第68号 2013.12.18発行 by 中村 公省
    中国撤退企業一覧2013年 <目次>へ戻る
(1) 中国進出企業一覧 上場会社篇 2013-2014年版の刊行
 21世紀中国総研と蒼蒼社の事業である『中国進出企業一覧 上場会社篇 2013-2014年版』を、この12月中旬、ようやく出版することができた。この本の創刊は1986年であるから、数えて27年目になる。
 2013-2014年版において調査対象とした日本企業は、日本の証券取引所で株式が売買されている会社である。21 世紀中国総研の調べによれば、全上場会社3586 社のうち、中国(香港、マカオを含む)に現地法人のほかに、日本本社直属の駐在員事務所、支店、営業所などの在中ビジネス拠点を持っている会社が1713 社ある。中国への進出率は47.8%といえよう(1713 ÷ 3586 ×100 で算出)。うち東証一部上場会社1752社に限れば、在中ビジネス拠点を持っている会社が1143 社で、中国への進出率は65.2%にのぼり、有力企業ほど中国へ進出する確率が高い趨勢が知れる。2013-2014年版は、これらの日本本社及びその子会社の在中現地法人7313 社の基本データを収録した。また、現地法人のほかに、駐在員事務所、支店、営業所など日本本社直属の在中ビジネス拠点が470 あり、これらも含め7783 拠点を収録している。

(2) 中国撤退企業一覧 2010~2013年の作成
(別表参照 クリックするとPDFが開きます)

 2年毎の『中国進出企業一覧』の更新は、新規進出があることによって迫られるわけであるが、その裏には新規撤退企業が存在する。新規進出は期待をこめて意気揚々と喧伝されるから補足しやすい。しかし、撤退は意気消沈、当事者の情報リリースがトーンダウンして、第三者には詳細がなかなかつかみづらい。それでも、漏れ来た情報を渉猟して「中国撤退企業一覧」を作る必要を感じてきたが、今回の2013-2014年版ではようやく、「中国撤退企業一覧 2010~2013年」という一覧表を作ることが出来た。その数は全撤退企業の一部にすぎないが、各年以下のごとくである。
 2010年 12社
 2011年 23社
 2012年 56社
 2013年 76社
 この全表は『中国進出企業一覧』82~90ページをご覧いただくとして、ここには2013年の一部情報だけを掲げる。2013年は10月末までであるが、2010~2012年に比較して数が多い。異常に多いとも言える。これは何故か? 以下、主要なトレンドを考えてみたい。

(3)尖閣諸島領有問題による日中関係険悪化の影響
 2013年に異常に撤退が多い理由として第一に考えられるのは、2012年10月にヒートした尖閣諸島領有問題によって政治における日中関係険悪化が経済にまで及んで、中国における企業経営が困難に立ち至ったというストーリーである。反日行動の中で狙い撃ちされた日本車製造関連企業で、この理由に該当すると思われるのは、三菱樹脂系で自動車部品成形樹脂加工大手・児玉化学工業である。同社の株主への説明には以下のようにある。
 「普拉那(天津)複合製品有限公司におきましては、平成25 年度以降の中国外資企業としての事業性が不透明であり、このままでは良好な事業性が維持できないと判断し、顧客への供給責任および従業員の雇用継続を含め事業を継承することのできる現地企業を模索してまいりました。今般、顧客から紹介のあった天津恒瑞祥商貿有限公司及び張俊華氏と事業の継承につき合意した為、当該子会社の当社保有株式全ての譲渡について決定いたしました。」(2013.01.24適時開示情報)
 カメラ関連機器製造のトプコンは、北京で進めていた光学機器工場の増強計画を12年末に中止を決定した。新興国の測量や眼科機器の需要増に対応して生産能力を約1.5倍に拡大する計画であったが、日中関係悪化で中国生産比率を高めるのは得策ではないと判断したという(日刊工業新聞2013.2.7)。
 撤退しないまでも、再編成を迫られている企業は多い。例えば、ショーワは、日本車不買運動後の需要変化により短期的に大幅な需要の増加は見込めないとの見極め、広州や武漢など4工場で四輪車用ショックアブソーバ(SA)やパワーステアリングなどを生産していたのを工場ごとに集約することにした(日刊工業新聞2013.3.27)。

(4)中国の経営環境の劣化
 撤退増加の第二の理由として挙げられるのは、中国の企業経営環境が東アジア諸国の環境と比較して劣化した、あるいは劣化するであろうことが実感され、中国から他国に製造拠点を移す動きが一般化したことである。賃金の高騰、成長率の鈍化、経営リスクの顕在化、為替変動など経営悪化要因は枚挙にいとまがない。
 住友化学系の田岡化学は中国事業を休止した。「主力製品の市場状況が急激に変動したことや、主要原料の調達価格が急激に高騰したこと等から、事業採算性が大幅に悪化。事業を継続することは困難であると判断した。」(2012.12.26適時開示情報)
 ペガサスミシン製造は2013年度中に、中国からベトナムへ工業用ミシン4機種の生産を移管するという。中国での人件費高騰や人民元高を背景に、生産比率の高い中国への依存度を下げ、14年度をめどにトータルの製造原価を数%低減を目指す。(日刊工業2013.6.07)
 また、ワコールホールディングスは、中国事業は赤字が続き、6月に中国への投資を抑制して東南アジアへ重点を移す考えを示した(日刊工業13.6.25)。具体的には、これまで中国女性向け専用のブラジャーの研究開発を手 掛けてきた華歌爾(上海)研発中心を清算した。

(5)日本家電メーカーの没落・再編成の余波
 第三に、2013年の中国撤退企業の中には、日本家電メーカーの没落・再編成の余波が顕著に見られた。三洋電機やパナソニック電工(松下電工)は、パナソニックへの吸収・合併によって、その子会社である中国現地法人の再編成を迫られ、多くの企業が売却、解体の憂き目にあった。松下電工の中国本社である松下電工(中国)有限公司がなくなったが、往時、その傘下には17社もの子会社が存在していた。また、三洋電機の中国統括会社傘下の40もの各種電気機器会社は、ただいま整理中で、パナソニック本社やパナソニック中国本社にアンケートで問い合わせても、答えが返ってこない状態である。そもそもパナソニック自身が青息吐息で、かつての花形家電・プラズマテレビ製造の上海松下等離子顕示器の工場清算が確定的である。
 その他にも、半導体製品製造の首鋼日電電子有限公司(ルネサスエレクトロニクス出資)は、合弁契約期間満了に伴い首鋼総公司に出資持分の全てを譲渡した。また日立製作所も、電子レンジの製造・販売の福建日立家技有限公司、福建日立電視機有限公司や、電子部品加工装置、FA関連製品等の販売及びサービスの日立維亜機械(上海)有限公司を清算した。
 別表には挙げていないが、シャープの南京テレビ工場の売却交渉問題も話題の種で、売却するの、しないのとい報道が錯綜している。

(6)小売業の中国マーケット進出の挫折
 第四には、威勢よく中国市場に切り込んだ小売業部門の勝ち組・負け組が明確になってきたことである。当面の勝ち組は、ユニクロや無印良品、ラオックス、ファミリーマートなどで、逆に負け組の典型はヤマダ電機である。
 ヤマダ電機は、大店舗を2010年瀋陽、2011年天津、2012年南京と立て続けに開店し、2012年中に4号店を上海に開き、3年で5店、1000億円の売上げをあげることを戦略目標にしていた。ところが、尖閣領有権問題の発生で上海進出が頓挫。「政府間の対立が経済活動に与える影響を見極める必要がある)という日和見判断で、戦略を転換し、中国撤退に転じた。2013年5月末に南京店を閉鎖すると発表。ついで、天津店を6月30日で閉鎖し、中国で残る店舗は瀋陽店のみとなってしまった。
 ほかに負け組を挙げれば、イトーヨーカ堂の合弁スーパーストア事業である北京王府井洋華堂商業が再編成で北京の2店舗を閉鎖した。また三越伊勢丹ホールディングスも瀋陽で展開した百貨店「瀋陽伊勢丹」を閉店、5年での撤退となった。
 三菱商事が中国最大の小売業グループである聯華集団の聯華超市股份有限公司の持ち株を香港市場ですべて売却してしまったことも、大きな事件であった。 

このページの上へ <目次>へ戻る