第49号 2008.9.11発行 by 中村 公省
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 この夏は雑務に追われ、21世紀総研のホームページを更新する余裕がなかった。盛夏に北京オリンピックがあり、夏の終わりに福田首相退陣があった。2008年夏の思い出に、二つ備忘録をとっておきたい。
写真:星光 写真:漢字
星光 漢字
写真出所  http://www.plapic.com.cn/
(1)北京オリンピックの立役者は解放軍であった
 北京オリンピック開会式では、虚実皮膜の話題に事欠かなかった。事実の生起とテレビ画像とに10秒のタイムラグがあった、北京の空中を闊歩する足跡の花火がCG合成であった、また国歌を歌った画像の美少女は口パクで実際歌ったのは美声少女だった、など。事実とその報道との間のギャップを揶揄する外国報道の基調は、「まだまだ自由がない」と言いたげであった。
 しかし、開会式と閉会式のアトラクションは、人群が描き出す表現が見事で、誰しも感嘆したのではなかろうか。開会式の「諸子百家」「活字母型」の表演では、音楽に合わせて、風、水、天地方円、長城などの図形を描き、中国文明の粋たる活字印刷技術を表現してみせた。閉会式では、立体化し、人の柱を組み立て聖火の炎のゆらめきを描き出した。
 こうした精密なマスゲームを演じるには、長期にわたる過酷な訓練を必要とする。ボランティアだけでは到底できない。プロの演技者でなくてはならない。中国で、この手のプロといえば……。
 「1万4000名の演技者が参加した。そのうち9000名が解放軍の文芸工作者、2488名がボランティア、600名が開会式の聖火工作者、100名が女性の琵琶奏者であった。」(百度ブログ2008.08.30 17:30)
 『解放軍画報』2008年8月号が「三軍オリンピックにかかわる、五星が五輪に輝く」を特集している。「創造」活動だけでなく、テロからの防衛や人工消雨などがあり、陸海空ミサイル部隊、武装警察部隊のそうした活動を詳細に紹介している。
 ともあれスポーツの祭典が、党と国家の柱石=人民解放軍によって保障された事実は、記憶に留めておきたい。
(2)メンツで封印された中国ギョーザ中毒事件

 北京オリンピック開幕直前に、去る1月末に発覚した中国製冷凍ギョーザ中毒事件が新たな展開をみせた。外務省が入手した中国当局からの情報をスクープした『読売新聞』はこう伝えている。
 「中国製冷凍ギョーザ中毒事件に絡み、中国外務省は6日、報道官談話を発表、製造元の「天洋食品」(河北省)が事件後に回収したギョーザが中国国内で流通し、6月中旬、有機リン系殺虫剤メタミドホスによる被害が出ていたことを初めて公式に認めた。「中国国内で同社製品にメタミドホスが混入した可能性は極めて低い」とする従来の主張を転換する内容。」(読売新聞2008.08.07)
 別の報道では中毒患者は4名と伝えられるが、それ以上の5W1Hは、その後1カ月を経ても判明していない。中国内でも、日本の報道を転電するだけで、新たな事実を積極的に伝える情報は一切ない。「天洋食品」が回収したギョーザ中毒事件は完全に報道管制が敷かれている。
 折りしも、「食の安全」を担当する国家質量監督検験検疫総局〔国家品質監督検査検疫総局〕食品生産監督管理司の鄔建平司長(42)が8月2日、飛び降り自殺をするという香港電(星島日報2008.08.08)が流れた。ギョーザ中毒事件と関係があるのかないのか。李長江同総局局長、魏伝忠副局長はそろって「国民大劇場」でメタミドホスが「中国で混入した可能性は極めて少ない」と言い張った張本人であるが、彼らの部下の鄔建平との関連はわからない。中国内の報道では、「貪汚腐敗行為」、すなわち汚職で検察機関の調べを受け、大財産の出所を説明できず、飛び降り自殺したとの由である(世界経理人20080818)。
 李長江同総局局長、魏伝忠副局長のほかにも天洋食品底夢路工場長、余新民公安部副局長など、メンツがつぶれた役者は少なくない。事件の解決を阻んでいるのは、面の皮の厚い役人の存在だと思われる。

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