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     第18号 2010.12.27発行 by 岡田 充
    馬再選に弾み、中国は柔軟政策
台湾5都市長選を読む


 「たかが地方選挙じゃないか」と高をくくってはならない。11月27日に投開票が行われた台湾の5直轄市長選挙のことである。選挙結果は、国民党が台北、新北(旧台北県)、台中の3市で勝ち3勝2敗と現状を維持する結果となった。馬英九政権誕生後、国民党は選挙で連敗続きだっただけに、退潮傾向にようやく歯止めがかかったようにみえる。しかし得票率をみると5都市全体で野党、民主進歩党(民進党)が49・9%と、国民党の44・5%を超え大善戦したことが分かる。国民党は「試合では勝ったが勝負に負けた」のである。
 さて読者の関心は、今回の選挙結果が2012年の次期総統選挙にどのような影響を与えるのかにあるだろう。今回の選挙は台湾の人口の6割を占めるだけに、台湾全体の有権者の意思がかなり反映される半面、「候補者の資質を含むローカルな視点が前面に出る」から「両岸関係の議題はいくつもの争点のひとつでしかない」という見方も成立する。同時に大国化する中国の存在は、台湾経済と内政を左右する大きな要因であり続け、各種選挙に表れる民意も常に中国の影を映す。両岸は6月に経済協力枠組み協定(ECFA)に調印。国民党はこれが台湾経済の回復に大きく貢献し、経済回復と選挙結果はかなりの因果関係があると見ている。選挙結果は「まだ通過点」にすぎないとしても、再来年の総統選をみる上で幾つかの変化がみえる。大胆に予測すれば、「馬英九再選に弾みつく」と言ってよい。その理由は①対中関係改善は台湾経済の回復に結び付いており、有権者は対中関係の悪化を望まない②与野党の支持率は依然として大きく二分され、選挙結果を決定する要因は「敵失」③民進党は世代交代が進み、総統候補者の選出と対中政策策定という新たなハードルを超えねばならない―などである。選挙結果を分析しながら、これらの論点を展開すると共に、北京の台湾政策を展望する。

(表1) 5都市市長選の結果(得票率)
台北市 新北市 大台中市 大台南市 大高雄市 合計
国民党 55.65% 52.61% 51.12% 39.59% 20.52% 44.54%
民進党 43.81% 48.88% 47.39% 60.41% 52.80% 49.87%


ECFAと経済好転
 「台北、新北市は国民党がとる。だから5対3で国民党は現状を維持。なんなら10万円賭けてもいいですよ」。こう自信たっぷりに予測したのは東京の台湾外交筋。投票日約一週間前のことである。表1を参考にしながら、藍と緑が接戦を展開した台北と新北市の選挙を分析する。台北市長選挙は、再選を目指す国民党の郝龍斌と民進党の次期総統の最有力候補とされる蘇貞昌の一騎打ちとなった。郝は「高飛車で周囲を身内だけで固めている」(地元記者)と人気がない。一方の蘇は、台北県(現新北市)で2期県長を務め行政手腕がある。
 蘇は、(国民党)の牙城の台北で当選しないまでも、陳水扁が2期目を目指す台北市長選挙(1998年)で獲得した45%の高得票をあげ、12年の総統選挙で民進党候補のキップを手にして政権奪還に挑戦するというシナリオを描いていた。
一方の新北市は、台北のスプロール化が進む最大の人口の選挙区。国民党は、人気のない現職に替え、馬の後継者として呼び声の高い若手の朱立倫を擁立、蔡英文・民進党主席の接戦が続いた。事前の世論調査結果をみても、民進党に勝機は十分あり「国民党で安泰なのは台中だけ。場合によっては民進党が4対1で勝つ」と予測する現地メディアもあった。
先の台湾外交筋に自信の理由を聞くと「対中政策と経済好転」という答えが戻ってきた。昨年はマイナス1・93%まで落ち込んだ台湾の経済成長率は、ことしは9・98%のプラス成長と大幅回復、その原因の一つが中国と6月に締結したECFAにあるという見方である。行政院主計処がこの成長見通しを発表したのは、投票日約10日前。選挙への効果的タイミングを狙ったことは言うまでもない。地方選挙で敗北続きの馬政権が、今回の選挙で「起死回生」を図り、次期総統選挙での再選につなげるという強い意思の表れでもある。
 一方の民進党の政策はどうか。従来は地方選挙でも、国民党に「統一派」のレッテルを張り「対中政策」を争点にしてきた同党だが、今回はECFAや対中政策を争点にはせず、中間・浮動票の開拓に力を注いだ。経済の復調が鮮明になる中で、ECFAや対中経済政策を攻撃すれば、逆効果になると踏んだのだろう。このほか、国民党の辛勝につながったと思われる要因を挙げれば(1)選挙戦終盤の11月、陳水扁前総統の汚職裁判での有罪確定(2)最終日に発生した連戰元国民党主席の息子、連勝文への銃撃事件で、国民党に同情票―が挙げられる。銃撃事件の投票行動への影響については「聨合報」、「中國時報」の民意調査で「影響を受けた」との答えがともに4%だった。

美麗党世代の後退
 次に総統選との関係を、与野党のリーダーの浮沈から分析してみよう。第1に民進党の蘇貞昌(63)は、得票率が目標の45%どころか43・8%と、国民党の郝龍斌(58)に11ポイントもの差(表1参照)をつけられ大敗。次期総統候補レースから後退した。一方、蔡英文(54)は新北市で破れたものの47%の得票率をとり、国民党の次世代リーダーの朱立倫(53%)に肉薄した。また台中では民進党秘書長の蘇嘉全(54)が、「安泰」視された国民党の胡志強(51・1%)を48・8%まで追い上げた。この結果、12年次期総統選では、民進党はこれまで有力視されてきた蔡・蘇貞昌コンビで出馬する可能性は低下し、新たなコンビ作りに迫られている。蔡が組むコンビには蘇嘉全の可能性もある。
 これは単なるリーダーの浮沈のみならず、民進党にとって歴史的な世代交代を意味するかもしれない。蘇貞昌は陳水扁、謝長廷(元党主席)と並び、台湾民主化運動の出発点ともいえる1979年の「美麗島事件」の被告弁護士を務め、86年の党結成に参加した「第1世代」。彼ら「美麗島」世代のリーダーは、自分たちを国民党独裁の受難者と規定し、濃淡はあれ台湾独立ナショナリズムと分かちがたい政治傾向がある。これに対し蔡英文は、英国留学組の学者出身。李登輝政権末期に「2国論」策定に参与したが、イデオロギーにとらわれず、美麗島世代に比べてより現実的な見方をする。今度の選挙でECFAや対中政策を争点にせず、中間・浮動票の開拓に傾注したことも、彼女の脱イデオロギー的な政治傾向と関係があるかもしれない。
 
 前桃園県長(45)
台湾行政院HPから
 第2に国民党。2000年の総統選挙で敗北した国民党は、馬英九を新リーダーに「統一」イデオロギーから脱却、台湾優先と現状維持路線を打ち出して政権復帰した。これを支えるグループが外交部長を経験した胡志強・台中市長(62)と朱立倫・前桃園県長(45)ら「中堅世代」であった。今回の選挙で、この2人の明暗ははっきり分かれる。台中で「楽勝」と見られていた胡志強は、民進党秘書長の蘇嘉全に薄氷を踏む戦いを強いられた。胡はかつて脳梗塞を起こし、健康不安がささやかれるだけに、総統選レースに残る可能性は低下した。これに対し朱は蔡の肉薄を許したとはいえ、台湾最大の選挙区で勝利にこぎつけたことで、2016年の「次の次」の総統選挙で馬英九後継として国民党候補になる最短距離に歩を進めた。その時、朱はまだ55歳である。
 選挙が終わると、台湾メディアから蘇貞昌に関する報道がめっきり減った。現地の記者は「新北市で人気のなかった現職に替えて朱立倫を持ってきた国民党の戦略的勝利。これをみて蘇貞昌はあわてて台北での出馬を決め、蔡英文を新北市候補に追いやった。もし蔡が台北で出馬し、蘇が新北で出馬していれば民進党は二つともとれたかもしれない」という見方を紹介した。

「16字方針」は変わらず
 中国の反応はどうか。台湾工作に当たる旧知の中国当局者は、選挙結果について「ひとまずほっとした」と安堵感を漏らした。馬政権になって懸案だった「三通」が実現。ECFA締結にもこぎつけ、それが結果的に台湾経済浮揚につながり、選挙にも好影響をもたらした―。台湾政策が「良性循環」をもたらしているという自負である。ことし1年の中国外交は、尖閣事件をはじめ、南シナ海の領土紛争、黄海での米韓演習をめぐる米国との摩擦など周辺諸国とのあつれきが目立ち、対外イメージが大きく損なわれただけに、台湾政策は北京にとって成功した数少ない対外政策であった。
 国務院台湾事務弁公室スポークスマンは、選挙翌日「二年来の両岸関係の改善と平和発展は、両岸の同胞に実質的な利益をもたらし、平和発展に対する支持は、両岸同胞の共通認識になった」という談話を発表した。「良性循環」が、選挙でも望ましい結果を生み出したことを率直に喜んでいることが滲む。中国が引き続き、過去二年来の台湾政策を継続する意向の表明といってもよい。
 二年来の台湾政策とは何か。台湾事務弁公室の楊毅スポークスマンは12月15日の内外記者会見で、「92年合意」の堅持と、「台湾独立に反対」することが「両岸関係の基礎と前提」と述べた。さらに「相互信頼を確立し、争点を棚上げし、小異を捨て大同に就き、共同利益をともに創造する」(建立互信、擱置爭議、求同存異、共創雙贏)という「16字方針」を繰り返した。これは胡錦濤が08年4月29日、北京で国民党の連戦名誉主席と会談した時に述べた、新台湾政策の原則を16文字の漢字で表現したものであった。
 楊は、「92合意」と「台独反対」を「基礎と前提」と表現した。92合意とは、中台交流窓口機関が、1992年香港協議で達成した了解事項である。合意の内容について、台湾側は「双方とも『一つの中国』は堅持し、その解釈は各自に委ねる」(一中各表)。一方、中国側は「双方とも『一つの中国』を堅持」(一中原則)を確認したとしており、双方がそれぞれ異なる解釈をしている。つまり「一つの中国」とは、「中華人民共和国」なのか、あるいは「中華民国」かという争いは棚上げする「主権棚上げ論」である。「主権と領土」に関して強硬姿勢で臨む北京にとっては譲歩であろう。
 もうひとつの「台独反対」は、民進党を含めた台湾独立派へのけん制であり、同時に「現状維持」なら「容認できる」(反対しない)という柔軟姿勢である。馬政権も就任以来、統一は主張せず「台湾海峡の現状維持」を強調。これに対し胡は08年12月、「平和統一」に替え「平和発展」のキーワードを用い、新台湾政策(胡6点)を発表するのである。


民進党の中国政策
 では「92合意」と「台独反対」に対する野党民進党の姿勢はどうか。民進党は「92合意は統一路線」として反対し、「台湾の将来は台湾人が決めるのであり、台独反対は内政干渉」というのが基本的立場だ。蔡英文主席のリーダーシップが強まる民進党は、来年5月の党大会で総統候補者を決定し、新しい中国政策を盛りこんだ「10年政綱」を発表する予定である。蔡英文は5月2日行われた民進党主催のシンポジウムで、4原則の対中戦略を明らかにしている。具体的には①台湾と中国の関係は「差別でなく互恵、衝突ではなく平和、従属ではなく対等」②グローバル戦略上のバランスと地域安保の視点から、台湾を中国が設定した「一つの中国」の枠組みにおとしめない③対中政策の制定・執行は民主的な手続きを重視して、重要な政策決定では国民投票に諮る④自由、民主、人権の価値を堅持し中国との相違を明確化―。
 中国との関係改善が経済と人の交流を加速し、結果的に台湾経済の浮揚につながったのが事実なら、民進党支持の有権者もまた、陳水扁時代のような関係悪化は望まないであろう。蔡英文は、独立ナショナリズムから脱却し「中間路線」へとシフトしつつあるようにみえる。しかし党内には独立を主張する「基本教義派」が約3割いるとされ、彼女がいくら現実主義者といっても、「92合意」と「台独反対」を受け入れるとは考えにくい。しかし関係改善と両岸交流という両岸関係の基調を変えることは、次の総統選で民進党にマイナスに作用する。蔡は「10年政綱」策定に向け、羅文嘉・前立法委員や天安門事件の学生運動リーダーの王丹をブレーンにし、対中政策を練るシンクタンク作りを開始した。どのような新中国政策とキーワードを盛り込むのか注目したい。
 北京は民進党の変身に過剰な期待はしていない。5都市選挙の結果に表れたように、台湾民意は与野党支持をめぐり大きく二分されている。国民党の腐敗と硬直が、民進党への政権交代を促し、逆に陳水扁の汚職事件と頑な台独ナショナリズムは、国民党に政権復帰を許した。こうしてみると、選挙結果に表れる台湾民意の大要因のひとつは「敵失」であることが分かる。

政治協議は先送り
 5都市選挙は民進党に世代交代を促した。有力な総統候補者の差し替えが避けられない以上、12年の次期総統選は馬英九再選に有利な状況が生まれたと言えるだろう。だが台湾民意をめぐる「敵失の方程式」が正しければ、民進党の政権復帰の目は十分ある。中国もそうした事態を想定して同党とのパイプ作りを開始してはいるが、本音は国民党の政権継続という「安全パイ」である。だから馬に過剰な政治的要求をして追い込めば、国民党敗北を覚悟しなければならない。馬も中国も、任期中に統一を話し合う冒険はしない。さらに、両岸の法的な敵対関係を終わらせるための政治協議や和平協定締結(馬の公約であり、胡錦濤も同様の主張)にも慎重に対応せざるを得ない。中国は少なくとも12年までは二年来の柔軟路線を継続するだろう。これには台湾防衛のカギを握る米国も賛成している。微妙なバランスの上にある両岸関係は、米中関係と日中関係にも影響を及ぼす。悪化すれば台湾問題が米中や日中の大きな火種になり、好転すれば「ウィンウィン」の関係をもたらす。
 2011年は辛亥革命百年の節目の年である。中国は「中山(孫文)精神を発揚し、中華振興を」と「中華民族」のキーワードで、台湾との一体感を強めようとしている。台湾への大陸旅行客はことし日本(約100万人)を抜いて120万人に達し、二年後には360万人との予測も出ている。ことし3月来日した台湾事務弁公室主任の王毅は、東京での非公式懇談で「(台湾人も中国人と)同じ血が流れていることはやがて分かる。時間をかけて徐徐にアイデンティティの問題を解決する」と述べ、統一の時間表について「皆さんは10年、20年、50年後のことばかり言っているが、(関係改善は)始まったばかり」と語った

ウィキリークスの中国・台湾情報
 話は台湾選挙から、ジュリアン・アサンジ率いる「ウィキリークス」に移る。台湾、中国問題で、米国外交当局が一体どのような本音を抱いているのか誰もが関心があろう。中国のネットユーザーも、ウィキリークスの暴露に強い関心を寄せている。例えばアサンジがロンドンで逮捕された日、中国のあるポータルサイトのヒット件数で、「アサンジ逮捕」は3位だった。中国メディアが報じない指導部のスキャンダルが、白日の下に曝されるかもしれないから国民が感心を抱くのは当然であろう。これまでは驚くような情報は漏れていないが、中には台湾の政治情勢や中国指導部の政策決定過程について、興味深い公電も含まれている。既成メディアによる地道な取材が、ウィキリークスによって瞬時に暴かれ、「抜かれてしまう」時代になった。既成の大手メディアによる情報独占の時代が終わり、たった一人が立ち上げる「ネットニュース元年」を予感させる。「善しあし」や「道義論」は、公表されれば意味を失う。ここでは台湾紙などが報じた台湾・中国情報の一部を紹介したい。既報済みの情報は出来るだけ載せず、コメントも付けない。自由に読み込んでいただきたい。


「台湾は米中関係の難題」(「中央通信」2010年12月5日電)
 駐北京米大使館 クラーク・ランツ大使の2009年1月6日 国務省宛機密公電(米中国交正常化30年に当たり)馬英九政権誕生後、両岸関係は大きく改善したと評価しながら、(今後30年の米中関係を展望して)「台湾問題は米中関係で最も処理が難しいテーマであり、予期できる将来も細心の注意を持って処理すべき」「われわれは台湾が大陸と緊張を緩和する努力を引き続き支持するとともに、台湾の国際空間を増加させ、大陸の台湾向け軍事力の削減を求め続ける」「今後数年間は、我々の軍事専門家は中国への危機対応に注意を払わねばならい。また各種の外交、戦略的手段を使って、中国の台湾へのどう喝行動を回避させねばならない」

「米中関係は試練の年」(10年1月28日、米大使館公電)
 「2010年は経済の要因から米中関係は試練の年」となると指摘した上で「中国は、ダライ・ラマ(の訪米)と台湾向け武器輸出問題で強烈な不満を表明しており、その他の領域での米中協力は期待できない」
「胡はチベット問題掌握(2008年4月16日 米大使館公電)
 (中国の匿名消息筋の話を引用)胡錦濤国家主席はチベット政策を完全に掌握しており、チベット問題で中国指導部には「異論は全くない」(絶無分岐)。さらに「中国指導層にとって、チベット問題は台湾問題以上に敏感な問題」。「指導部内には台湾問題や経済発展、政治改革問題では、異なった意見を表明する空間はあるものの、チベット問題はそうではない」
「馬英九再選の可能性」(2009年6月4日 「シャングリラ対話」の際、シンガポールのリー・クワンユーが、スタインバーグ米国務副長官に)=「聯合報」12月1日
 「陳水扁は総統任期中、台湾経済を弱体化させた。馬は両岸の三通と経済振興を軸に総統選に勝利した。2012年、馬は再選されよう。蘇貞昌にも希望はあるが、勝つ可能性は高くない」「胡錦濤の台湾政策は江沢民の政策より実務的で、台湾と各種のパイプ作りを希望している。胡は柔軟で、馬の任期中は『92合意』路線を維持し、統一は話し合わないことを受け入れている」
「中共指導部は経済利益で政策決定」(米大使館公電=独週刊誌「シュピーゲル」=中央社12月9日)
 (中国のトップリーダーに通じた消息筋が米外交官に述べた話として)共産党中央政治局は集団指導の色彩が強く、両岸関係や北朝鮮問題など重要な政策決定に当たっては、25名の政治局員の全員が参与し、その他の問題は9名の常務委員が決定する。政治局内部では「合意決」(多数決ではない)を採用。総書記だけは最も長時間話す機会を与えられているが、全ての委員に否決権があり、あらゆる問題は十分な討論を経て、合意に達する。消息筋は「こうしたモデルこそ真の民主」と述べ、その目的は個人に過度の権力が集中するのを防ぐためとされる。ただチベット問題のような難しい問題になると、胡錦濤の発言のみが重視される。
 北京在住の米大使館員は公電の中で、中央政治局員の個人的な政商関係が往々にして、政策決定のカギを握るという。例を挙げると、国家安全担当の周永康は国営石油業界と浅からぬ関係にあり、賈慶林は北京の不動産人脈が豊富。胡錦濤の娘婿は「新浪網」のトップで、温家宝夫人は中国の宝石業を掌握といった具合。
「習近平は仏教、気功好き」(米大使館公電=「シュピーゲル」=聯合報12月9日)
 習近平は、汚職など金銭にはきれいで、好色でもない。ただ政治的野心だけは旺盛。仏教と気功に熱中したしたことはあるが、民主改革には関心なし。習近平に近い消息筋が明らかにした彼の人柄は「子供の頃から中央政治に上ることを考え」、父親の庇護の下で育った。彼が清華大でマルクス主義の学位を取ったのは「嘘」と、多くの高級幹部の子弟は知っている。彼の最初の結婚相手は、駐英大使だった柯華の娘、柯玲玲。しかし折り合いが悪く毎日喧嘩が絶えず離婚した。離婚後は仕事に専念、河北、福建、浙江の地方政府で研鑚を積み、福建省時代が長かったため「知台派」と見られている。地方にいた際「仏教密教」と気功に熱を入れたことがある。
 性格はプラグマティック。常に小心で、あまり心を開かず、時期を見てカードを出す。酒はあまり飲まず、有名な歌手彭麗媛と再婚後は浮いた話もなく、その点は胡錦濤と似ている。ただ彼は「中国のゴルバチョフ」ではない。民主改革には関心はなく、太子党こそ中国革命の「合法的嫡子」と考える。
(了)



 
1 小笠原欣幸「台湾五都物語
」http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/fivecitieselection2010.html
2 同上
3 「蔡主席、民進党の対中戦略4原則を強調」(2010-05-02)
http://www.dpp.org.tw/news_content.php?menu_sn=7&sub_menu=43&sn=4335
 4 中国時報(12月20日)
5 岡田充「海峡両岸論第12号」
http://www.21ccs.jp/ryougan_okada/ryougan_12.html

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