中国を読み解く本・毀誉褒貶
[6] 2004.11.2
(中村公省/21世紀中国総研事務局長)
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モラルハザードのUFJ総合研究所

五論 中国市場での販売課題と市場戦略

日本機械輸出組合発行

A5判189ページ  2004年4月刊行

 神戸大学大学院・黄磷先生の著作を盗用した『中国市場での販売課題と市場戦略』に関するUFJ総合研究所との係争は司法の専門家同士によって粛然と進行している。すなわち、黄磷先生が代理人とした有古特許事務所の角田嘉宏弁理士と、事実上の執筆者であるUFJ総合研究所が依頼した弁護士との間で談判が行われており、遠からず解決がつく見通しである。
 黄磷先生とUFJ総合研究所との合意の線は、ほぼ以下のようなところに落ち着くであろうと、私は予想している。
    (1) 涯FJ総合研究所元田充隆代表取締役が黄磷先生に謝罪文を呈する。
    (2) 謝罪文には涯FJ総合研究所が依頼し、当該箇所を実際に執筆した「外部執筆者」の謝罪文を添付する。
    (3) 黄磷先生の代理人費用は涯FJ総合研究所が全額負担する。
    (4) 日本機械輸出組合は、黄磷先生に『中国市場での販売課題と市場戦略』の盗作問題についての顛末書を提出する。

 こういう結果がもたらされるのは、日本著作権法の趣旨からして、理の当然である。その理については、これまで4回にわたって縷々、私の解釈を述べてきた。これは典型的な盗作事件であり、これが盗作でないとしたら、無法者がはびこることになり、この世は闇である。
 コトここに至ったのは、代理人と代理人、すなわち法律のプロである弁理士と弁護士とに談判していただいたおかげである。なぜならプロは日本著作権法を逸脱することを絶対にしないからである。
 しかしながら、法律のプロに全面的に依存するというのは、厄介な問題を秘めていることを見逃すわけには行かない。弁護士に了解されたことが、その依頼者(UFJ総合研究所)に理解されているとは限らないのである。弁護士に説得されてしぶしぶ妥協する。法律の条文を自らの頭で具体的に理解するのではなく、結果(謝罪と金銭)だけをしかたなく受け入れる。そういう場合が少なくない。これは私が岩波書店出版部長とやりあった際に痛烈に体験したところである。代理人の弁護士に促されて非は認めながら、その非を法に基づいて了解するのではなく、従前の己の手前勝手な経験則(岩波書店出版部長ともなると倣岸不遜で己が法律のつもりでいる)で再解釈する。いったん弁護士のリーガルな枷をはなれるやいなや、元の木阿弥で、手前勝手なことを、未練がましく言い立てる。この経験にかんがみて私は、UFJ総合研究所の知性とモラルに強い疑いを抱いている。
 そこで、UFJ総合研究所の本件についての担当重役である宮崎衛夫常務取締役国際本部長が、私宛に差し出した最終的な釈明書(2004年8月16日付)を以下に引用して、彼の知性とモラルを点検してみることにしよう。(資料1)
資料1
 
 引用に際しては、「1.問題の経緯」と「2.執筆事情」は(略)とするが、「2.執筆事情」には、UFJ総合研究所が依頼した外部の@執筆者(大学院生)、A校正者(大学講師)の氏名、住所、電話番号が明かされている。
 宮崎釈明書の要である「3. UFJ総研の責任と対応」は、いたずらな文飾をはがすと、3点に集約されるであろう。

(1) UFJ総合研究所としては、執筆者による盗用があったと認める。→すなわち、UFJ総合研究所が盗用したことは認めない。
(2) 管理責任という点においてUFJ総合研究所にも過失があったので、UFJ総合研究所は執筆者を告発しない。→「管理責任」? それはUFJ総合研究所の社内事情である。UFJ総合研究所は日本機械輸出組合から『中国市場での販売課題と市場戦略』の調査執筆を受託して、UFJ総合研究所の名前で署名したのである。その法的責任こそが問題になっていることがお分かりでないらしい。UFJ総合研究所に責任が無く、外部下請執筆者に全責任があると言い張るなら、UFJ総合研究所が外部下請執筆者を告発すべきである。
(3) 執筆者には謝罪文を提出させる。→問われているのは涯FJ総合研究所の法的責任者である元田充隆代表取締役の犯罪と謝罪なのである。
 
 あきれた言い分で、これほどの無責任を私は知らない。
 宮崎衛夫常務取締役国際本部長は、UFJ総合研究所の著作権についての最高担当者らしいが、日本著作権法を読み、学習し、理解しようという意欲を持ち合わせていない。すなわち、無知である。
 「管理責任」を云々しているが、これはUFJ総合研究所内部の話である。UFJ総合研究所という「大会社」の重役まで上り詰めた偉いさんにとっては、会社の内と外との区別が峻別できなくなるものらしい。宮崎衛夫常務取締役国際本部長にとっては、著作権法上の問題より社内の「管理責任」のほうが重大事のようである。すなわち、モラルハザードの極みである。

 私は、この8月16日付宮崎釈明書に接して、「悪党に善を説き、破綻銀行に追い銭をするのはむなしい」と痛感した(三論参照)。しかし、「道理が廃れば、この世は闇だ」と思い直して、「司法的判断にゆだねるしかない。餅は餅やに任せよう」(四論参照)と決断した。
 そして、いまや、状況は一巡して、改めて無責任男の無知とモラルハザードに直面している。宮崎釈明書の最後には、こうある。
 「弊社は、今後同様の事故が再発せぬように最善を尽くす所存でございます。」
 しらじらしいこと限りない。舌べろを出して頭を下げるようなマネは許されない。宮崎衛夫常務取締役国際本部長。いま肝心なことは、貴殿のアタマの中を洗いなおし、貴方のココロを入れ替えることですよ。
 この際、予言しておきましょう。涯FJ総合研究所は今後、必ず今回と同様な著作権侵害を再発させるに違いない、と。
また、日本機械輸出組合はじめ涯FJ総合研究所の客筋の皆さんにも警戒警報を発しておきましょう。涯FJ総合研究所の調査報告書は著作権上リスキーである、と。

 さて、この夏、UFJ銀行と東京三菱銀行が統合するというニュースに接して、黄磷先生と私は誓い合ったものである。UFJ銀行が無くなる、子会社のUFJ総合研究所も解体・消滅する、よし、UFJ総合研究所が無くなるまでがんばろうではないか、と。会社が無くなれば、法的責任もなくなるが、その前に謝罪させずにはおくものか、という狙いであったが、どうやら間に合いそうな気配である。
 宮崎衛夫常務取締役国際本部長。仮に法的問題は決着しても、貴方のアタマとココロの倫理的問題はまだ解決しておりません。法律には時効というものがあるが、倫理には時効が無いのです。

  

    
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