第47号 2008.3.9発行 by 中村 公省
    冷凍ギョーザ中毒事件と日中冷凍食品企業 <目次>へ戻る
 農薬(メタミドホス)が混入した中国製冷凍ギョーザで中毒事件が発生し、日本の家庭の台所をパニックに陥れた。事件の捜査結果が日中の警察当局間で対立して、犯人の割り出しは困難な雲行きだが、その背後には日中の根深い社会文化の違いが露呈していて、両国当局者に反省を迫っている。
1 日本警察庁V.S.中国公安部
 2008年2月28日、事件発生1カ月後、日中の捜査当局は捜査結果を明かして角突き合わせた。
 吉村博人警察庁長官曰く 「日本での混入の可能性は極めて低い」
 余新民公安部副局長曰く「中国での混入の可能性は極めて低い」
 メタミドホスは密封された冷凍ギョーザの袋の内側から発見された。これについて、日本側の実験結果はメタミドホスは外側から内部へは浸透しない、逆に中国側は浸透する、との実験結果を得た。
 メタミドホスには不純物が含まれている。これについて、日本側は日本国内にないものだと断じたが、中国側は不純物はメタミドホスメーカーの判定材料にならないと反論した。
 数点にわたる対立の主要な根拠は捜査の科学的検証方法の食い違いにあるにもかかわらず、売り言葉に対する買い言葉の応酬で、まるで非科学的である。自己主張のパフォーマンスも対照的であった。日本側の主張の場はマスコミに向けた密室での記者会見だったが、国務院(政府)新聞弁公室が演出したテレビ会見は国民劇場であって、野次馬の前で自己の正当性をアピールしてみせる中国型喧嘩作法を髣髴させた。
 この「喧嘩」をなだめすかし、互いの顔を立て、いさかいを引き取る大人(たいじん)がいないものか。
 絡まった糸をほぐす糸口は、「冷凍ギョーザで中毒事件は農薬残留問題による食品安全事件ではなく人為的に起こされた個別的事件である」という中国側主張にあろう。事件はまさしく犯罪である。日本の警察は日本国内の捜査権しかなく、中国公安部は中国国内にしか捜査権がない。互いに自国内の捜査を放擲してどうなる。警察庁は日本国内の「極めて低い」可能性を追及し、公安部は中国国内の「極めて低い」可能性を追及する。初動捜査を疑え! 
 事件発生後1カ月半の3月13日、千葉県警は現場に立ち戻った捜査結果を発表した。
 被害にあった市川市の母子5人のうち、子どもが吐き出したギョーザの皮と具から検出されたメタミドボスは3000PPM。これは残農薬基準の1万倍もの高濃度であり、皮と具の両方から同程度の濃度で検出されたところから製造工程で故意に混入された可能性がさらに高まったという。
 これに対して中国外交部当局は、「中国公安部は近く毒物検査、試験専門家と捜査専門家を派遣し、日本の警察とギョーザ事件の捜査、試験などの状況について意見を交換する。両国の警察は協力を一層強化し、事件の真相を早急に解明することを願っている」と応じた。これが外交辞令に堕さないことを願うばかりである。
 「人為的に起こされた個別的事件」の背景として、残留農薬による食品の安全問題が伏在していることは明白である。メタミドホス、ジクロルボス、パラチオン、パラチオンメチル、ホレート。冷凍ギョーザ中毒事件にともなう中国製冷凍食品の緊急検査によって、日本では農薬成分の検出が相次いだ。
 魏伝忠国家品質監督検査検疫総局副局長は、先の記者会見で「メタミドホスを生産、販売、使用、所持、輸送するのは2008年1月1日からすべて重大な違法行為」と言っているが、2月24日未明、湖北省宜城市の高速道路上で5トンものメタミドホスを積んだトラックが横転し、有毒ガスが漏れ出る事故が発生した(『武漢晩報』2008年2月26日)。中国社会は重層的で、奥深く、お役人の「帝力」が及ばないところで躍動しているのである。
 農薬の使用禁止・規制、残留農薬の検査態勢の確立をないがしろにして、国民の生命の保障も国家の面目もない。冷凍ギョーザや具材の肉・野菜を食べるのは日本人ばかりではあるまい。SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザなどの感染症、松花江ベンゼン汚染、鉛入り玩具、ネズミ駆除用の化学物質混入ペットフードなど生命の脅威にかかわる事件がひきもきらず、中国の体面は決して清潔とは言いがたい。
 「両国間の食品安全性協力を強め、両国の経済・貿易の健全な発展をはかるため、中日双方が早急に食品の安全性に関する長期的協力の仕組みをつくるよう希望する」(魏伝忠国家品質監督検査検疫総局副局長)。これもまた美辞麗句に堕さないことを願うばかりである。
写真:事故を起こしたトラックからメタミドホスを移動させる消防官兵防毒面、防化服を装着して猛毒化学品メタミドホス(多劇毒危化品甲胺燐)を転送する消防官兵(武漢晩報2008.02.26http://news.cjn.cn/ctsm/200802/t577775.htm
2 面目丸つぶれ V.S. メンツとミエ
 冷凍ギョーザで中毒事件に対する日中の企業責任者の対応の違いもテレビ画像に鮮やかに映し出された。
事件発覚(1月30日)直後に、日本国内における輸入業者ジェイティフーズ(以下JTフーズ)や販売業者生協などは、平身低頭して「お詫びと回収」に努めた。
 「弊社子会社のジェイティフーズ株式会社が輸入販売する冷凍食品の一部をお召し上がりになったお客様において、嘔吐・めまい等を伴う重大な健康影響が発生いたしました。千葉県警察等の発表によれば、当該商品において、有機リン系殺虫剤が検出されたとのことです。現時点では、有機リン系殺虫剤が当該商品に混入した原因等については調査中ですが、万全を期すために、今般、当該商品と同一工場で製造されております商品を自主回収することといたしました。」(http://www.jti.co.jp/JTI/apology.html
 しかし、問題の製造元の河北省食品輸出入(集団)公司・天洋食品厰(河北省石家荘市)の底夢路工場長は、2月15日の記者会見で、工場内での毒物汚染は「不可能」と断言、「われわれこそ事件の最大の被害者だ」とミエをきった。この記者会見を報道した新華社は、「国際社会の『拷問』に冷静沈着に対応」と工場長のパフォーマンスを賞賛した。
 日本側当事者の面目丸つぶれ V.S. 中国当事者のメンツとミエ。
 日本人は気軽に「すみません」と言う、中国人は容易に「対不起」を口にしない。この典型的な対応は、日中の社会文化の根底にあるものをさらけ出した。
 日本社会にあって「すみません」は、あいさつ言葉の一種であり、人間関係の潤滑油として機能している。日本側当事者は、非を認め、会社が消費者の信頼の回復をかちとるための儀式として平身低頭したのである。
 これに対して中国の工場長は自分自身と工場に非がないことを主張し、自尊心を満足させた。中国社会では謝っていいことは何もない。謝ればメンツがつぶれ、罪が重くなるだけである。
 この地方性国有企業経営者には、天洋食品厰の全製品が日本で回収され、日本の輸入業者から取引を停止にされ、売り上げが激減する……という市場メカニズムの帰結が読めない。記者会見の場を消費者の信頼回復の舞台とする配慮など思いもつかない。計画経済から市場経済への転換とは、生産者主権のモノ不足社会から消費者主権のモノ余り社会への転換を意味している、と私は理解しているが、「親方五星紅旗」のアタマは旧態依然である。
 つくってやる、売ってやる、おかみのやることに間違いはない。

天洋食品の包装工程
http://www.china-114.net/main/corp/detail.asp?corpid=tianyang

 河北食品進出口(集団)天洋食品厰は、河北省食品輸出入(集团公司が出資・設立した大型で近代的な肉食加工企業。固定資産9700 万元。国有大型二類企業。製品は主に冷凍食品で、主要輸出先は日本、香港。
工場住所は河北省石家荘市倉豊路31 号。
本社のURL は  http://www.tianyangfood.cn/index.aspx
 左は底夢工場長

 しかし、日本の主婦は、事件の全容が解明されないかぎり、天洋食品製品を買わないだろう。JTフーズの2月の売り上げは前年同期比6割減、市販品については9割減という。また、2月の中国食品輸入は前年同月比28%減少した。
 食い物の恨みは大きいのだ。
3 ニチレイフーズ、日本水産、味の素冷凍食品の対応

 誤解してもらっては困るが、私はここでJTフーズ、加ト吉、生協など日本の関連業者を持ち上げているのではない。彼らは、製造責任を中国の業者に丸投げして、その製品の検査をないがしろにしていた。事件の根本原因は、日本の丸投げ業者の食の安全性に対する無責任に帰着する。
 冷凍食品業者は他にもたくさんあり、それぞれに中国で製造した製品の安全性管理には最大限、細心の努力を払っている。

表1 天洋食品工場からの日本の輸入業者一覧
㈱タニインターナショナル ㈲日佳食品 西原産業
▲㈱ワントレーディング KH通商(有) 双日㈱
㈱神戸物産 ▲ジェイティフーズ㈱ 太洋物産㈱
㈲イメックス ジャパンフード㈱ 東海澱粉㈱
㈲インターグローバル シンポインターナショナル ▲日協食品㈱
㈲ハイキクトレーディング 住金物産㈱ 豊田通商㈱
注: 2007 1 1 日から2008 1 30 日速報値。②以上のうち▲の3 社がギョーザを輸入し、ジェイティフーズ(株)の輸入量は123 トン0739 キログラム。
(資料) 厚生労働省「中国産冷凍ギョウザが原因と疑われる健康被害事例の発生について」から作成。

 冷凍ギョーザ事件が発生すると、業界最大手のニチレイフーズは、このときとばかり、「天洋食品と当社とは取引がございません」「弊社製品につきましては、回収等いたしておりません」と公示した。
 同じく天洋食品と取引のない日本水産はニッスイブランドを生産する認定工場に対しては事業部門・中国品質管理センターが定期的に巡回指導を行うほか、品質保証室が定期的に監査を行っていると声明した。「中国品質管理センターでの農薬の分析項目は一斉分析法で435項目、この中には(検査対象として)今回他社で『冷凍ぎょうざ』に残留が確認されたメタミドホスやジクロルボスを含んでおります。」
 現場では、それ相応の検査態勢を築いていますよ、という次第である。
 味の素冷凍食品は生産委託ではなく、自社工場(冷凍食品は江蘇省の連雲港味之素如意食品と連雲港味之素冷凍食品の2社、冷凍野菜は福建省厦門のアモイ味の素ライフ如意食品)で「日本と同様の品質管理を行っています」と言明した。
 しかし、後に国内工場で生産している製品の一部に天洋食品製「味付けカルビ肉」を加工用原料として使用している事実が判明し、「お詫びと商品回収」に走ったが、回収品の検査結果でことなきを得た。
 かつて日本で問題になった数々の残留農薬事件をへて、業者は中国野菜の泣き所である安全性をクリアする態勢をそれなりに整えた。
 安全対策の決め手は、トレーサビリティ(追跡可能性)と残留農薬自主検査態勢の構築にある。トレーサビリティとは、個々の野菜がどこの畑で、誰によって、どのように栽培され、どのように加工・製造されたか、またどのような流通過程をたどったかを遡って、追跡できる管理システムである。残留農薬自主検査機関としては、日系企業18社が出資して野菜産地近くの青島に設立した青島食品安全研究所をあげることができる。ここでは残留農薬検査、重金属検査、遺伝子組み換え検査、アレルギー成分検査、抗生物質検査、微生物検査が可能だという。

4 「あなたの健康を損なう恐れがありますので食べすぎに注意しましょう」

 トレーサビリティ無視、農薬無検査、ノーガードで天洋食品に「コスト削減のために委託生産」していたJTも相応の再発防止策を発表した(3月4日http://www.jti.co.jp/News/2008/03/20080304_01.pdf)。「安全管理体制強化の方向性」は三つ。
 第1に工場管理強化と検査項目・態勢。「従来年間1~2 回であった監査頻度を、年間2 回の定期監査に加え、抜き打ち監査を行います。」「検査項目に農薬等の化学物質を加えるとともに、国内外の自社検査体制を充実します。」
 第2には情報開示。「お客様からの苦情等に対して、徹底的な調査・検査を行」います。
 第3には社内体制などの組織・体制の強化。「食品事業本部品質管理部に中国駐在を新設し、中国委託先工場の監査、製造立会いを行う体制を整えます。」「国内及び中国に検査センターを設置し、自社で化学物質を含めた検査が可能な体制を整えます。」
 しかし、何かおかしくないか。
 木村 宏JT代表取締役社長兼JTフーズ代表取締役社長は記者会見で、天洋食品との取引に関して「原因究明ができていない段階では取引再開はできない」と述べている。その言やよし。しかし、「食材調達や労働力を考えると中国抜きの生産は難しく委託生産自体は継続する」とも言っている。上記文書をどう読んでも、ほとぼりが冷めれば、天洋食品との取引を再開するという、メッセージばかりである。これは事実上の安全宣言ではないか。
 仮に中国側の主張するように「中国での混入の可能性は極めて低い」とすれば、疑わしいのはJTフーズの国内保管・流通過程である。余新民公安部副局長の捜査結果は言う。
 「毒の入った2ロットのギョーザは共に工場で直接コンテナに積まれており、陸上輸送を担当する天津市立志貨運有限公司の運転手、天洋食品廠の倉庫保管係、工場の国際貿易部品質検査係が共同で封印し運び出した。コンテナは日本の横浜、大阪に着いた後、検品のため封印が切られた。ここでも異常は発見されなかった。」
 封印開封後、このギョーザはいつ、どこを、どう経て、千葉と兵庫の被害者の食卓に届いたのか。中国の政府、メディア、世論の疑惑に対してJTは無防備である。
 「今後における安全管理体制強化の方向性」には、中国製冷凍ギョーザ中毒事件を発生させた管理上の穴の指摘とそれが「管理体制強化の方向性」で払拭できたかどうかが書かれていない。また、多くの社内不祥事件発覚が従業員の良心からの告発であることを踏まえた、コンプライアンス(法令遵守)の指針と通報の奨励、通報者の保護についても言及されていない。
 JTフーズの親会社は発癌物質で商売するJT(日本タバコ産業)であり、「親方日の丸」の体質が消えず、消費者に対する社会的責任が欠落している。冷凍ギョーザの袋には、「あなたの健康を損なう恐れがありますので食べすぎに注意しましょう」という警告を刷りこむ必要がありそうである。

写真:木村 宏社長 木村 宏JT代表取締役社長兼ジェイティフーズ取締役社長(JT業績報告書(2008年3月期(2007年度)中間決算のご報告)よりhttp://www.jti.co.jp/JTI/outline/yakuin1.html
 きむら ひろし 昭和28年4月23日生、出身地= 山口県、学歴=昭和51年3月京都大学法学部卒業。昭和51年4月日本専売公社入社。
 ジェイティフーズはJTの100%子会社。清涼飲料、加工食品、調味料等の販売委託。本社=東京都品川区。資本金4億9000万円。従業員約400人。2001年4月にJTが旭化成の子会社の旭フーズを買収して経営統合した。2007年3月期の売上約1230億円。
5 疑わしきは罰せよ

 さきに私は、日本の消費者は天洋食品製品を買わないと予想したが、JTフーズの「安全宣言」に接して、人の噂も75日、冷凍ギョーザ中毒事件の記憶が薄れれば買うようになるかもしれない、と思い直している。製造日偽装、消費期限切れ再使用の伊勢のあんこ餅「赤福」は事件発覚から115日目の販売再開に際してファンの行列ができた。また、賞味期限改竄の札幌のホワイトチョコレート「白い恋人」の場合も約100日、待ち焦がれていた客が殺到し、各店舗とも完売となったという。食品関連不祥事のほとぼりは、ほぼ3カ月で冷める。
 李長江国家品質監督検査検疫総局局長は、3月13日、千葉県警の再捜査結果発表の日に、こう言っている。
 「中国の食品は安全であり、広範な日本国民は懸念する必要はない。」「最近日本国内の一部の人が不安を抱いているのは主に、一部メディアが中国食品について客観的で公正な事実に基づく報道をしていないためだ。」(http://www.fmprc.gov.cn/ce/cejp/jpn/xwdt/t414708.htm
 この有り難い御宣託は、中華人民共和国駐日本国大使館のWEBサイトに掲げられていて、日本の消費者が熟読玩味して幻影を醒ますのを期待されているのである。
 人間(じんかん)、万事塞翁が馬。禍福はあざなえる縄の如し。幸いにも、というべきであろう。中国政府演出の国民劇場で大見得を切った魏伝忠国家品質監督検査検疫総局(質検総局)副局長と余新民公安省刑事捜査局の首が飛ぶようなことにならないかぎり、「中国での混入の可能性は極めて低い」との言質が覆ることはない。「中国側で農薬成分のメタミドボスが混入された可能性は排除された」(3月6日、付志方河北省副省長)。中国製冷凍ギョーザ中毒事件は迷宮入り。犯人は逮捕されない。
 日本の厚生労働省の業者に対する輸入自粛措置も容易には解除されまい。木村宏JT代表取締役社長兼JTフーズ代表取締役社長の「原因究明ができていない段階では取引再開はできない」という言葉に真実味があるなら、天洋食品の冷凍食品は日本に輸入されることもない。
 李長江国家品質監督検査検疫総局局長は「中国食品を完全に安心して食べることができる」根拠を列挙して曰く、「日本に輸出された中国食品の合格率は2004年が99.40%、2005年が99.56%、2006年が99.42%、2007年が99.81%である」。これは言い換えれば、日本に輸入された10万個の冷凍ギョーザのうち、2004年が60個、2005年が44個、2006年が58個、2007年が19個の割合で不合格品があったことを意味していよう。否、確率など問題になってない。天洋食品製だけでも年間123トン0739キログラムにのぼる冷凍ギョーザのうち、たった2袋の「CO・CO手作り餃子」に高濃度のメタミドボスが混入していたという事実だけが問題なのである。
 日本の主婦の購買行動においては、「原産国 中国人民共和国」の食品は鬼門である。買わないのがベスト。家計が許さないならヤバイものから避ける。野菜なら葉モノはやめて根モノに限る。冷凍食品なら、JTフーズや生協はタダでも見向きもしないが、激安のニチレイフーズや味の素冷凍食品なら買うかもしれない。家族の命にかかわる食品の選択の基準は、疑わしいものは買わず、使わず、口にせず、である。これは神農の昔からの百姓の安全保障策である。
 食品の安全性を管理・監督する側の法律上の思想には二つの流れがある。一つは米国流で、「疑わしきは罰せず」。この場合は、罪を犯したら厳罰に処す。もう一つは欧州流で、「疑わしきは罰する」。即ち、事前におさえこむ予警主義である。日本は食品衛生法は前者の思想に立っているが、「疑わしきは罰せず」ではおうおうにして後の祭りとなることが避けられない。命が失われてからでは遅く、安全性の考え方においては、「疑わしきは罰する」準則が斟酌されなくてはならない。
 中国は安全性の考え方において「疑わしきは罰せず」であり、ましていわんやギョーザ中毒事件は中国国民の命に直接害がおよばない。国家品質監督検査検疫総局の李長江局長や魏伝忠副局長の知性と行動から拝察すると、二人は中国製製品の安全性に対する信念堅固な愛国的宣伝マンに徹している。おまけに、「何者かが他の国や地域から不法に農薬を購入して日本に持ち込む可能性は排除できない」という幻想にふける空想家でもある。
 こうした頑迷尊大な党と国家の忠僕に対して、日本の食の安全にかかわる国民の公僕はどのように対応すべきであったのか。そのモデルは、2月1日、参議院予算委員会での舛添要一厚生労働相発言に示されていたように思う。
 「天洋食品の製品を対象に食品衛生法に基づく輸入禁止措置をとることも検討している」「食品衛生法8条の発動もありうる」。
 同法第8条では、厚労相が食品衛生上の危害発生防止のために必要と判断すれば、食品などの輸入や販売を禁止できると定めている。
 国民の命にかかわる危機管理は迅速を要し、果断な対処が求められる。毒物は排除されなくてはならない。疑わしきは罰せよ!
 強権発動による第一撃で打ち破るべき標的は、生産者主権、親方五星紅旗、夜郎自大の迷妄にある。
 しかしながら、舛添厚相は腰がふらついていて標的が定まらず、「天下の宝刀」をちらつかせただけの話である。「日中友好」に御執心で、ふるまい酒の酔いがさめやらぬ福田康夫首相は終始一貫ノラリクラリ。
 これもまた幸いなるかな。原因が究明されないかぎり、二度目があり得る。次の中国食品中毒事件に備えて、いまや食品衛生法8条の即時発動態勢を整えるときである。

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