第59号 2011.01.27発行 by 中村 公省
    日本人の「中国嫌い」は長期的・安定的に持続する
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 旧蝋二十日、恒例の「外交に関する世論調査」が発表された。調査時点は、2010年10月21日~10月31日である。9月7日に発生した尖閣列島沖中国漁船事件に対する感情をもろに反映して、日中関係に対する反応は未曾有の厳しさを示した。


親しみを感じる(小計) 20.00%
 親しみを感じる 4.60%
 どちらかというと親しみを感じる 15.40%
親しみを感じない(小計) 77.80%
 どちらかというと親しみを感じない 30.50%
 親しみを感じない 47.30%
わからない 2.20%

 日本国民の約8割が「親しみを感じない」。即ち、圧倒的多数が「中国嫌い」であることを示したが、この数字をどう見るべきか。
 
(1)かつて、これと好き嫌いが逆の結果を示したことがあった。日中平和友好条約が結ばれた2年後の1980年のことである。
       親しみを感じる……………78.6%
       親しみを感じない…………14.7%
   それ以後、年年歳歳、「親しみを感じる」は低下し続け、30年を経て好き・嫌いが対照的に逆転したのである。日本人の「中国嫌い」の増大は長期的趨勢であると見ていい。
http://www8.cao.go.jp/survey/h22/h22-gaiko/zh/z10.html
 
(2)中国に対する好き・嫌いが、日中関係の政治的動向を敏感に反映することは、21世紀中国総研編『中国情報ハンドブック』から転用したグラフに明らかであろう。(グラフ PDFファイル 1,020KB)中国嫌いを明白に増大させた過去の三大事件は、1989年の天安門事件、1996年の台湾海峡での中国軍事演習、2005年の反日デモである。逆に中国好きを増大させた「事件」は1992年の天皇訪中や2009年の鳩山首相の民主党政権誕生であった。
 
(3)対中関係とは異なり、対米、対ロシア関係においては、政治的動向を敏感に反応して好き嫌いがアップダウンするようなことは、かつてない。
 対米関係においては、「親しみを感じる」が70-80%を持続していて、2010年は80%に及んでいる。「親しみを感じない」は一貫して20%前後を示している。http://www8.cao.go.jp/survey/h22/h22-gaiko/zh/z02.html
 対ロシア関係は、好き嫌いが対米関係とは逆である。即ち、「親しみを感じる」が10-20%程で、近年は15%前後で2010年14%である。一方「親しみを感じない」は75-85%の線にあって近年は80%前後で2010年は82.4%である。http://www8.cao.go.jp/survey/h22/h22-gaiko/zh/z06.html
 これは日本の対米関係、対露関係が、ブレが少なく安定的であったことを反映しているよう。

(4)さて、2011年の年頭にあって、日本人の中国に対する親密度の今後は、どのように見通せるであろうか。形式的パターンとして、三つ想定できる。
①「中国嫌い」の長期増大趨勢が持続する。
 対ロシアの関係で1995年86.4%という記録がある。世論調査は行われていないが対北朝鮮感情では、100%近くの日本人が「親しみを感じない」であろう。尖閣列島沖中国漁船事件に類する領土問題が再燃するなら、対中国に「親しみを感じない」が85%程度になる可能性はあると見ておいていいだろう。
②最悪の2010年で反転して「中国嫌い」が減少し「中国好き」が増大する。
 「親しみを感じない」が2010年は尖閣列島沖中国漁船事件で77.8%であったが、前年の2009年は首相の「友愛の海」スタンスで58.5%であったように、「戦略的互恵関係」の情勢如何によって「親しみを感じる」が勢いを取り戻すことがあり得る。しかし、「親しみを感じない」の長期低落傾向を食い止めるような日中のウインウイン関係を築くことが果たして可能であろうか。
③2010年の「中国嫌い」80%の線から多少上下するものの、「中国嫌い」圧倒的という国民的感情は変わらない。即ち、これまでのように政治的動向を敏感に反応して中国に対する好き嫌いがアップダウンするようなことは基本的になくなり、対ロシア感情と同様に中国嫌いが国民的コンセンサスを得る状態が長期的・安定的に持続するパターンである。
 
 (5)日本の対中関係は感情的な政治動向によってブレた結果、国民の好き嫌いの指標がアップダウンした。アップダウンしつつも長期的趨勢で親密度が低下し続けたのは、中国の国力上昇・日本の国力低下の中で日中双方の国益とナショナリズムの対立が次第に露わになって来たためであろう。
 その意味で、2010年という年は日中関係において画期的な年であったと思われる。
① 中国のGDPが日本のGDPを凌駕し、米国に次いで世界第2位の地位に上昇し、なお高度成長が持続する勢いである。その一方で、日本の国力は長期停滞し、世界的地位が低下し続けると大方が予測している。東アジアはパックス・チャイメリカの時代に突入したと見られる。
② 尖閣列島沖中国漁船事件によって伏在していた日中間の領土的問題が露呈し、衝突現場の画像流出劇によって対中ナショナリズムが噴出した。

 以上のように考えると、さきに(4)で想定した三つのパターンのうち、最も可能性の高いのは、③「中国嫌い」80%の線から多少上下するものの、「中国嫌い」圧倒的という国民的感情は変わらない、ではないのか。日本の対中関係は2010年に決定的転換を遂げて、新しい時代に入ったことを肝に銘じるべきであろう。

 
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