中国を読み解く本・毀誉褒貶
[1] 2004.6.4
  
中国経済・産業の回顧と展望《2003/2004》

在中国日本商工会議所調査委員会編

A5判264ページ  2004年3月刊行
 「幻の原酒」にならって言えば、本書は「幻の中国経済書」である。ナカミが濃く、評判が高いが、入手が難しい。それもそのはず、在中国日本商工会議所の会員限定の「内部刊行」だからである。1998年度から毎年刊行されており、今年で6回目になる。最新版は無理だが、前年度版、前々年度版はインターネットで全文リリースされているから、ともかく現物をごろうじろ(http://www.cjcci.biz/public_html/index.html)。
 ナカミは、中国の経済・産業に関する前年度のパフォーマンスを回顧・検証して、果たして今年度はどうなるかの展望を試みようという趣旨で編集されている。構成は四部から成る。第T部 中国経済の回顧と展望 第U部 個別産業の動向 第V部 2003年の経済トピックス 第W部 経済協力の現状と展望。
 この中で「売り」は第U部で、全264ページのうち約200ページを占める。中分類でエネルギー、農業、化学、窯業、輸送機械、電気・電子、金属、運輸、流通、観光・レジャー、建設・住宅、情報通信、金融、マスコミ・広告、その他サービスの15産業をさらに小分類して個別38業種の動向がレポートされている。レポーターは各業種の代表的企業の北京駐在員である。例えば、化学の中で化学工業は旭化成、医薬品は三菱ウエルファーマー、化粧品は資生堂の各々北京代表であり、こういう有名企業の中国通が筆を執って自らがかかわるビジネスの業界事情を回顧・展望しているのである。アクティブで頼りがいのある専門情報の宝庫である。
 在中国日本商工会議所は、WTO加盟公約の達成状況を追跡する『WTO加盟後の中国経済』を本書と並行して連年刊行している。こちらのほうはウエブサイトで公開しているから誰でも見られる。この『WTO加盟後の中国経済』と『中国経済・産業の回顧と展望』を合わせ読むと、業界事情はより鮮明に浮かび上がる。中国の産業業界事情に通じようと思ったら、四方八方ツテを手繰って、なんとしてでも本書を入手すべきであろう。
 と、ここまで書いて、在中国日本商工会議所に手前勝手な要望をしたくなった。
 中国経済・産業の回顧と展望《2003/2004》のほうも出来るだけ早く、ウエブサイトで公開していただけないものか。
 正確な中国の産業業界情報を求める声は、いまや日本の全国津々浦、産業企業界の隅々に満ち満ちているのである。在中国日本商工会議所の面々は中国情報入手において自らが特権的な管制高地にいることを自覚されたい。
 ウエブサイトで無料公開が無理なら有料にしてもいいし、単行本として公刊してもいいではないか。
 情報は秘匿すれば腐る。「秘伝」とばかり、仲間内の情報を狭いサークルの中だけで流通させていると、情報が磨かれることが無く生気を失う。敢えて言うが、眼光紙背に徹して見るところ、本書に書かれている情報の、そのまた情報源を特定することはそんなに困難ではなく、中国当局の発表データの引き写しという甘えが、そこかしこに散見される。情報は公開されてこそ発信者を鍛え、よりよいリターンも期待し得るという情報収集の鉄則を忘れるべきではない。
本書が「幻」でなくなることを切に願うものである。
(中村公省/21世紀中国総研事務局長)