中国の論調・翻訳紹介    
     第02号 2004.6.1発行    
    筆頭責任者を監督する利器はわが手にあり

by 楊 暁光(浙江省委規律検査委員会副書記)・村田忠禧 訳


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  国内外の世論が「時代を画する新規則」と称賛する「中国共産党党内監督条例(試行)」は2003年の最後の日に中共中央から正式に印刷配布され、2004年2月17日に新華社はその全文を公開した。この6600字余りの「条例」は、中国共産党の党創立からの80年余り、執政党になってから50年余りの歴史において、初の全面的、系統的な自己を制約し発展させる条例である。それは腐敗反対・清廉提唱と党建設における党内管理の理論と実践の重要な発展の成果であり、党内における腐敗防止の利器である。

 重点は筆頭責任者にある

 「条例」は「党内監督の重点対象は党の各級指導機関と指導幹部、とりわけ各級指導グループの主要責任者である」と規定している。このような規定は監督のキーポイントを捉えており、監督の最も大切な部分をしっかり掴み、党の建設の実際を反映し、党内監督の法則に合致し、監督の模範を示し導いていく役割を発揮するうえで有利である。
 わが党はすでに50年以上にわたって政権を担当しており、決定や管理の権限を大量に持っているだけでなく、人事、財政、物資といった資源の調整と支配の権限をも大量に持っている。党内監督とは実質的には権力を監督することであり、その根本目的は権力の正しい行使を保証することにある。わが党の隊列は膨大で、広範に分布していることは、党内監督の任務の非常な大変さを決定づけており、監督対象の重点を明確にすることはとても必要である。指導グループにおける主要責任者はグループのなかの中核的な地位にあり、方針の決定とその執行においていずれもキーポイントとなる役割をはたし、全面的な責任を負っている。指導幹部のレベルが高くなればなるほど、その職務は高くなり、その言動の輻射面はますます広がり、影響力もますます大きくなる。彼らの誤った言論や腐敗行為は、往々にしてその地方や機関によからぬ気風を助長蔓延させる要因となっており、一部社会の醜悪現象への「触媒」作用をはたすことすらある。各級の筆頭責任者がこのような特殊な地位と影響を持っているということは、彼らを監督の重点対象中の重点とすべきことを求めている。
 実際に、党内に存在する各種の問題のうち、筆頭責任者の問題は主要であって、主導的な役割をはたしている。全国で審査処罰された案件を見ても、上は成克傑〔元全国人民代表大会常務副委員長〕、劉方仁〔元貴州省委書記〕、程維高〔元河北省委書記〕、田鳳山〔元黒龍江省省長、国土資源部部長〕、李嘉廷〔元雲南省委副書記、省長〕から、下は末端の部門や機関における指導幹部にいたるまで、筆頭責任者の占める割合はかなりのものがある。浙江省でここ数年に審査処罰した案件を見てもそうである。2001年以来、浙江省では35名の地庁級幹部が処分を受けたが、そのうちの筆頭責任者は18人で、51.4%を占めている。県処級幹部では530名が処分を受けたが、そのうちの筆頭責任者は202人で、38.1%を占めている。昨年、省級機関は70人を立案審査処分したが、部門や単位の筆頭責任者の28人が関わっており、案件に関わった人数の40%を占めている。
 われわれの現在の制度配置から見ると、筆頭責任者に権力が集中し過ぎている。これまでの複雑な社会的、歴史的原因のため、彼らにたいする監督はむしろ一番手薄で、それは主として監督が十分に行なわれない、監督の手が及ばないという面に現れている。いわゆる監督が十分に行なわれない、ということは、主として発見が不十分、規制が不十分、懲罰が不十分ということであり、監督の手が及ばない、ということは、主として事前からの監督が欠落しており、往々にして深刻な規律違反問題が発覚してからようやく調査処分をするということである。
 目下、党内監督の際立った問題は、下からの上にたいする監督が本当に展開しにくいことである。各級指導グループの主要責任者にたいしては、組織面で配置を重んじ、管理を軽んじ、監督を疎かにし、グループの他のメンバーは情にほだされ、監督したがらないし、下級と大衆は事情を知るのが難しいから、監督しようにも手立てがないという現象があるが、これは決して個別的なものではない。指導機関の立場にない党組織や指導職務を担当したことのない党員の一部には、封建的等級観念の束縛を受けていて、自分が上級や指導の監督を受け入れることを絶対不変の真理と思っている者もいる。たとえ上級や指導者とは異なる意見を出すにしても、重大な点は避け、枝葉末節なことばかり取り上げ、適当に誤魔化して、矛盾の実質にまで触れたがらない。「条例」は党内監督の重点対象は各級指導機関と指導幹部であることを明確に規定しており、これは彼らの懸念を打ち消すのを助け、大胆に、責任をもって指導機関と指導幹部を監督するのに役立つ。
 「条例」のなかで規定している集団指導と分担責任、重要情況の通達と報告、職務報告と清廉報告、民主生活会、陳情処理、巡視、談話と戒告勉励、世論監督、質問と回答要求質問、罷免あるいは更迭要求および処理等の制度は、全面的でもあり、また具体的でもある。10項目の監督制度は制度建設の面で筆頭責任者にたいする監督を強化することに役立っている。

 突破は民主にある

 党内民主を発展させることによって党内監督を強化し、民主の力によって党員の指導幹部、とりわけ筆頭責任者への監督を強化する、ということが「条例」の最も突出した特徴であり、非常に重大な現実的意義を有している点である。
 党内民主は党の生命であり、党内監督の基礎でもあり、党内民主を発展させる基盤の上に党内監督を強化してこそ、生命力を持ち、健全で、有効なものとなる、ということをわれわれは知っている。「条例」が規定している6つの監督主体と10項の監督制度というこのように大きな監督体系は、党内民主を発展させようとする要求を十分に体現しており、これまでのいくつかの関連する規定や制度に比べ、「条例」は党内民主を発展させるという面で、その深さ、広さいずれにおいても重大な突破を勝ち取っている。
 監督の対象において、中央政治局への監督の問題も提起されている。「条例」は次のように規定している。中央政治局会議の内容は、必要にもとづき適切な方式で、一定の範囲内で通達するか、もしくは全党に向け通達する。中央政治局は中央委員会総会に活動報告を行なう。中央委員の中央政治局委員、常務委員にたいする意見は、実名を明記して書面形式もしくはその他の形式で、中央政治局常務委員会あるいは中央規律検査委員会常務委員会に反映する。これらはいずれも中央政治局に対する監督の制度的配置であり、一大壮挙である。党の十六期三中総における第一の議題は、胡錦涛同志が中共中央政治局を代表して中央委員会に活動報告をしたことであったが、これは全党、全国に強烈で積極的な反響を引き起こした。
 とりわけ提起すべきことは、「条例」は初めて党内法規という形式で党の各級規律検査委員会が党内監督の専門機関であることを明確にし、規律検査機構にいっそう充分で明確な監督権力を付与したことである。これは非常に大きな進歩である。
 監督の制度において、「条例」には大きな突破があり、それは民主の力を用いて筆頭責任者への監督を強化したことである。長年来、われわれは民主集中制の貫徹を一貫して求めてきたが、系統的に完備した付帯的な措置による保障がなかったため、一部のところでは、民主集中制は往々にして本来の姿を失い、「常務委員は民主で、書記が集中する」とか、「お前が民主で、俺が集中」といったものに変質してしまい、家父長制、ツルの一声という現象が止まない。今回の「条例」は職務報告と清廉報告、世論監督、質問と回答要求質問、罷免あるいは更迭要求および処理等の制度を規定しており、いずれもそこには民主的要求が貫かれている。たとえば「党の地方各級委員会委員は、上級の党組織に所在する委員会と同級規律検査委員会のなかの不適任な委員、常務委員の罷免もしくは更迭の要求を提出する権利を有する」と規定していることは、各級党委員会委員の民主的権利を充分に体現している。
 筆頭責任者にたいする監督の問題では、もう一つ大きな突破があり、それは巡視制度を樹立したことである。これまで人々は筆頭責任者にたいする監督が効かない現象について、次のような言葉でその内実を明らかにしていた。つまり「見えるものには口出しできない、口出しできることは見えない」。山東省泰安市の元市委書記胡学建〔汚職収賄事件で一九九五年に逮捕される〕はかつて「役職がわれわれのレベルにまでなると、もはや誰も口出ししなくなる」と言った。今回の「条例」では巡視制度を樹立することを提起しているが、それは主として筆頭責任者にたいする監督の欠如とコントロール不能の問題を解決しようとするものである。伝えられるところによると、十六回党大会報告と中央の精神にもとづき、中央規律検査委員会、中央組織部巡視組と巡視活動事務室は、専門の巡視員を配置し、巡視活動の能力を大いに強化し、巡視活動を制度化、規範化、経常化する方向で大きな歩みを開始したとのことである。

 鍵は実行にある

 「条例」の発布は全党が久しく待ち望んだものである。1990年にこの条例の制定を正式に提起して以来、下準備、論証、調査、起草から最終的に修正して完成させるまで、十三年の歳月が経過した。まさに「十三年かけて剣を磨き上げた」ということができる。現在のキーポイントはどのようにしてこれを貫徹実行させるかにある。
 「条例」は党中央の名義で発布したもので、概括性の強い党内の基礎的法規である。まさにそうであるがために、細かいところまで規定することができていない面も存在する。「条例」を具体化させるためには、関連する付帯制度や解釈の登場を待たねばならないし、それらの規定をよりいっそう緻密化させる必要がある。たとえば「条例」では党の各級指導グループが重要事項を決定する際には、採決を行なうべきであると提起している。たったこれだけの言葉ではあるが、これは民主集中制のキーポイントになる手続きであり、このためこれに付帯する採決制度を樹立し、採決のレベル、範囲、手順、形式を明確に規定し、どのようなものは採決すべきであり、どれが必要としないか、どのようなものは無記名で採決し、どのようなものは無記名採決を必要としないかを明らかにしなければならない。
 たとえば浙江省台州市椒江区では1998年から試行し、昨年年初からは台州市全体で実施されるている重大決定、重要事項における委員会構成員全員による無記名票決制は、これまですでに累計で区管轄の幹部のべ3100余人の任免を全体委員会による票決で決定しており、そのうちの86人は保留に、5人については規定する票数に達しなかったために否決されている。こうして採決という手順は現場に根付きつつある。
 職務報告と清廉報告が中央の文件において規定されたのは今回が初めてである。「条例」では職務報告と清廉報告の対象、範囲、時期についてすでに規定を出しているが、その方法の内容、取扱手順、監督方法などについてはまだ触れていない。このため、どのようなことを職務報告すべきか、清廉報告ではどういう面を述べるのかといったことは、さらに細則を定めてよりいっそう明確にし、どのような方式を取り、どのようなルートで社会に公開し、大衆と世論の監督を受け入れるべきかを明確に規定し、指導幹部が職務報告、清廉報告をする際にもどのようなことが「必須回答題」で、どういうことは「選択題」としてよいかをも明確に規定しておく必要がある。わたしの考えでは、指導幹部の家庭住居情況、配偶者と子女の勤務配置とその変動情況、家庭構成員の収入情況、家庭の重要財産(銀行の預貯金額を含む)情況、家庭構成員の冠婚葬祭の実施情況、および指導幹部本人と親族の出国出境あるいは国外境外における定住情況といったことはみな「必須回答題」とすべきと思う。2001年から、台州市全体の18名の県(市、区)委書記、県(市、区)長と100余名の市級部門の党と政府の筆頭責任者はいずれも規定にもとづいて、党風廉政建設責任制と廉潔自律情況の報告を実施し、しかもそれをメディアに公開するようになっている。こうして職務報告と清廉報告の制度をよりいっそう細目化させている。
 さらに巡視制度のようなものは、相対的に固定したものがいいのか、それとも交替して巡回するのがよいのか、模索する必要があるし、巡視組が本当に問題の本質を見抜き、問題の所在を聞き分けることができるようにさせるためには、組織や活動方法の面においてよりいっそうの細目化が必要である。

 原動力は創造にある

 「条例」には多くの新鮮な思想、新鮮な経験、新鮮なやり方が含まれており、たとえば「条例」のなかの10項目の制度のうち、少なからぬものはここ数年来の反腐敗活動において成熟してきたいくつかの経験を法規制度にまで昇華させたといえるものがあり、それは職務報告と清廉報告、巡視などであり、またあるものは大胆に新たに創出したもの、たとえば談話と戒告勉励、質問と回答要求質問、罷免あるいは更迭などがそうである。
 「条例」を学び、貫徹させ、実施させていく過程のなかで、われわれはこの「条例」ができたのだからもうこれで安心、などと思ってはいけない。社会主義市場経済体制はまだ不断に完備したものにさせていく段階にあり、これに呼応する執政党の監督制度体系も一挙に実現するものではなく、不断に創造して行くことが必要である。
 「条例」は「党の各級代表大会の代表は、代表大会閉幕期間にあっては、党員の監督責任を履行することと監督する権利を享有する以外に、関係する規定にもとづいてそれが選出した党の委員会、規律検査委員会およびその成員にたいして監督を行い、所在する選挙単位の意見と建議を反映する」と規定している。これは党の代表により多くの権力を賦与したたとであり、大きな進歩である。ただし党代表の監督の役割をどのようによく発揮させるかはよりいっそうの探索をする必要がある。
 どのように筆頭責任者を監督するかという点ではさらいくつかの具体的な規定を創出することができる。昨年、浙江省台州市とその他の地方では、市と県の級の部門において、筆頭責任者はその単位の財務の審査批准と基本建設プロジェクトには直接はタッチしないという制度を決定した。この制度は大したことではないように見えるが、実際には効き目がある。これらの地方ではこの制度が実施されたことにより、「法人が委託し、権限を授けて署名し、級を分けて審査決定し、予算をコントロールし、定期的に監督し、速やかに公開する」という財務管理制度が作られた。このやり方は第一に筆頭責任者の権力を分解し、第二にグループ内の監督関係を調整し、筆頭責任者の監督職責を強化し、第三に筆頭責任者が精力を集中して大事を構想し、検討するのに役立つことである。これらの制度の創造はよりいっそう「条例」の中身を豊富なものにしていくであろう。

『半月談』内部版2004年第3期 (2004年3月11日)  ――特集 誰が筆頭責任者を監督するか――


   
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