第26号 2006.5.1発行 by 中村 公省
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 デジタル化の大波でカメラ市場に地滑り的な変動が生じた。カメラ映像機器工業会の総出荷実績と予測を見てびっくりした(図参照)。デジタルカメラが銀塩カメラを凌駕した2002年を転機に銀塩カメラは対前年伸び率が急激に落ちこみ衰退状態にある。これに対してデジタルは2002-2005年に爆発的に伸び約6500万台に達した。しかし、わずか数年の間に普及が一巡して2006年以降はもはや大きな伸びは望めない。2005年から始まった高級機・レンズ交換式一眼レフの急伸に業界の期待がかかっている。だが、安価なインスタントカメラとしてのデジタルカメラ付携帯電話の普及は目を見張るものがあり、カメラの地位を脅かしている。

日本のカメラメーカーの総出荷台数(実績と見通し)
グラフ:日本のカメラメーカーの総出荷台数(実績と見通し)
注: (1)総出荷は国内出荷と輸出の合計
(2)2005年までは実績。以降は予測
(資料)カメラ映像機器工業会

 こうした事態に直面してカメラ業界は大揺れに揺れている。衝撃的だったのはミノルタ(中国名=美能達)とコニカ(中国名=柯尼卡)が合併したコニカミノルタ(2003 年成立)のカメラ事業及びフィルム事業からの完全撤退である(2006年1月発表)。デジタル一眼レフカメラシステムの一部資産はソニーに譲渡された。カラーフィルムは2006年度下期末までに生産終了。3700人の人員削減が行われる。ガラス・レンズの研磨・ユニットの組立ての旧コニカ大連、旧ミノルタのコンパクト・カメラ2 工場などがどうなるかは定かでない。
 京セラも普及価格帯のデジカメ市場で競争していくことは困難と判断し2005年撤退を決めた。フィルムのトップメーカーの富士写真フィルムは、社名から「写真」をはずし「富士フィルム」と改める。2006年1月末、カラーフィルムや印画紙など写真感光材料部門の人員の5000人削減を発表した。デジタルカメラも収益を圧迫している状態にあるが、このリストラによる富士フィルム(中国)への影響はないとされ、蘇州でのデジタルカメラ生産センターの新規設立は確定している。
 高級カメラの老舗ニコンもリストラを免れない。同社はコンパクト・カメラの生産を中止、フィルム一眼レフカメラ事業を縮小し、デジタル一眼レフのリーディングカンパニーとして生き残ることを模索している。
 光学機器メーカーの市場退出とは対照的に、光学機器メーカーの資産を取り込んだ電機機器メーカーの一眼レフデジカメ市場への新規参入が目立つ。
 コニカミノルタから一眼レフカメラの遺産を引き継いだソニーは、コニカミノルタの「」ブランドを冠したマウント交換式レンズを装着した一眼レフカメラを2006年夏から発売する。松下電器はオリンパスの「フォーサーズシステム規格」に準拠したデジタル一眼レフカメラを共同開発する(2005年1月合意)。また、ペンタックスは韓国のサムスンテックウインとレンズ交換式デジタル一眼レフカメラの開発で合意している(2005年10月)。レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ参入の気配のないのはカシオで、得手の「軽薄短小」のレンズ付きデジカメに傾注している。
 カメラ各社はデジタル化とともにグローバル化の経営構造再編に迫られ、中国への生産移転、中国市場における販売開拓を急いでいる。
 キヤノン(本社=東京都大田区、中国名=佳能)はデジタルカメラで市場占拠率20%を占め、カメラ事業は2005年実績で売上高8792億円、対前年伸び率15.2%増、営業利益1738億円、対前年伸び率32.8%増とカメラ業界で一人勝ちの様相である。その中国カメラ製造拠点は、広東省の珠海、東莞の2 カ所にある。キャノン珠海は1990 年に独資で設立したカメラ、レーザー・プリンター、ファックスなどの多品種大規模工場。東莞の広東聯合光学儀器の方は1995 年合弁で設立のカメラ専門工場で年産60万台の生産能力がある。2003 年にデジタルカメラの生産を開始し、最新のデジタル一眼レフEOS300D などを人民大会堂を舞台に中国で世界同時発売した。統括会社の佳能(中国)は販売に力点を置いている。中国での社会貢献活動にも精力的で「21世紀経済報道」の「ベスト企業市民」賞を受賞している。
 富士写真フィルム(本社=神奈川県南足柄市、中国名=富士膠片)の中国進出は1996 年からで、インスタントカメラを手始めに、コンパクト・カメラを経て、デジタルカメラの生産まで手がけている。蘇州に3 つの製造拠点を集中させていて、インスタントフィルム、インスタントカメラやフィルムカメラの工場、デジタルカメラ、電子機器部品の工場、デジタルカメラ、その他イメージング機器の工場を配している。中国への総投資額3億米ドル、2004年の在華企業売上高約14億ドル。蘇州におけるデジカメの生産台数は160万台に達しており、ここを富士フィルムのデジタルカメラ生産センターとする方針である(CNET科技資訊網2006年3月31日)。なお、天津の富士光機は2004年に新工場を建設して携帯電話用レンズユニットを中心とする光学デバイスの生産能力を大幅増強している。
 ソニー(本社=東京都品川区、中国名=索尼)のデジタルカメラは中国で最も人気がある。大画面でスタイリッシュ・スリムなサイバーショットが受けている。日本からの輸入品ではなく上海ソニー電子(1993 年設立)の製品を供給している。
 カメラの老舗ニコン(本社=東京都千代田区、中国名=尼康)は東莞と杭州の2 カ所の製造拠点をもっているが、デジタルカメラのコスト競争力強化のために2002 年、江蘇省無錫にニコン・イメージング・チャイナを設立した。また、2005年に全額出資の販売・サービスの子会社を設け、中国における販売、サービス体制の整備に乗り出した。
 オリンパス(本社=東京都新宿区、中国名=奥林巴斯)は「完全中国製造および完全中国販売を実現した唯一の外国メーカー」である(『人民日報』2003 年1 月17 日)。即ち、フィルムカメラの全量を中国で生産しているが、さらにデジタルカメラも中国生産移管し、それら製品を中国市場で販売している。日本国内の4 製造拠点は大胆に整理、技術開発機能を統合して、広東省の2 拠点を拡充した。深圳工場内に、主にデジタルカメラ用レンズを生産する施設を増設、また、番禺工場の近接地に組立て工程施設を新設し、デジタルカメラの大幅な増産体制に備えている。オリンパス流に言えば、「創」の部分の研究開発は日本国内の拠点で、「造」の部分の量産はローコストの中国拠点でという住み分けである。オリンパスはもう1 つの生産拠点の北京市北照工場でもカメラを製造しており、2003 年にデジタルカメラ「μ」(ミュー)シリーズを、世界に先駆け中国で先行発売した。販売においては上海、北京、瀋陽、成都、広州、重慶、昆明、深圳、西安に修理店を置き、直属サービス拠点を上海、北京に設けている。香港、上海、北京、広州、深圳、西安、成都などの主要都市には「奥林巴斯」の大型ネオンサインがきらめきブランド・イメージを高めている。内視鏡と生物顕微鏡部門においては、中国で拡販を図るために、現地販売代理店を統合し、販売・サービス子会社を設立、2004 年から業務を開始した。
 ペンタックス(本社=東京都板橋区、中国名=賓得)は、2003 年に初めて中国に拠点を築いた。賓得精密机器(上海)で、カメラ、デジタルカメラ、医用機、光学製品、及び関連部品の研究開発、生産、販売及びアフターサービスを行っている。
 

表 日本のカメラメーカーの進出状況
現地企業名 事業内容 地点 形態
キヤノン    
佳能珠海㈲ コンパクトカメラ、デジタルカメラ、レーザー・ビーム・プリンタ、MFP、イメージ・スキャナ、コンタクト・イメージセンサの製造・販売 広東省珠海市 独資 1990年操業
広東聯合光学儀器㈲ コンパクトカメラおよびデジタルカメラ 広東省東莞市 合弁 1995年設立
佳能(中国)㈲ 統括会社 北京市 独資 1997年設立
ニコン    
広東尼康照相機㈲ カメラの製造 広東省東莞市 合弁 1996年設立
杭州尼康照相機㈲ カメラの製造 浙江省杭州市 合弁  
尼康光学儀器(中国)㈲ デジタルカメラの製造・販売(年産200万台目標) 江蘇省無錫市 独資 2002年設立
尼康映像儀器銷售(中国)㈲ 中国における映像関連商品の仕入、輸入、卸販売及びアフターサービスに関する業務 上海市 独資 2005年操業
富士写真フイルム    
蘇州富士膠片映像機器㈲ インスタントカメラ、インスタントフィルム、APSカメラなどの開発、製造・販売及びアフターサービス 江蘇省蘇州市 独資 1995年認可
蘇州富士膠片映像機器部品㈲ デジタルカメラ、電子部品の開発、製造・販売及びアフターサービス 江蘇省蘇州市 独資 1997年設立
蘇州富士数碼図像設備製造㈲ デジタルカメラ、その他イメージング機器の開発、製造・販売及びアフターサービス 江蘇省蘇州市 合弁 2001年設立
天津富士光機㈲ カメラ付き携帯電話用、デジカメ用レンズ、液晶プロジェクター用レンズユニット他の加工・組立 天津市   1994年設立
富士膠片(中国)投資㈲ 持株会社。中国内子会社への投資、中国におけるビジネスの統括、投資先企業製造製品の販売など 上海市 独資 2001年設立
オリンパス    
奥林巴斯(中国)投資㈲ 統括 北京市 独資 2000年設立
奥林巴斯(深圳)工業㈲ カメラ(塩銀、デジタル)の組立、カメラ用部品(レンズ・プラスチック部品、基盤実装)の製造 広東省深圳市 独資 1991年設立
北京北照奥林巴斯工業㈲ カメラの製造・販売 北京市 合弁 1997年設立
奥林巴斯(北京)銷售服務㈲ 医療用内視鏡と周辺機器、外科内視鏡、処置具類、及び光学顕微鏡の販売、修理サービス 北京市 独資 2003年設立
奥林巴斯(北京)科技㈲ 大容量ドライブ、顕微鏡、デジタルカメラの製造・販売 北京市 独資 2001年設立
奥林巴斯(広州)工業㈲ デジタルカメラ、録音機の製造・販売 広東省広州市 独資 2003年設立
ペンタックス    
賓得精密機器(上海)㈲ カメラ、デジタルカメラ、医用機、光学製品、及び関連部品の研究開発、生産、販売及びアフターサービス 上海市 独資 2003年設立
ソニー    
上海索尼電子㈲ 8ミリ・ビデオカメラ、DVカメラ、デジタルカメラ、DVD、オーディオコンポ、ブレイステーション用ピックアップなどの製造・販売 上海市 合弁 1993年操業
カシオ計算機    
カシオ(上海)貿易㈲ 中国における電卓、時計、電子楽器、デジタルカメラ等の販売 上海市 独資 2003年設立
【資料】『中国進出企業一覧 上場会社篇[2005-2006年版]』および『中国進出企業一覧 非上場会社篇[2005-2006年版]』より
  
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