照)。


図表1 共産党員の年齢構成
   ① 建国前………………………101.5万人  1.4%
   ② 建国-文革前…………………935.6万人  13.4%
   ③ 文革期………………………1314万人  18.8%
   ④ 文革後-14回大会…………2052.3万人  29.4%
   ⑤14回大会(1992年)以後…2556.9万人 36.7%


 年齢と入党とは必ずしも相関していない。若年にして入党は少なくないが、年をとって各分野の一定の指導者になってから共産党員となるという例も珍しくはない。とりわけ文革中に迫害を受けて党を除名されたり、入党を見合わせていたものが、文革後に復権したり、新規に入党した例は多い。
 入党時期を全体的に眺めると、文革以後(1976年10月以後)入党したものが全体の66%、4609万人いて、そのうち2557万人(36.7%)が、この10年余の間に入党している事実が注目される。いわば近年の党員数インフレ化現象である。党組織部によって共産党員の入党条件を緩めて、党員を拡大する運動が進行しているのである。この運動は、中国共産党は①先進的な生産力、②先進的な文化、③広範な人民の根本的利益、の三つだ代表すべきだという江沢民の「三つの代表論」と密接に関連している。
 ついでながら、共産党の高級指導幹部である中央委員の入党時期構成を見ると、以下のようになっていて、インフレ時期の党員はまだ代表者を中共高層に送り出していない。中共高層を占めているのは、文革期入党組と建国-文革前組とである。
   ①建国前………………………0人  0%
   ②建国-文革前…………………136人  37.4%
   ③文革期………………………156万人 43.0%
   ④文革後-14回大会………… 70人 19.3%
   ⑤14回大会(1992年)以後…1人 0.3%


 4. 職業別構成
 中国共産党は中国労働者階級の先鋒隊だそうだが、建党以来、これはフィクションであって、職業別構成構成で中国共産党が中国労働者階級の先鋒隊であったためしはない。2004年末において労働者(工人)は、802.9万人で11.5%を占めるにすぎない。労働者に農民・漁民(2235万人、32.1%)を加えても43.6%で半分に満たない(図表2参照)。


図表2 共産党入党時期の構成


 労働者・農民・漁民を凌駕しているのは、幹部とその「離退職人民」をあわせた、共産党員であることを職業にしている層である。幹部1914万人(27.5%)、離退職人民1260万人(18.1%)。中国において「幹部」とは、国家機関、軍隊、大衆団体にいる公職要員のことで共産党員であることによって地位が保証されている職業である。いわば共産党官僚階級(ノーメンクラツーラ)と言い換えることが出来るであろう。中国の人口も高齢化が進んで老人社会になっているが、60歳以上の老ノーメンクラツーラが党員の22.7%を占め年金暮らしをしている事実は中国共産党が老人問題を抱えていることを雄弁に物語っていよう。
 「三つの代表論」が反映しているのは、「非公営企業と民営非企業単位の管理者および技術専門家」の115.2万人1.7%である。これはわれわれのコトバに翻訳すれば、民間企業企業経営管理者および中小企業主であろう。マスコミ流に言えば、赤い資本家である。パーセンテージでは2%に満たないが、富裕で権力を握った赤い共産党員が絶対数で100万を超えていることは、社会主義市場経済の人事面における顕著な現象として注目される。


 5. 新規共産党員の趨勢
 今後の共産党員の趨勢を占う上で参考になるのが2004年の新規党員の構成である。
 2004年新党員は241.8万人いるが、旧党員の構成とはかなり食い違っているのである。両者を並列させてみると、以下の表のようになる。
 これは共産党組織部が計画的にやっている結果であるが、女性、35歳以下の若年層、高学歴者(知識分子)に対する入党勧誘を盛んにやっている。とりわけ、学生党員を増やして、若年化と高学歴化を一気に実現させようという狙いが明らかである。また、企業経営者(先進分子)を共産党に取り込む方策の力が入っている。


図表3 党員増加の新規趨勢
    2004年末党員 うち2004年新党員
人数 6960.3万人 241.8万人
女性 18.6% 31.7%
35歳以下 22.7% 78.5%
中等高等教育卒 56.6% 83.4%
労働者 11.5% 9.5%
農漁民 32.1% 21.2%
幹部 27.5% 8.9%
企業単位、民営非企業単位の管理者および技術専門家 25.0%
学生     8.1%

 
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