第25号 2006.4.1発行 by 中村 公省
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 全国の第11次5ヵ年計画要綱が全国人民代表大会を通過し、向こう5年間、2010年までの中国の社会発展の青写真が出来上がった。これは3月14日のことであるが、この2カ月ほど前の1月20日には、上海市人民代表大会で上海市の第11次5ヵ年計画要綱が採択されていた。
 上海の5カ年計画要綱は、中共中央の第11次5ヵ年計画の対する提案と中共上海市委員会の第11次5ヵ年計画の対する提案に鑑みて編成されている。計画の編成作業は中共中央の方針の地方への徹底化のワンステップでもあり、地方の提案・要綱は、金太郎飴のごとく中共中央の思想・原則・立脚点、方針、目標が徹頭徹尾貫かれている。
 しかし、全国の計画要綱と上海市の計画要綱の間には明確な違いがある。全国の要綱は全国の状況を配慮して、平均的・総花的で、地区区分としては全国を西部、東北、中部、東部に別けて、発展戦略の差別化をしているにとどまる。無論、上海は東部の雄であり、先進中の先進として全国の牽引車の役割を担わされており、過去14年間の2ケタ成長を踏まえて、向こう5年間の先端的な発展図を描く。この全国と地方との基本的相違に指導者の政治的思惑が相乗し、上海の要綱は、中央の安定的発展・格差是正の方針に反して、発展こそ道理であるという成長路線を基調に市場経済への改革・開放促進の方針に傾斜しているという、まことしやかな「読み」が登場している。
 しかし、いまここではジャーナリスティックな「読み」は棚に上げにする。中国及び上海の中長期の展望を開くには、事実を虚心坦懐に読み解くという歴史洞察の方法に徹すべきである。そのため、上海の5カ年計画要綱は近刊の21世紀中国総研編『上海経済ハンドブック』(2006年6月刊行予定)で全文翻訳する予定であるが、その中枢部分である「第4章 国際経済・金融・通商・海運センターの基本フレームワークを形成する」を以下に掲げて、読者の急場の「読み」の参考に供することにしたい。
 
全国と上海の11次5カ年計画数値目標
 
指 標 全  国 上  海
目標値 実績 目標値 実績
GDP成長率 7.5% 2001-05年平均9.5%2005年9.9% 9%以上(年平均) 2001-05年平均11.5%、2005年11.1%(14年連続二桁成長)
一人当たりGDP 1万9270元、2000年比実質2倍に 2005年1万3985元(対2000年比実質1.4倍) 数値目標無し 2005年5万1954元(対2000年比実質1.7倍)
サービス業のGDPに占める割合 43.3% 2005年40.3% 50%以上 2005年50.2%
R&D費の対GDP比 2.0% 2005年1.3% 2.8%以上 2005年2.3%
都市化率 47.0%   数値目標無し  
非国有セクターがGDPに占める割合 数値目標無し   50%以上 2005年42.5%
GDP1万元当りエネルギー消費の低下率 20.0%   20%前後 18.4%(10.5計画末)
都市登記失業率 5.0% 2005年4.2% 4.5%前後 2005年4.4%
都市住民一人当り可処分所得 1万3390元 2005年1万0493元、2001-05年平均9.6% 安定的増加 2005年1万8640元
農村住民一人当り純収入 4150元 2005年3255元、2001-05年平均5.3% 安定的増加 2005年8340元
(資料)全国と上海の11次5カ年計画要綱及び2005年統計公報から21世紀総研事務局作成
  
上海市国民経済・社会発展第11次5カ年計画要綱
(第4章 国際経済・金融・通商・海運センターの基本フレームワークを形成する)
 
 中共中央の上海発展に対する位置づけを根拠にして、2020年までに上海は基本的に国際経済・金融・通商・海運のセンターとなり、社会主義の現代化した国際的大都市を建設しなければならない。向こう5年の発展環境と基礎条件を総合的に考慮すると、第11次5カ年計画期の経済社会発展の奮闘目標は以下のようになる。

 経済社会の速やかで好ましい発展を実現し、成功し・素晴らしく・忘れ難い万博を開催し、国際経済・金融・通商・海運センターの基本フレームワークを形づくり、社会主義の現代化した国際的大都市建設で段階的進展を収め、上海が2011年から2020年までの間に持続的に発展する強固な基礎を築く。

 具体的には、以下の通りである。
 
(1)経済の持続的・高速・健全な発展を維持する。構造の最適化、効率・収益の向上、省エネを基礎にして、全市の年平均経済成長率を9%以上、2010年GDPを1.5億元とし、サービス経済を主とする産業構造を序々に形成し、地方財政収入の伸び率をGDP成長率と同率に維持する。
(2)経済成長方式の重大な転換を実現する。資源の利用効率を著しく向上し、単位GDP〔1万元〕当たりエネルギー消費を第10次5カ年計画期末比20%程度削減し、生態型都市建設で全面的な進展をかちとり、環境保護投入額の対GDP比を3%とする。
(3)科学・教育による市の振興戦略の実施で新たな突破をかちとる。都市革新システムを基本的に形成し、全社会R&D〔研究開発〕支出の対全市GDP比を2.8%以上とし、科学技術の進歩寄与率を65%程度とし、自主知的所有権と自主有名ブランドをもち、国際競争力のある優位企業を育成する。教育の総合改革を深化し、労働者の資質を引き続き向上する。
(4)都市総合サービス機能を著しく強化する。多元化的な金融市場と金融機構体系の形成を急ぎ、金融発展の環境を一層整備する。国内金融センターの地位強化を基礎とし、国際的に影響のある金融センターの一つになる。洋山深水ハブ港と上海ハブ空港を基本的に建設する。対内対外通商の一体化、商品貿易とサービス貿易の並行的発展の仕組みを形成する。国際金融・海運・通商センターの相互の融合を通して、経済中心都市の集中・放射機能を著しくに強化する。
(5)人民の生活の質量を一層向上する。都市・農村住民家庭の一人当り可処分所得を持続的・安定的に伸張し、都市登記失業率を約4.5%程度に抑え、各種社会保障の全カバーを基本的に実現する。住民は便利な基本医療と公共衛生サービスを普遍的に享受する。人民大衆の文化生活は一層豊かになり、市民の資質と文明レベルが普遍的に向上し、都市の公共安全保障を有効にする。
(6)一層活力があり、さらに開放的で、世界水準に合致した体制環境をつくる。浦東の総合付帯改革実験で重要な突破をかちとる。民主・法制の整備とサービス政府・責任政府・法治政府づくりを不断に推進する。現代的企業制度・現代的財産権制度・社会信用制度と現代的市場システムを一層整備する。国有経済の戦略的調整で新たな進展をかちとり、非公有制経済生産額の対GDP比を50%程度とする。外資導入の質量と水準を向上し、国内外のグローバル企業と企業グループの地域本部と国際機構を一層集中させる。開放型経済システムのフレームワークを基本的に形成し、都市の国際化・市場化・情報化・法治化の程度を著しく向上する。
 
(資料)上海市国民経済和社会発展第十一个五年規劃綱要(2006年1月20日上海市第十二届人民代表大会第四次会議批准)より21世紀中国総研事務局訳〔未定稿。全文定稿は21世紀中国総研編『上海経済ハンドブック』(2006年6月刊行予定)を参照〕
 
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