中国を読み解く本・毀誉褒貶
[15] 2006.4.6
(中村公省/21世紀中国総研事務局長)
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『メイド・イン・シャンハイ―― 躍進中国の生産と消費』

丸屋豊二郎、丸川知雄、大原盛樹著

岩波書店 2005年刊)

 2001-2005年の5年間に上海のGDPは倍増した。この超高度成長は投資と輸出が主導していて、そのリーディングセクターはパソコン、半導体などのIT産業と自動車及び自動車関連産業である。丸川知雄東大助教授執筆の「第1章 長江デルタ地域のIT産業」と「第2章 長江デルタ地域の自動車産業」では、この成長エンジンの内情が実踏調査・分析されている。
 
画像:『メイド・イン・シャンハイ―― 躍進中国の生産と消費』の表紙
 
 驚くべきことに今や世界のノートパソコンの6割以上が上海経済圏でつくられている。メーカーは21世紀に入って大挙して台湾から上陸した台湾系企業で、彼らはデル、HP、東芝などのブランド品をODM(相手先ブランドによる設計・製造)している。例えば、デルは福建省アモイに工場があるが、実はノートパソコンは上海の隣の江蘇省昆山市にある仁宝が受託生産している。デルは完成品に中央演算素子を差込み、ソフトの読み込みや動作確認というわずか数分間の組立作業をしているだけである。(27-28p.)HP、東芝、富士通、レノボ(旧IBM)などの世界ブランド品のほとんどは同様な台湾メーカーのODMによって製造されている。
 自動車では上海VW、上海GMという組立メーカーが上海に拠点を構えている。中国パートナーは「場所貸し業者に近い存在になりつつある。」(58p.)しかし、VWやGMの底辺には広大な部品サプライヤー群が形成されていて、上海経済圏の産業力を下支えしている。「競争にもまれているうちに、有能な人材を引っ張ってきたりして段々と実力をつける会社も現れ、なかには自動車メーカーに直接部品を売るところにまで成長した会社もある。」(65p.)そうした貪欲な部品メーカーのチャンピオンである乗用車組立メーカーも急成長している(浙江省吉利集団、江蘇省奇瑞集団)。
 「第3章 浙江省の産地ものづくりと競争力」では、大原盛樹アジア経済研究所研究員が、自動車・二輪車部品の集積地である浙江省台州市玉環県と金型の集積地・浙江省寧波市北侖地区および台州市黄岩地区をフィールドワークしている。ともに民営地場の企業経営現場の意気込み・ため息を髣髴させていて、生きた産業研究成果を享受できる。また、「第4章 市場としての上海の魅力」は、丸屋豊二郎前ジェトロ上海センター所長の筆になるもので、「上海夢華録」の趣がある。なんと、「2010年には上海市民のほとんど(1200万人)が中間層の仲間入りを果たすことになる。」(136p.)ここで、中間層とは外資企業の販売ターゲットとなりうる所得階層のことである。
 

          
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