第23号 2006.2.1発行 by 中村 公省
    世代別・男女別中国嫌いデータ <目次>へ戻る
 
   内閣府の「外交に関する世論調査」の中国に関する調査で、2004年-2005年は劇的な変化が起きた(http://www8.cao.go.jp/survey/h17/h17-gaikou/images/z05.gif)。このグラフから日中関係の変化に伴って、日本人の対中感情が揺れ動く様子を如実に知ることができるであろう。
  それにしても、20004-2005年の変化は異常で、中国に対する日本人の感情に質的な変化が起こっているのではないか。そう直感すること数カ月。ようやく時間の余裕ができたので、もう少し詳しく調査データに当たってみることにする。
  表1は、世代別及び男女別に中国に対する親近感の推移を見たものである。煩雑になるのを避けて、世代別では一番若い20-29歳の層と、70歳以上に次ぐ最高年齢の60-69歳層との両者を対照させるにとどめる。また調査年では、サッカー試合場での日本選手に対するブーイングが起こった年の前年2003年と、台湾海峡で中国が軍事演習を強行した1996年とをピックアップした。
 
表1 世代別・男女別中国に対する親近感の推移
 
 表2は、表1のパーセンテージの変化をはっきりさせるために作成したもので、1996-2005年の間と2003-2005年の間の変化ポイントを算出してある。プラスは増加したことを、マイナスは減少したことを表す。
 
表2 世代別・男女別中国に対する親近感の変化
 
 この2つの表のなかで、注目していただきたいのは、次の(1)(2)である。
 (1)「全体」――「親しみを感じない(小計)」が20-29歳で61.8 →47.9→58.2と動き1996年と2005年を比較すると低下している。これに対して60~69歳層では52.4→49.5→63.7と動き1996年と2005年を比較すると上昇している。この変化は、表2では20-29歳でマイナス3.6 →プラス10.3、60~69歳層ではプラス11.3→プラス14.2と表示されている。
 言い換えると、ここ10年ばかりの間に、若年層では中国嫌いが減っているが、高齢層では逆に中国嫌いが増えているのである。ここ3年ばかりの間では、ともに中国嫌いが増えているが、増加の幅は高齢層のほうが4ポイントほど大きい。
 (2)「男性」「女性」(表2で結論だけを言及)―――上記の「全体」の動きを男女に分けて見てみよう。
 男性では、20-29歳でマイナス7.9 →プラス11.0と動き、1996-2005年には8ポイント近く中国嫌いが減って、中国好きが増加している。
 これに対して60~69歳層ではプラス17.0→プラス21.6と変化して中国嫌いが激増している。裏を返して中国好きの数字で見ると、マイナス20.5→マイナス25.0ポイントと、激減している。
 女性でも、若年層、高齢層ともに男性と同じ傾向が示されているが、男性よりも変化が小さい。2003-2005年の60~69歳層の変化ですら5.8ポイントで、男性の変化の3分の1以下である。
 
 「外交に関する世論調査」には年齢別データのほかに職業別データも示されているので、今一歩突っ込んでみよう。表3は世代別・男女別に「中国に親しみを感じない」を整理したもので、表4は 職業別に「中国に親しみを感じない」をまとめたものである。この2表から、次の(3)(4)が読み取れよう。
 
表3 世代別・男女別の「中国に親しみを感じない」
 
 表4 職業別の「中国に親しみを感じない」
 
 (3)表3によると、男性で2003-2005年の変化が大きいが、さらに年齢別に見ると、50代、60代で20ポイント以上、40代20ポイント近くの変動を示している。ここ3年ほどの間に40-60代壮年男性の中国嫌いが急激に増えていることが明白である。女性では50代で18ポイントの動きをしているのが一番大きい。20代、30代の若年層は、男女とも2003-2005年の変化は相対的に少なく、10ポイント前後である。
 (4)職業別の表4を一瞥して、2003-2005年の変化が激しいのを探すと、自主営業者の農林漁業が28ポイントでトップである。ついで目立つのは、雇用者内の管理職・専門技術職が23.9ポイントで、事務職とあわせると19ポイントも動いている。管理職・専門技術職・事務職は、高学歴層と同義と見ていい。対照的なのは労務者や主婦で13-15ポイントしか変化していない。ただし、高学歴層ながら若い学生は14ポイントに過ぎない。
 
 さて、筆者は以上の数字に対して、即席であれこれ情況解釈をするのは好まない。しかし、上記の数字をこね回した代償に、一つだけ言わせてもらおう。
 
 2004-2005年の中国嫌い台頭の担い手は、高齢層・男性・知識層の心変わりにある。2004年のサッカー試合での日本バッシング、ついで2004年4月の反日デモ騒ぎは、中国人の日本人に対する本心をさらけ出す結果を招き、日本の40-60代インテリ男性の対中国感情をひどく傷つけ、彼らを一気に中国嫌いに覚醒させた。機を見るに敏な小泉劇場は、靖国神社参拝の反中パフォーマンスを演じ、40-60代インテリ男性の感情の焔に油を注いだ。
 10年の長期的視点では、若年層はむしろ男女とも中国好きが増加して、中国嫌いが減少している。かつて、中国に親近感を示したのは高齢者層で、中国に親しみを感じない若年層の存在が注目されたものだが、いまや事態は決定的に逆転している。叔父さんたちが嫌悪している中国像と、若者たちが親しみを感じている中国像の齟齬は何に起因しているのかを改めて詮索してみたい。
 
このページの上へ <目次>へ戻る