第46号 2008.2.12発行 by 中村 公省
    大都市の一人当たりGDP(2007年) <目次>へ戻る
1.深圳市の一人当たりGDPが1万米ドルを突破
 中国都市レベルの一人当たりGDPは従来、戸籍人口を母数として算出されており、実態よりもだいぶん過大であった。戸籍人口とは当該都市に戸籍がある人口のことで、これに対して戸籍人口に他所から流れ込んで半年以上当該都市に居住している無戸籍の人口を加えた人口を常住人口という。
例えば、深圳市の人口構成は、他所から流れ込んだ流動人口が圧倒的多数を占めていて、戸籍人口は常住人口の4分の1以下にすぎない(2006年23.3%)。戸籍人口を母数とすれば、実勢である常住人口を母数とする数値の4倍以上の数字がはじき出されることになる。
 こんなインフレ数字がまかり通っていたところが、中国地方統計が当てにならないゆえんであったが、今年から多くの地方統計局がようやく「一人当たり」を、戸籍人口に半年以上在住の流動人口を加えた常住人口(注)を母数として算出し始めた。
 「2007年深圳市の一人当たりGDPが1万米ドルを突破」
という見出しの深圳統計局発表を見ると、2007年のGDPは6,765.41億元、対前年成長率14.7%で、一人当たりGDPは79,221元。この人民元数字を年平均レートで換算すると1万413米ドルとなる。
 GDP1万ドルとは、ハンガリー(2005年59位)の一人当たりGDPとほぼ同程度で、韓国が2005年49位、1万5840米ドルのレベルにある。
2. 主要都市が雁行形態で1万米ドルを目指す
 2007年GNP統計を既に発表した広州市、上海市、北京市、天津市の常住人口による一人当たりGDPを調べたのが表1である。米ドル換算で、広州9366米ドル、上海8594米ドル、北京7370米ドル、天津6027と雁行形態で連なっている。

表1 主要都市の2007年一人当たりGDP
都市 GDP(億元) 対前年成長率
(%)
一人当たりGDP
(元)
対前年成長率
(%)
一人当たりGDP
(米ドル)
深圳市 6,765.41 14.7 79,221 10,418
広州市 7,050.78 14.5 71,219 11.3 9,366
上海市 12,001.16 13.3 65,347 8,594
北京市 9,006.20 12.3 56,044 8.9 7,370
天津市 5,018.28 15.1 45,829 11.2 6,027
中国 246,619.00 11.4 16,084(2006年) 2,018(2006年)
注:米ドル換算は1ドル=7.6040元として21世紀中国総研算出
(資料)各都市統計局

 世界銀行の指標では1万726米ドルを高所得国としている(2005年データに依拠した2007年版インディケーター)から、深圳の経済レベルは高所得国レベルの達したといっていい。また、世界銀行では3466米ドルから1万725米ドルを、高位中所得国としているから、広州、上海、北京、天津はみな、高位中所得国レベルにあり、数年うちに高所得国レベルをうかがう位置にある。
 中国全体の一人当たりGDPは2000米ドル余で、低位中所得国レベルにあるが、これを2010年に3000米ドル、2020年に2000年の4倍増にして、2050年には先進国レベルの達するというのが当局の発展計画である。人民元の対米ドルレートの持続的上昇も、ドル表示の一人当たりGDPの上昇にとって追い風となっている。上記の数字は、改革開放の尖兵の深圳をはじめとする大都市が先に豊かになり、それに続くものが後を追うという構図のなかにある。
 広州はすでに一人当たりGDPが1万米ドルに近い。2007年の人民代表大会では、2010年に全市のGDPの1兆元突破、一人当たりGDPを1万3000米ドルにすると打ち上げている。まだ2007年数値は発表されていないものの、これまでの経緯から広州と同列にあると推定される南方の都市に珠海、厦門などがある。
 深圳、広州に水を開けられている上海市統計局の潘建新局長は上海の一人当たりGDPはグローバル基準ではもっと多いのだと、言いたげな記者会見を行った。
 「国際的慣例ではGDPは一年の生産総額であり、それゆえ一人当たりGDPを計算するには常住人口口径は満1年以上を要する。満1年以上の常住人口で計算すると、上海市の2007年一人当たりGDPは6万8049元、8949米ドルとなる。」
 長江デルタの杭州市統計局は、何故か趨勢に逆らって、戸籍人口で2007年一人当たりGDPを発表している。杭州全市のGDPは4000億元を突破し4103.89億元、対前年比14.4%で17年間連続して二桁成長を達成、一人当たりGDPは戸籍人口計算で6万1313元、米独換算で8000米ドルを越え8063米ドルとなった、と。

3. 北京市一人当たりGDPの伸び悩み
 北京はオリンピックのインフラ建設に伴い外地から流動人口(季節労働者)が大量に流れ込み、2007年は常住人口の増加が2001年以来最多となった。戸籍人口1213.3万人(5.4万人増加)、外来人口419.7万人(46.6万人増加)で常住人口は合計1633万人(52万人増加)。この母数の増大のために、GDP成長率12.3%に比して一人当たりGDP成長率は8.9%にとどまった。
 そこで、表2、表3を作成してみた。北京市のGDPと一人当たりGDP成長率の推移を見たのが表2、外来人口の推移と見たのが表3である。

表2 北京市のGDPと一人当たりGDP成長率の乖離
GDP(a) 一人当たりGDP(b) (a)-(b)
1979年 9.7 7.4 2.3
1980年 11.8 9.8 2.0
1986年 8.0 4.6 3.4
1987年 9.6 6.1 3.5
1988年 12.8 11.0 1.8
1989年 4.4 3.1 1.3
1990年 5.2 4.0 1.2
1991年 9.9 8.9 1.0
1992年 11.3 10.5 0.8
1993年 12.3 11.4 0.9
1994年 13.7 12.5 1.2
1995年 12.0 5.4 6.6
1996年 9.0 3.1 5.9
1997年 10.1 10.6 -0.5
1998年 9.5 10.1 -0.6
1999年 10.9 10.2 0.7
2000年 11.8 6.8 5.0
2001年 11.7 6.5 5.2
2002年 11.5 9.2 2.3
2003年 11.0 8.2 2.8
2004年 14.1 11.4 2.7
2005年 11.8 8.8 3.0
2006年 12.8 9.6 3.2
2007年 12.3 8.9 3.4
(資料)『北京市統計年鑑』2007年版、2007年は北京市統計局速報

表3 北京市の外来人口
単位:万人、%
常住人口 戸籍人口 外来人口 外来人口対前年増加 常住人口に占める
外来人口(%)
1978 871.5 849.7 21.8 2.5%
1979 897.1 870.6 26.5 4.7 3.0%
1980 904.3 885.7 18.6 -7.9 2.1%
1985 981 957.9 23.1 4.5 2.4%
1986 1028 971.2 56.8 33.7 5.5%
1987 1047 988.0 59 2.2 5.6%
1988 1061 1001.2 59.8 0.8 5.6%
1989 1075 1021.1 53.9 -5.9 5.0%
1990 1086 1032.2 53.8 -0.1 5.0%
1991 1094 1039.5 54.5 0.7 5.0%
1992 1102 1044.9 57.1 2.6 5.2%
1993 1112 1051.2 60.8 3.7 5.5%
1994 1125 1061.8 63.2 2.4 5.6%
1995 1251.1 1070.3 180.8 117.6 14.5%
1996 1259.4 1077.7 181.7 0.9 14.4%
1997 1240.0 1085.5 154.5 -27.2 12.5%
1998 1245.6 1091.5 154.1 -0.4 12.4%
1999 1257.2 1099.8 157.4 3.3 12.5%
2000 1363.6 1107.5 256.1 98.7 18.8%
2001 1385.1 1122.3 262.8 6.7 19.0%
2002 1423.2 1136.3 286.9 24.1 20.2%
2003 1456.4 1148.8 307.6 20.7 21.1%
2004 1492.7 1162.9 329.8 22.2 22.1%
2005 1538.0 1180.7 357.3 27.5 23.2%
2006 1581.0 1197.6 383.4 26.1 24.3%
2007 1633.0 1213.3 419.7 36.3 25.7%
(資料)『北京市統計年鑑』2007年版、2007年は北京市統計局速報


 GDP成長率より人口増加率が多ければ一人当たりGDP成長率はGDP成長率より小さくなる。逆にGDP成長率が人口増加率より大きければ一人当たりGDP成長率はGDP成長率より小さくなる。表2には北京市の両者の乖離を算出してある。マイナスはGDP成長率が人口増加率を凌駕したことを表している。
 このベースになっているのが表3の常住人口と戸籍人口の差で算出される外来人口の増減である。外来人口の増加には1995年と2000年の二つのピーク(100万人前後)があり、2002年以後20-30万人を推移している。その累積人口は北京市人口全体の4分の1に達している。
 北京オリンピックが外地から流動人口を呼び込み、北京の一人当たりGDPの成長率にブレーキをかけた。この現象は続いて2010年に万博開催を予定している上海でも生じるのではなかろうか。

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