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     第5号 2004.9.6発行 by 藤野 彰
    廉政承諾 <目次>へ戻る
 清廉な政治を行うことを請け合う、つまり「清廉政治公約」という意味である。複数政党による民主選挙が存在しない中国では、政治家が何かを公約するという行為自体がもの珍しいが、この夏、全国各省(直轄市、自治区)の党指導部が相次いで「廉政承諾」を公表した。高級幹部の汚職続発に業を煮やした党中央が全国に指示を発した結果と思われるが、表向き厳粛さを装った「廉政承諾」の中身は、ある意味で滑稽そのものである。
 例えば、江蘇省党常務委が7月5日付で公表した「廉政承諾」には次の四つの公約が掲げられている(『新華日報』7月6日付)。
  
@猟官運動を断固拒否する
常務委メンバーに対して猟官運動を行う者に対しては、それを断固拒否するだけでなく、厳しく批判し、教育してやらなければならない。
A現金や物品の受け取りを断固拒否する
常務委メンバーに対して現金、有価証券、貴重品などを贈ろうとする者に対してはすべてそれを拒否し、厳しく批判しなければならない。
B親族とスタッフを厳しく管理する
省党委指導者の家族、親戚、友人、スタッフがその名義を借りて私事を処理しようとしたり、私利を謀ろうとした場合、関係部門はすべて一様にそれを拒否し、厳しく批判しなければならない。
C率先して規律・法律を守る
厳格に憲法、法律、党規律を執行し、自らすすんで監督を受け、決して越権行為をしてはならず、権力を乱用してもいけない。

 中共は様々な規則を作ったり、おふれを出したりするのが大好きだが、裏返せば、それは往々にして、現実の状況が「本来あるべき姿」と大きくかけ離れ、極めて問題が多いことを説明している。こうした「廉政承諾」も、いかに多くの指導幹部が日常的に不正・腐敗にまみれているかを当局者自らが認める宣言文のようなものだ。内容は為政者として当然守るべき基本的ルールばかりで、国民を愚弄するちゃちな政治パフォーマンスと言っていい。
 問題は「公約が守られることをどう保証するのか」「公約を守らなかった場合、どう責任を取るのか」についてまったく表明していないことだ。江蘇省の「廉政承諾」は最後に「全省の各級党組織、幹部、大衆および社会の厳格な監督をお願いする」と結んでいるが、力のない下級幹部や大衆がどうやって実権を握る省のお偉方たちを「監督」できるというのだろうか。胡錦濤総書記じきじきの指示だとすれば、中共の旧弊と言うべき形式主義の極致である。

 もっとも、国民の方はそんなことはとうに見抜いている。中国青年報社会調査中心が実施した「廉政承諾」世論調査によると、77%が「何の役にも立たない。うわべだけの言葉に過ぎない」と酷評し、「いいことだ」と評価した声はわずか2%に過ぎなかった(『中国青年報』8月23日付)。
 北京市高級人民法院がこのほど出した「六か条禁令」なるものは、「廉政承諾」以上に驚くべき内容だ。そこには@裁判官は裁判の当事者およびその弁護人から酒食の接待を受けたり、金銭などをもらってはならないA裁判官は裁判の当事者および弁護人に合議法廷の評議内容などを漏らしてはならない――などの御法度がうたわれている(『人民日報』8月20日付)。

 自分に有利な判決を出してもらおうと、裁判官を酒食やカネで籠絡するとは、いかにも中国人的な発想であるが、そうした誘惑にやすやすとのってしまう「法の番人」がけっこういるということだろう。もし日本の裁判所がこんな禁令を出したら、新聞の一面トップ級のビックリニュースになるはずだが、中国では裁判所当局が規律強化に努力していることの証しとされるのだから、何かが狂っている。

http://news.sohu.com/ より
 
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