中国を読み解く本・毀誉褒貶
[16] 2006.6.1
(中村公省/21世紀中国総研事務局長)
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『中国製造業のアーキテクチャ分析

藤本 隆宏・新宅 純二郎【編著】

(東洋経済新報社 2005年5月刊)

 アーキテクチャとは、ものづくりにおいて①製品の構成部品(モジュラー)と②部品間の結合部分(インターフェース)とを、いかに設計・調整するかに関する基本的設計構想のことだと定義される。
 
 画像:『中国製造業のアーキテクチャ分析』の表紙
 
 アーキテクチャは二つに大別される。一つはインテグラル型(擦り合わせ型)。製品ごとに一から部品を最適設計・作製し、部品間の相互調整をつけるタイプで乗用車がその典型である。もう一つはモジュラー型(組み合わせ型)。既製部品を寄せ集めれば製品ができるといったタイプで、パソコンがその典型である。
 中国輸出の太宗品はパソコンで、その製造企業は主に富士康集団、広達集団など台湾投資EMS(電子製品受託製造サービス)である。情報技術の蓄積のない中国で最先端のIT 製品の製造が可能なのは、パソコンが市販部品を調達すれば組み立てられるモジュラー型製品だからである。台湾パソコンメーカーは超大規模組立工場と部品供給協力会社を従えて「祖国」に上陸し、廉価労働力をフル活用して、アップル、デル、HP などブランド品の製造を一手に引受けた。大陸地場企業の成長も著しく、IBM パソコン部門を買収した聯想(レノボ)はその代表である。
 モータリゼーションの到来で中国産業を主導しているのは乗用車メーカーである。フォルクスワーゲンの一汽大衆、上海大衆+ GM の上海通用、ホンダの広州本田、日産の東風汽車、トヨタの天津一汽など世界メーカーが中国に結集してフルラインで製造をはじめた。乗用車はインテグラル型で、中国地場メーカーは独力で欧米製品と拮抗する高品質の製品を作ることはできない。
 ところで、中国特有のものづくりの一大特徴は、もともとはインテグラル型であった製品を、モジュラー型に換骨奪胎したところにある。その手法は、コピーと改造を通じてインテグラル型製品の「まがい部品」をつくりだし、それを汎用部品のようにして組み立てる「擬似オープン・アーキテクチャー」である。典型例はオートバイで、「大部分がホンダ、ヤマハ、スズキが過去にリリースした十数種類の完成車の模倣版および改造版である」(58p.)。同様な模倣・改造は中国地場メーカーによってテレビ、エアコン、冷蔵庫、トラクター、小型トラックなどで繰り返されている。
 安価な実用品づくりが擬似オープン・アーキテクチャーの真骨頂であるが、中国はなお悪貨が良貨を駆逐する市場レベルにある。二輪車メーカーの力帆集団がついに乗用車市場で安売り販売に参入したが、中国地場企業の中から「世界のホンダ」が育つかどうか、戦国時代にある中国産業戦線から目が離せない。
 

          
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