中国を読み解く本・毀誉褒貶
[7] 2004.12.7
(中村公省/21世紀中国総研事務局長)
<目次>へ
 
鈴木貴元UFJ総研研究員、中国経済学会発表の怪

六論 中国市場での販売課題と市場戦略

日本機械輸出組合発行

A5判189ページ  2004年4月刊行

 神戸大学大学院・黄磷教授の著作『WTO加盟後の中国市場』(2002年、蒼蒼社刊)を、第2章第4節に盗用した、UFJ総合研究所受託執筆・日本機械輸出組発行の『中国市場での販売課題と市場戦略』に関する法的係争は決着をみた。
第一に、UFJ総合研究所と日本機械輸出組合は、ともに盗用の事実を認めた。
第二に、日本機械輸出組合は盗用版を回収して、新たに書き直した非盗用版と差し替え、蒼蒼社と黄磷先生に詫び状を呈した。
第三に、UFJ総合研究所は黄磷先生が代理人とした有古特許事務所の角田嘉宏弁理士と、UFJ総合研究所が依頼した弁護士との尽力の結果、UFJ総合研究所と黄磷先生の間で以下の合意に達した。
(1) 涯FJ総合研究所元田充隆代表取締役が黄磷先生に謝罪文を提出。
(2) 謝罪文には涯FJ総合研究所が依頼し、当該箇所を実際に執筆した「外部執筆者」の謝罪文を添付。
(3) 黄磷先生の代理人費用は涯FJ総合研究所が全額負担。
(4) 日本機械輸出組合は、黄磷先生に『中国市場での販売課題と市場戦略』の盗作問題についての顛末書を提出。
 法的決着に加え、前回の第五論では、UFJ総合研究所のモラルハザードも糾弾したから、これにてこの連載もオシマイ。

と、思っていたところ、そうは問屋が卸さない事情が浮上した。『太陽がいっぱい』のラストシーンのように、法的決着に至る事実確認の文書から、背後に隠れていた主役の黒い影が立ち現れ、その証拠品がズルズルと引き寄せられてきたのである。

 (1)UFJ総合研究所に勤務する匿名氏の告発状

 落語の枕のようなものとして受け取っていただきたいのだが、はじめにUFJ総合研究所の内部からの告発状を開陳したい。UFJ総合研究所と黄?先生の間で以下の合意に達した数日後の11月7日、蒼蒼社と21世紀中国総研との双方宛に送りつけられた、匿名のメールである。

 御社掲載のHP「モラルハザードのUFJ総合研究所」(11月2日)について
 中村公省様
 私は、UFJ総合研究所に勤務しております。本件のような盗作事件を引き起こした当社の体質に心を痛めております。今後の弊社と業界の信用維持のためにも、本件の首謀者が厳正に処罰されることが必要だと考え、私の知りうる範囲で情報を提供いたします。HPを読む限りでは、前代未聞の不祥事の肝心の部分が明らかになっていません。なお、私は直接、本件と関係する部門には勤務しておりませんが、以下の事実は社内では公然の秘密となっています。

 本件は、日本機械輸出組合がUFJ総合研究所国際本部に発注した案件だが、実質的には、UFJ総合研究所調査本部調査部の鈴木貴元という研究員が社内下請けの形で問題の箇所を受注した。通常は、受注した案件を社内の他の部門へ振ることは少ないが、本件では鈴木が強引に割り込んだといわれている。
ところが、鈴木は受注したテーマにつき何の経験も無い素人であり、原稿を書くことが不可能であった。締め切りの迫った鈴木は、苦し紛れか、鞘抜きの目的でインターネットのオークションで孫請けを募集し、応募してきた大学生に丸投げしたというのが実情である。鈴木は、原稿をチェックせず、自らが書いたと称して日本機械輸出組合に提出した。

 このように、本件は当初、外部委託の予定はなかったにもかかわらず、鈴木が勝手に、インターネットで丸投げするという前代未聞の手段で、事情を知らない学生を利用して書かせたものです。鈴木の行為は、御社、原著者、日本機械輸出組合に対する背信であり、業界全体の信用にかかわる悪質な詐欺であると考えます。

 鈴木は、本件に限らず、かねてから盗作の噂が絶えず、人格的にも破綻しており、社内では問題になっていました。このような研究員を放置しておいた経営陣にも当然責任はあるとおもわれます。

 以上のような事情を御社ならびに代理人はすでにご存知とはおもいますが、問題の重要性に鑑みあえて説明させていただきました。
 敬具
  【11月7日到着  無署名 原文のまま】

 これはアブナイ文書である。なぜなら、匿名で特定の個人を攻撃しているからである。卑劣な文書を引用する者は卑劣のバイキンに感染する。攻撃されている当人の名誉を著しく損ない、メンツを失った当人から手ひどい反撃をこうむる確率が高い。
 したがって、この告発状については、私はいっさい論評しない。ここで匿名氏が述べていることが事実か、それとも虚偽かについては、判断を下さず、ニュートラルの状態でいたい。以下の私の文書においても、この告発状は証拠品として採用しない。
ここでは、UFJ総合研究所の内部に、こうした憤懣やるかたない思いを抱いている社員が存在するという事実を確認するのみである。やっかみやら下げずみやら、組織人間たちの情念の確執はUFJ総合研究所の内部で処理していただきたいものである。そのあたりの「管理責任」は、宮崎衛夫常務取締役国際本部長にお任せしよう。

 (2)『中国市場での販売課題と市場戦略』は法人著作である

 『中国市場での販売課題と市場戦略』は涯FJ総合研究所が日本機械輸出組合から委託を受けて執筆した法人の著作物である。委託の事情は、「はじめに」(貴田捷雄日本機械輸出組合アジア市場・機械産業対策懇談会座長執筆)に以下のように記されている。
 「当組合『アジア市場・機械産業対策懇談会』では、機械産業のうち、家電、AV機器、情報通信機器、工作機械、建設機械、ベアリングを対象事例として、中国国内市場における流通・販売の実態と問題点、内販活動における課題と対応策、並びに流通・物流事情と外資系企業への規制・制限動向等について、涯FJ総合研究所に委託して調査を実施致しました。
 涯FJ総合研究所の署名は、たったこれだけである。しかし、『中国市場での販売課題と市場戦略』は涯FJ総合研究所の法人著作であるという事実は、涯FJ総合研究所自身も承認している。その証拠は、盗作事件の法的処置に際して、涯FJ総合研究所元田充隆代表取締役が黄磷先生に謝罪文を提出している事実に示されている。以下の立論にとって重大なことだから、同じことを裏を返して確認しておきたい。
『中国市場での販売課題と市場戦略』は絶対に個人的著作ではない。また、何人かの涯FJ総合研究所研究員の共同著作物でもない。人の名前は何処にも署名されていないのである。だから、元田充隆代表取締役が法的責任を取るしかなかったのである。

 さて、法人著作であるから、『中国市場での販売課題と市場戦略』の執筆には何人もの人間がかかわっている。事件の謎解きには、登場人物の経歴調べが避けられない。役割分担がわからないと、複雑に絡んだ筋が解きほぐせないからである。
私たち(黄先生と私)に対してこの間にコンタクトがあった涯FJ総合研究所の人間は、偉い順であげると、一番目に宮崎衛夫(常務取締役国際本部長、以下敬称略)、二番目に佐々木隆彦(企業戦略部チーフコンサルタント)、三番目に鈴木貴元(調査部研究員)、四番目に香川玲子(企業戦略部コンサルタント)である。彼らの素性をインターネット検索で引っかかったデータにより、手短かにまとめてみよう。

 宮崎衛夫は、東京外大インドネシア語科卒。インドネシア経済を専門にして、アジアに東南アジア金融の論文がある。中国については門外漢であるが、常務取締役国際本部長として、日本機械輸出組合から『中国市場での販売課題と市場戦略』の執筆を受注した部門の最高責任者である、と見なせる。

 佐々木隆彦は、宮崎の部下で国際本部部員である。UFJ総研のホームページによると国際経営開発部(大阪)コンサルタント(チーフコンサルタント)となっているが、電話で私に東京だと言っていた。その後所属が変わって、企業戦略部チーフコンサルタントが現職ではないか。1983年同志社大経済学部卒。大手産業材メーカーに勤務した後、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの大学院に留学、修士号を取得。1999年三和総研に入社し、企業戦略室勤務。2002年4月に、三和総合研究所と東海総合研究所が合併してUFJ総研所属となる。「アジア人登用の人材戦略・組織活性化の新手法」が主要論文と見なせる。海外マーケティングを手がけ、大手産業材メーカーに勤めていた経験からか、パソコン画面のLCD化についての論文もある。しかし、産業論を手がけた形跡は無く、中国について言及した論文も見当たらない。「新規事業戦略等のコンサルティングに従事」と自己紹介をしているところから察すると、中国の機械産業も、「新規事業」の内なのか。
 佐々木隆彦はわれわれに何度も、宮崎の露払いとして「お詫びに参上したい」と言ってきている(われわれは拒絶)ところから察すると、その役回りは、企業戦略部チーフコンサルタントとして、日本機械輸出組合から受注した『中国市場での販売課題と市場戦略』を執筆する管理責任者であると推測される。受注したプロジェクトは、「家電、AV機器、情報通信機器、工作機械、建設機械、ベアリングを対象事例として、中国国内市場における流通・販売の実態と問題点、内販活動における課題と対応策、並びに流通・物流事情と外資系企業への規制・制限動向等について」の調査であって、専門に特化していて幅が広く、佐々木の経歴では、一人で執筆できるシロモノではなかろう。しかし、新たなことに挑戦するのは結構なことで、その勇気がある人かもしれない。本人が中国についての素人でも、機械産業調査についての経験がなくても、部下に有能な専門家がいるなら、プロットを描き、執筆者を選定し、取材をし、編集するというコーディネートは可能であろう。国際本部長には、中国経済、中国機械産業、中国流通・物流に研究実績のあるエキスパートが存在しないことはない。

 香川玲子は、国際本部国際戦略部コンサルタントである。宮崎の部下であり、佐々木の部下である。早稲田大学卒業後、上海復旦大学留学、米国ワシントン州シアトル市NSCC国際貿易学院修了。2002年UFJ総研入所、グローバルマーケティング、国際経営、知的財産管理の分野で活躍中という。注目すべき論文がある。「中国における企業の知的財産戦略のあり方」(http://www.ufji.co.jp/search_frameset.html)。証拠は後ほど示すが、彼女は『中国市場での販売課題と市場戦略』の執筆に手を染めている。何章何節を書いたかは不明だが、『中国市場での販売課題と市場戦略』は知的所有権に少なからず言及しており、専門家として知的所有権に関わる分野を担当したことは確実である。

 さて、最後になったが、鈴木貴元は調査部(東京)研究員である。国際本部長の宮崎―佐々木―香川ラインとは部署が異なる。しかし、中国経済の専門家である。最近のUFJ総研の中国経済レポートは彼が一手に引き受けている感がある。新聞、雑誌に論考を発表し、テレビに顔を出して、八面六臂の活躍である(別途2004年鈴木貴元一覧【資料3】を参照)。単行本『得する中国 損する中国―日本が知らない中国市場の思考法』も発刊した(アスペクト、2004年9月01日刊)。略歴は以下の如し。
 「鈴木貴元[スズキタカモト]UFJ総合研究所調査部研究員。69年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、浜銀総合研究所調査部副主任研究員、日本経済研究センター経済分析部予測研究員、Institute of Southeast AsianStudies客員研究員等を経て現職。早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程修了。現在は、中国、台湾、香港のマクロ分析、短期・中期予測、産業分析等を行なっている。」
 一概に中国経済といっても、研究前線では分業化、専門化がすすんでいるが、彼の得意とする分野はマクロ経済で、経済予測である。本人は、「私はマクロ経済エコノミストとして中国経済を分析してきた。地方経済、産業、通貨、株式市場、経済格差、SARS、自由貿易協定(FTA)など、マクロエコノミストの分析領域からするとややはずれたところまで分析してきた」(同上書「はじめに」)と自己紹介している。鈴木が専門としてあげている、もうひとつの「地域・産業分析」のほうは、論文が無いことはないが、数は少ない。少なくとも中国機械産業について専門的に分析した論文を私は知らない。また、中国の流通・物流についての研究論文にもお目にかかったことがない。新著の『得する中国 損する中国―日本が知らない中国市場の思考法』は通俗的エッセイで研究の部類に入らない。
 鈴木が日本機械輸出組合から受注した『中国市場での販売課題と市場戦略』の執筆陣に加わったことは確実であるが、第何章第何節を執筆したのか、執筆せず他人に書かせたのか、編集したのか、校正したのかは、軽々に推測するわけにはいかない。確実な裏づけをもって慎重に見極めねばならない。

 (3)『中国市場での販売課題と市場戦略』への鈴木貴元研究員の関与

  1)第1章第1節「経済成長の潜在性」の執筆
 中国経済学会という学会がある(会長・南亮進城西大学経済学部客員教授(http://www2.toyo.ac.jp/~kaku/))。現代中国経済の現状分析・政策提言に止まらず、経営・歴史・統計などの幅広い分野の学究を集めている。2002年6月に東京経済大学において設立された。2003年同大学において第2回大会を開催、第3回は2004年桃山学院大学において開催された。私もこの会員になっている。同学会名簿によれば、UFJ総合研究所では鈴木貴元の名前が見えるだけで、ほかに会員になっているものはいない。
 鈴木貴元は、この学会活動に積極的である。同学会第2回全国大会(2003年6月21― 22日)では、「2015年の中国(長期経済予測)」を報告している。実はこの学会報告はUFJ総研の「調査報告」(2003年1月5日)に発表された「2015年の中国(長期経済予測)〜GDP規模は日本の9割〜」の焼き直しであり、要旨は以下のようなものである。
「  ○2015年までの中国の経済成長率は、投資・輸出主導型経済から消費主導型経済への転換を条件に、2001-05年が年平均7.4%、2006-10年が同7.2%、2011-15年が同6.7%と予測した。2015年の名目GDPは4.3兆ドル。一人当りGDPは3088ドルとなる。
○経済成長にとってリスクは、現在の投資・輸出主導型経済から消費主導型経済への転換が進まない場合、40%を超える高い投資率によって蓄積された生産力が過剰設備となり、デフレを深刻化させることである。社会保障システムの改善や労働市場の整備による就業機会の創出など、取り組むべき課題は多い。 」
   (全文はUFJ総研のホームページに公開されている。http://www.ufji.co.jp/publication/report/2002/0285.pdf)。
 
 ここで注目すべきは、この報告の図版、文章が他ならぬ日本機械輸出組合『中国市場での販売課題と市場戦略』の巻頭第1章の第1節「経済成長の潜在性」(3-19ページ)にそっくり流用されていることである。同じ論文をあっちにも、こっちにも掲載することを問題にしているわけではない。これは、『中国市場での販売課題と市場戦略』第1章第1節を鈴木貴元が執筆したことを示す動かぬ証拠である。言い換えれば、鈴木貴元は、『中国市場での販売課題と市場戦略』プロジェクトに深く参画していたのである。

  2)第2章「中国流通・物流の概要」の執筆管理

 神戸大学大学院・黄磷教授の著作『WTO加盟後の中国市場』の盗用は、『中国市場での販売課題と市場戦略』第2章第4節で行われた。第2章の構成は以下のようになっている。
  
    第2章 中国流通・物流の概要
      2-1 流通事情
      2-2 新業態小売の発展状況
      2-3 外資系小売参入の動向
      2-4 物流事情(物流発展の方向性と問題----社会主義的物流システムの崩壊と再編)

 この第2章がどのようにして書かれたかは、私への宮崎衛夫常務取締役国際本部長の2004年8月16日付書簡【資料1が一節を割いて、以下のように説明している。

 「問題の第二章は、第三章と第四章の導入的位置付けと考えています。WTO加盟下での流通事情が第三章で、業界別の流通と物流事情が第四章で、それぞれ述べられています。第四章記載の個別情報は、2003年秋に実施した現地調査を中心に収集されたものであります。
 現地で集めた一次情報の議論を行う前に、一般的に述べられている物流と流通情報を改めて紹介するのが読者への利便性を高めると考え、第二章を設置した次第です。また、第二章は外部に執筆を委託することに致しました。
 第二章は、××大学大学院生のYH氏(経営学専攻で本年3月に卒業。【住所・電話略】)が執筆致しました。第二章は、流通と物流から構成されておりますが、流通の部分は、UFJ総研の鈴木研究員が校正致しました。後から入稿した物流の部分は、○○大学講師で□□大学大学院博士課程後期のTS氏。【住所・電話略】に論理チェックと校正を依頼しました。入稿後の校正時にすべての資料と原稿を照会・確認し切れなかったため、本問題を事前に察知できていなかったことが、その後の調査で明らかとなりました。」
 
 ここには外部委託執筆者の実名、住所、電話番号が記されているが、引用に際しては、名前はイニシャル化、住所、電話番号はカットした。「外部執筆者」は幽霊ではなく、確かに実在すると信じられる。
さて、この書簡には肝心のことが隠されている。YH氏やTS氏を見つけ出し、執筆依頼し編集管理した人間は誰かである。
 「流通の部分は、UFJ総研の鈴木研究員が校正致しました」とあるから、依頼したのは鈴木貴元以外は考えられない。
また、「物流の部分はTS氏に論理チェックと校正を依頼しました」とある。密接に関連して第2章を構成している物流のUJ総研内部の責任者が鈴木貴元以外の人物であったするには無理がある。TS氏に論理チェックと校正を依頼したのは、やはり鈴木であると推測される。
 こう見て来ると、鈴木貴元は、第2章全体の執筆管理者であったに違いない。
 ここで、駄目押しの確認をしておきたい。
 宮崎衛夫常務取締役国際本部長の証言によれば、第2章「中国流通・物流の概要」全体は、UFJ総研はいっさい執筆しなかった。流通の部分、すなわち第1節、2節、3節は、UFJ総研の鈴木貴元研究員が校正しただけである。物流の部分、すなわち剽窃した第4節は、○○大学講師で□□大学大学院博士課程後期のTS氏に論理チェックと校正を依頼し、UFJ総合研究所の鈴木貴元研究員は校正すらしなかったのである。
 くどくなるがもう一度、念を押しておきたい。結局のところ、UFJ総合研究所は××大学大学院生のYH氏が書いて、□□大学大学院博士課程後期TS氏に論理チェックと校正させたものを金で買って、そのままUFJ総合研究所が執筆したものとした。そして、それを、日本機械輸出組合に転売したのである。こういう請負い仕事の手口を、業界言葉で、まる投げという。

 (4)鈴木貴元研究員は買文し、転売した法人著作を自分の物として学会報告をした

 中国経済学会第3回全国大会(2004年6月19日〜20日)では、鈴木は、意外にも専門外(あるいは新たな挑戦分野)と思われることを報告した。プログラムから引いてみよう。http://www2.toyo.ac.jp/~kaku/newpage12.htm

     「第二会場(1-304)/流通・企業
         座 長   伊藤正一(関西学院大学)
        1.題 目:中国自動車の流通チャンネルの類型
          報告者:孫飛舟(大阪商業大学)
          討論者:伊達浩憲(龍谷大学)
         (9:20〜10:00)
        2.題 目:中国における機械販売の展望と問題点
          報告者:鈴木貴元(UFJ総合研究所)
          討論者:黄磷(神戸大学)
         (10:00〜10:40)」
 ここには、「中国における機械販売の展望と問題点」について、報告者:鈴木貴元(UFJ総合研究所)と討論者:黄磷(神戸大学)が並んでいる。

 鈴木の学会報告のレジュメをすべて以下にスキャンしておこう【資料2】

     第1章 中国機械・電子機械の国内市場の概況
     第2章 中国流通・物流の概要
     第3章 内販活動に対する外資系企業への規制・制限の状況
     第4章 国内市場における流通・販売上の問題点と戦略
     第5章 日本製造業の中国市場戦略と対応策

 このレジュメの構成は、『中国市場での販売課題と市場戦略』の構成と寸分たがわない。なかみも、日本機械輸出組合『中国市場での販売課題と市場戦略』の図表をそのまま切り貼りしたものである。
 表題は、「中国における機械販売の展望と問題点」と変えてある。
 そして、レジュメの第1ページ目・表紙には奇妙な細工が施してある。
 
       2004年度 中国経済学会全国大会分科会報告
       「中国における機械販売の展望と問題点」
           平成16年6月20日
     鈴木貴元(UFJ総合研究所調査部研究員)
     佐々木隆彦(UFJ総合研究所国際経営開発部チーフコンサルタント)
     香川玲子(UFJ総合研究所企業戦略部コンサルタント)
           発表者 鈴木貴元

 この三人の名前は何を意味するのか。常識に従えば、署名であり、「中国における機械販売の展望と問題点」、即ち『中国市場での販売課題と市場戦略』は、鈴木貴元、佐々木隆彦、香川玲子の共同著作であるという主張であろう。また、社内で上役の佐々木より鈴木の名前を前に配してあるのは、鈴木貴元が中心になって佐々木隆彦、香川玲子とともに執筆した、それを鈴木貴元が発表する、と主張していよう。これ以外の解釈がありえようか。

 ◆『中国市場での販売課題と市場戦略』は法人著作で、個人の署名は何処にもない。
 ◆ 学会報告レジュメには鈴木貴元、佐々木隆彦、香川玲子の署名がある。即ち、法人著作を個人の著作と偽っている。

 これは詐術である。鈴木貴元研究員は買文し、転売した法人著作を自分の物として学会報告をしたのである。中国経済学会は、一体全体どのようなものとして、鈴木報告を受理したのであろうか。(なお、佐々木隆彦と香川玲子とは中国経済学会員ではない。また、鈴木貴元が佐々木隆彦と香川玲子の了解を受けているかどうかは別のUFJ総合研究所内部の問題である。)

 宮崎衛夫常務取締役国際本部長から私への2004年8月16日付書簡にも、証言がある。
 「涯FJ総合研究所の研究員が6月20日(日)に大阪で開催された『中国経済学会』で、日本機械輸出組合発行の2003年度調査報告書『中国市場での販売課題と市場戦略』を日本機械輸出組合大阪支部の了解を電話で得て発表した」。
 宮崎常務は逃げを打っていて、主語を伏せている。書簡の文脈では、主語はUFJ総合研究所ともとれるが、学会報告をしたのは鈴木貴元以外ない。
 次いで、日本機械輸出組合の了解を得て学会発表されたという事実が指摘されている。ここにも主語がない。電話をしたのは鈴木以外の誰があろう。電話を受けたのは日本機械輸出組合大阪支部の元岡道孝か、日本機械輸出組合アジア市場・機械産業対策懇談会座長貴田捷雄(三洋電機戦略ユニット担当部長)のいずれかと考えられる。鈴木は何を、どう了解を得ようとしたのか。
 そこでどんな会話がなされたかはともかく、この奇態を根底で支えていたのは、『中国市場での販売課題と市場戦略』は鈴木貴元が執筆したオリジナルな著作であるという著作者人格権に対する強固な信念であろう。ありていにいえば、俺が書いたものだから、会社で使おうが、お客さんの手に渡ろうが、俺様固有のものであり、学会発表に使って何をはばかることがあるか、という言い草である。俺様固有のものを、日本著作権法では著作者人格権と呼んでいる。他人様固有のもの俺様のものとすれば、無論、日本著作権法違反となる。
 さらにケッタイなのは、涯FJ総合研究所がこの学会報告をサポートしていることである。宮崎衛夫常務取締役国際本部長は、事後になっても「日本機械輸出組合大阪支部の了解を電話で得て発表した」ことを容認して恬として恥じない。これは、スターエコノミストをつくり売り出し、研究所としての擬似権威を高める総合研究所商法がもたらした所産であろう。中国経済学会の「名誉と権威」は、涯FJ総合研究所と鈴木貴元によって蹂躙されていないだろうか。

 以上に露呈した重大事を総括する。   
第一に重要なことは、UFJ総合研究所名の法人著作を鈴木貴元が我が物として学会発表したことである。
第二には、その法人著作が金で買い取ったもので、しかも第三者に転売したシロモノであったという事実である。
第三に重要なことは、その法人著作が盗作であったという事実である。鈴木は、黄磷先生の『中国WTO加盟後の中国市場』を盗作した「第2章 中国流通・物流の概要」の中身を、ほかならぬ黄磷先生の眼前で学会報告したのである。無論、黄磷先生はその時その場で、「第2章 中国流通・物流の概要」の盗作の事実を指摘した。宮崎2004年8月16日付書簡もこれを確認している。
「〔鈴木貴元が〕発表したところ、コメンテーターとして出席していた神戸大学大学院経営学研究科の黄教授から、『同報告書第二章95ページの図表108に間違った出典記載がある。また、その前後の文章構成と表現が、自分(黄教授)が編著した《WTO加盟後の中国市場》(蒼蒼社、2002年)と酷似している。図表の出所を改ざんしたのは、盗用を隠蔽するためではないか』という指摘を受けました」。
 以後、盗作事件が公然化した。

《附》中国経済学会は、学会の「名誉と権威」に傷がついていないかどうかを確かめてみたら如何か。この点については改めて南亮進会長と理事諸士に問いただしてみたいと考えている。
中国経済学会会則 第10条 会員は、以下の場合にその資格を失う。1.3年間継続して会費を滞納した場合  2.本会の名誉と権威を著しく傷つけたと理事会が認めた場合


 【資料1】UFJ総研宮崎衛夫常務取締役国際本部長からの2004年8月16日付書簡


 【資料2】2004年度 中国経済学会全国大会分科会報告:「中国における機械販売の展望と問題点」
3ページ以降はこちら>>

 【資料3】鈴木貴元UFJ総合研究所宮研究員の2004年の業績(EXCELファイル)



      
<目次>へ