中国を読み解く本・毀誉褒貶
[17] 2006.7.18
(中村公省/21世紀中国総研事務局長)
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『中国ビジネスこれから10年―
主要産業の成長力を占う

日本経済研究センター編著

(日本経済新聞社 2005年刊)

 日本企業にとって対中国ビジネスには主に三つのパターンがある。第1には、日本で生産した製品を中国に輸出する形で、成長著しい中国製造業の需要でうるおった鉄鋼、化学、電子部品、海運、造船などのいわゆる「中国特需」がその典型である。第2 には、日本の20 分の1 と言われる労働力を利用して中国で生産し、製品を欧米に輸出する、あるいは日本に持ち帰るパターンで、繊維、電機をはじめとする中国進出企業が行っている輸出加工業である。そして第3 には、中国でつくって中国国内市場で売るパターンで、乗用車生産のように中国に技術的蓄積のない製造装置・ノウハウを持ち込んで、その製品を現地で中国人に販売する製造・販売業である。
 
 画像:『中国ビジネスこれから10年―主要産業の成長力を占う』の表紙
 
 三つのビジネスパターンのうち、第1 の素材・部品の輸出は中国の高度成長が続く限り需要があり予測は比較的たやすい。これから10 年の間に中国のGDP は日本を追い抜き、一人当たりGDP では中所得国並み、上海においては高所得並みになるであろう。その成長需要の大きさに応じて、日本企業は「中国特需」の持続を期待し得る。
 第2 の輸出加工基地としての中国ビジネスは外資依存の「世界の工場」の実像であるが、いまやこれは中国政策当局によって克服すべき対象と化しており、自前の技術、自前のブランドをもつグローバル企業の育成が声高に叫ばれている。無論、その核心はイノベーション如何にあり、ハイアール、TCL、レノボなど先進大企業をはじめとする中国企業の研究開発力の見極めが予測のカギとなる。これに対しては、本書の「第5 章 技術開発戦略」で丸川知雄東大助教授は極めて厳しい予測を下している。
 「基礎のない中国企業が核心技術や基幹部品から自主開発するのは経済的にペイしないため、政府が笛を吹いても企業は踊らない」(113p.)
 第3 の中国でつくって中国で売るビジネスの成否は、中国市場の成熟如何にかかっている。現状では13 億のせいぜい4-5%の富裕層を対象とするビジネスに甘んじている企業が多いが、今後10 年の間にどこまで市場が広がるのか。これに対して、本書の「第3 章 5-10 年後の市場、中間層の拡大で大幅に広がる」(朱建栄東洋学園大教授)は超楽観的な見通しをしている。これに対して、第1 章(関志雄野村資本市場研究所シニアフェロー)のほうは「5 年から10 年のスパンでは、所得格差や地域格差が大きく縮小することは見込まれない」と断言している(16p.)。一読者としては、後者の見方にくみしておきたい。
 

          
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