第17号 2005.9.1発行 by 中村 公省
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 外務省の『海外在留邦人数調査統計(平成17年度版)』(外務省大臣官房領事移住部編)がリリースされたので、速報数値で前回論じた中国滞在の日本人数を、ビジネスマンに絞って補足しておきたい。


 1. 大陸滞在の日本人ビジネスマンは約3万8000人
  2004 年の香港・マカオを除く大陸「社会主義市場経済圏」の長期滞在者の職業別内訳を整理したのが表1である。長期滞在者は7万4857人で、そのうち本人と同居者の割合は、本人5万8407人(78.0%)、配偶者・家族が1万4998人(20.0%)である。


 表1 中国(香港・マカオを除く)の長期滞在者の職業別内訳(2004年)
表1 中国(香港・マカオを除く)の長期滞在者の職業別内訳(2004 年)

 ビジネスの観点からすると本人の数字が重要である。
 香港・マカオを含む中国に滞在している「民間企業関係者」、即ちビジネスマンは4万9570人、ざっと5万人であるが、香港・マカオを除いた大陸に滞在するビジネスマンは約3万8000人(3万7949人)である。在大陸日系企業数は約1万8000社と見られるところから、アバウトで1社に2人強平均の長期滞在者が存在すると見られる。
 ビジネスマン約3万8000人は同居者を除く大陸の長期滞在者(本人)の65%を占めるから、長期滞在者数を決定づけているのは、大陸におけるビジネスいかんだと言える。
 では、約3万8000人のビジネスマンは、大陸のどの地域に分布しているのか。大使館・領事館の管轄地域の民間企業関係者〔本人〕の長期滞在人数(2004年)を整理してみよう(表2)。
 ビジネスマンが集中しているのは、上海領事館管内で、約2万2000人、全体の約6割を占める。上海領事館の守備範囲は長江デルタだけでなく、長江中流、及び上流の重慶、成都までに及んでいるが、大部分は上海とその周辺の浙江、江蘇地域に滞在しているものと思われる。上海領事館に次ぐのが、北京大使館と広州領事館管内であり、それぞれ7千人前後で、全体の2割以下である。イメージ化していえば、上海6:北京2:広州2弱というところである。東北の瀋陽領事館管内は5%を切って、2000人に満たない。


 表2 民間企業関係者〔本人〕(2004年)
大使館・領事館管内別    人数 割合
中国大使館(北京)管内 7,419 19.5%
広州領事館管内 6,780 17.9%
上海領事館管内 21,895 57.7%
瀋陽領事館管内 1,855 4.9%
合  計 37,949 100.0%

 参考までながら、ビジネスマンについで多いのが「留学生・研究者・教師」である。そのうち「研究者・教師」はたいした数では無く、大部分は「留学生」で、その数、大陸にざっと1万人(9940人)である。「留学生・研究者・教師」の半分(48.8%)は北京大使館管内滞在で、上海領事館管内(35.9%)をあわせると84.7%にもなる。


 2. ここ4年間で上海周辺の日本人数が4倍近く増大した
 2001-2004年の都市別・地域別の中国長期滞在日本人者数の推移をまとめたのが表3である。都市別の長期滞在日本人の趨勢は前稿で大づかみにしたから、贅言は不要であろう。


 表3 都市別・地域別の中国長期滞在の日本人者数の推移
表3 都市別・地域別の中国長期滞在の日本人者数の推移 

 ビジネスのあるところ日本人あり。
 上海及びその周辺は驚くべき増大ぶりである。この4年間で蘇州は12.8倍、杭州は4.4倍、上海は3.4倍も膨れ上がっている。上海へ、上海へと日本人ビジネスマンは吸い寄せられている。逆に、「西部開発」は掛け声ばかりで発展の停滞している内陸部は、現金なもので、4年間でマイナス成長、日本人滞在者が減少している始末である。
 長江デルタについで活況を呈しているのが華南の珠江デルタである。中でも電子産業の集積する東莞は4年の間に535人から882人へ、中山は178人から296人へと共に2.6倍増加した。省都の広州は1297人から2594人へと倍増である。日系自動車セットメーカーに呼応して部品メーカーや素材メーカーの進出が熱気を帯びているところから見て、今後のホットポイントである。
 停滞気味の東北の中にあって滞在者が2倍に伸びているのが長春である。長春は中国最大の自動車メーカー・第一汽車の本拠地で、自動車関連ビジネスの影響と見られる。しかし、ハルビンの倍増が何に影響されたものか。具眼の士の御教示を要請したい。
 この4年の間に北京は2267人、天津も1274人増加していて、絶対的には決して少ない伸びではないものの、長江デルタや珠江デルタ都市の成長と比べると相対的に地盤沈下を起こしている。さきに予言したように、ここ数年先には北京は日本人滞在者数で蘇州に追い越される地位にある。


 【蛇足】外務省大臣官房領事移住部および在中日本大使館、領事館への注文
 コトのついでに、外務省大臣官房領事移住部および在中日本大使館、領事館に統計の取り方で注文をつけておきたい。表3を作ってみて、データが欠落してブランクになっている都市が多くて閉口した。例えば、昆山を2003年に627人と計上しているが、その前後でどうなっているのかわからない。昆山は県級市であり、地級市の蘇州の一部でもあるが、蘇州の数字は市区部だけか、それとも昆山、大倉、張家港、常熟、呉江の県級市を含んだものか説明が無い。長江デルタで繊維産業が集積していてい日本人が多いことで知られる南通のデータを全くとっていないのはどうしてか。また、かつての遣唐使の寄港地で重要産業がひしめく寧波もノミネートされていない。その一方で、青島の数字を見ると、2001-2004年の間、1340、597、550、2430と推移していて、なにやら奇妙である。滞在者の届出を基に計上している数字ではあろうが、信頼性の関わることがあってはならない。武漢や成都はかつてはかなりの人数を上げていたが、なぜかぱったりブランクになっている。私が作表の途上で「その他都市」と仮称した数字の中身を開示されたい。
 
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