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     第46号 2014.05.16発行 by 岡田 充
    アプローチの落差浮き彫り
日米首脳会談の対中政策
 日米首脳会談である。「鳴り物入り」で報道された会談の隠れた主役が中国であり、尖閣諸島(中国名 釣魚島)であったことに異論はないだろう。それは、安倍晋三首相が共同声明に、米国の尖閣防衛義務が明記されたことを「画期的」(4月25日)と絶賛したことにもよく表れている。本当に「画期的」と言える会談だったのだろうか。24日の共同記者会見(写真下 Whitehouse HP「The President's Trip to Asia」)と共同声明の内容から読み込みたい。その上で日米同盟と「新たな大国関係」(米中関係)という2つの辺から成る日米中の「三角形」に変化は生じたのかどうかを論じる。共同声明と記者会見の内容と用語は、主として共同通信の報道に基づく。
「プラマイ」ゼロ
 結論から言うと、安倍政権にとって今回の会談は「力を背景に現状を変更しようとする」中国の脅威を煽り、日米が「対中抑止」を強化することが主要テーマであると世論誘導できた点では成功であった。日中関係を「安保」からアプローチする方法である。これに対しオバマ大統領が「日中が対話や信頼醸成をせず事態がエスカレートするのは、大きな過ちだと安倍首相に伝えた」と述べたように、米側の真意は話し合いによる平和的解決にあった。「有事に発展しないよう外交努力」を求めたのである。その結果「安保アプローチ」と「外交アプローチ」のギャップが際立った会談となった。またオバマは尖閣防衛の具体的な内容には言質を与えず、安倍周辺を落胆させた。「画期的」と自賛したい気持ちは理解できるが、バランスシートから言えば「プラス・マイナス・ゼロ」であろう。
 まず共同声明の中の、日米安保条約と尖閣諸島問題に関係する記述を列挙する。
 (1)日米両国は、事前に調整することなく東シナ海における防空識別区の設定を表明するといった、東シナ海および南シナ海において緊張を高めている最近の行動に対する強い懸念を共有。
 (2)米国は~中略~日米安全保障条約の下でのコミットメントを果たすために必要な全ての能力を提供している。これらのコミットメントは、尖閣諸島を含め、日本の施政下にある全ての領域に及ぶ。
 (3)この文脈において、米国は、尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。
 (4)米国は、集団的自衛権の行使に関する事項について日本が検討を行っていることを歓迎し支持する。


尖閣防衛を明言するか否か
 首脳会談に先立ち、多くの日本メディアが会談の最大焦点として挙げたのが、上記の4点のうち(2)の「尖閣防衛義務」をオバマ自ら発言するかどうかであった。尖閣防衛義務についてはケリー国務、ヘーゲル国防両長官らが既に公の場で何度も言及しているが、大統領自ら発言すればその重みは違う。全国紙などメディアは、オバマが到着した23日、「『尖閣に安保適用』明言へ 米大統領、防衛義務確認」などの見出しで報じた。共同通信の原稿は次のように書く。
 
 ―日米両政府は、安倍晋三首相とオバマ米大統領との24日の首脳会談に際し、沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張して挑発行為を繰り返す中国をけん制するため、日米安保条約に基づく防衛義務を確認する方向で最終調整に入った。オバマ氏が会談後の共同記者会見で表明する見通しだ。日本側は会談後に発表する共同声明への明記も米側に要請しているー
 記事は続けて「オバマ氏は来日前に受けた一部メディアとのインタビューで、尖閣は安保条約の適用範囲だとの見解を示した。この発言について、日本政府筋は『オバマ氏が共同記者会見で言及する段取りになっている』と強調した」と書いた。
この中の「一部メディア」とは読売新聞のことである。「読売」はこの日の朝刊で「オバマ大統領、中国を牽制『尖閣諸島に安保適用』」との見出しで、大統領が書面インタビューに対し、尖閣への安保適用を明言したとスクープした。共同原稿は「読売」記事の「後追い」である。ただ「読売」にそう回答したからといって、首脳会談や記者会見でオバマがその通り発言するとは限らない。「読売」には言ったが、記者会見や声明では中国を刺激しないよう触れない可能性もあるからだ。外交ではよくある「使い分け」である。だが結果的には、オバマは記者会見で発言したし共同声明にも盛り込んだ。
もう一つ記事を紹介する。来日一週間前の17日、共同通信はワシントン発で「尖閣明記『必要ない』 日本側提案に米政府」との見出しで次のように報じた。

 ―安倍晋三首相とオバマ米大統領の首脳会談で、沖縄県・尖閣諸島に対する米国の防衛義務を明記した共同文書を発表するよう日本側が提案したのに対し、米側は日本の施政権の及ぶ範囲は防衛義務を定めた日米安全保障条約の対象とするにとどめ、具体名を盛り込まないよう求めていることが17日、分かった。日米関係筋が明らかにした。
 「尖閣諸島と書かなくても安保条約の適用範囲であることは十分伝わる」との判断だが、尖閣諸島の領有権を主張する中国を過度に刺激したくないとの思惑もあるとみられる-

 結果的にこの見通しは「ハズレ」たが、誤報とは言い切れない。その後の事務レベル協議の末、ワシントンが折れた可能性があるからだ。
世論誘導のからくり
 長々と記事を引用したのは、これがメディアを利用した世論誘導の典型と考えるからである。大統領が明示的に尖閣に言及することがどれほどのニュースか、冷静に考えてみよう。そのヒントは記者会見でのオバマ自身の発言にある。尖閣を日米安保の防衛義務の対象と明言した理由について次のように答えた。

 ―われわれの立場は新たなものではない。ヘーゲル国防長官、ケリー国務長官がそれぞれ日本を訪れた際、終始一貫した立場を表明した。
 尖閣諸島の最終的な主権の決定については特定の立場を取らない。しかし尖閣諸島は歴史的に日本の施政権下にあり、一方的な現状変更の対象になるべきではない。日本の施政権下にある全ての領域が(日米安保)条約の適用対象であることは(日米)同盟の一貫した部分だ。これは新たな立場ではないー


 米国の尖閣政策は、1972年の沖縄返還時に日本に施政権を返還したが、主権については特定の立場をとらないという「施政権・主権分離」の立場であることはよく知られている。オバマはそのことを繰り返しているのだ。「新たなもの」は、大統領の口からその発言が出たことだけであり、オバマ政権の方針に何か新しい要素が付け加わったわけではない。
 ここで大手メディアの記事が、どのようにして出稿されるか内幕を少し紹介する。外交取材と記事は、日本では「霞クラブ」(外務省)詰めの政治部記者が担当し執筆する。取材源は外務省の担当部局の当局者で、日米首脳会談など一面トップ級のニュースの場合、局長など幹部が事前レクチャーする。役所側は各社の論説委員にもレクチャーし首脳会談の「みどころ」を解説する。役所のレクチャーがそのまま記事になることもしばしばある。一方、ワシントンの場合は、主として国務省とホワイトハウスそれに日本大使館が情報ソース。「日米外交筋」と書いてあれば、それは日本大使館当局者の話である。全国紙の場合、日本が絡む外交記事は、政治部出身の特派員が書く。あの「ナベツネ」もかつてワシントン特派員として「らつ腕」を振るった。
 記者クラブ制度の下で編集作業に当たる大手メディアは、役所の意を体して発信することが多い。特に日中関係のように、日本と対立する外交の場合、外務省・官邸とメディアはほぼ「二人三脚」の関係にあると言っていいだろう。外務省と官邸のレクチャーを毎日聞いていれば、記者たちの思考は、レクチャーの内容に自然と囲い込まれていく。例えば先に紹介した「読売」の後追い「共同」記事は次のような表現で始まる。
 「日米両政府は、安倍晋三首相とオバマ米大統領との24日の首脳会談に際し、沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張して挑発行為を繰り返す中国をけん制するため~」。
 「挑発行為を繰り返す」中国という断定的な形容が冒頭部分に表れる。恐らく記者は意図して書いているのではない。頭に刷り込まれた認識を「自然に」書いているのだと思う。役所からみれば楽なものだ。意のままに書いてくれるのだから。
 日米首脳会談に話を戻す。これらの記事は、首脳会談の焦点としてオバマが尖閣防衛義務に言及するかどうかにあると揃って書いた。さらに日米政府間で意見対立があると報じれば、やはり最大の焦点はここにあるのだという意識が読者に刷り込まれていく。会談直前には「読売」が、このテーマでスクープを放ち、各社が後追いする。オバマが実際に防衛義務を自ら口にしたことは、米国もまた「中国が力で尖閣を奪おうとしている」という危機感を共有したからに他ならない、と多くの読者は思い込むのではないか。これが世論誘導のからくりだ。
クリミア・アナロジー
 ではオバマはなぜ、記者会見でも共同声明にも尖閣防衛義務をうたったのか。多くのメディアは、環太平洋連携協定(TPP)交渉で、日本の譲歩を引き出す「駆け引き材料にした」(25日「共同」「読みの甘さ、誤算招く」)という見方でほぼ一致している。それなりに説得力のある見方だ。
 一方、松井彰彦・東大教授のように「クリミア半島の一件でロシアに一本とられた米国の、これ以上失点を重ねたくないという姿勢が表出した発言」(「朝日」5月10日「大国の危ういチキンゲーム」)と読み込む識者もいる。ウクライナで「弱い超大国」の姿をさらしたから、中国に対しては強い態度で臨んだという見立てである。なんとなく分かりやすい分析のように見えるが、見立ての具体的根拠を示さねば、勝手な思い込みの域を出ない。ウクライナ情勢が緊迫化する中「ロシアがクリミアを併合した。次は中国が尖閣を併合する」というアナロジーを平然と口にする「評論家」が増えた。
 共同通信が4月16日に配信したジョセフ・ナイ・ハーバード大教授とのインタビュー記事(「尖閣のウクライナ化ない」)で、ナイは「ウクライナ情勢を見て、中国も尖閣諸島を強奪するのではないか、と心配する向きがある。それはあり得ない。状況がまったく違う」と答えた。クリミアと尖閣を同列に論じるアナロジーを批判しているのだ。そもそも住民投票による独立は、中国が台湾独立を図るやり方として最も警戒してきたことを忘れてはならない。国際政治の舞台で米国に対抗して、中ロが連携するという見立ては正しくない。中国にとって対米戦略の構築こそ最優先課題であり、ロシアも日本も、米中の「新たな大国関係」の“副次的変数”にしたいはずである。
TPPで譲歩誘うのが狙い
 オバマが今回、尖閣防衛義務をうたった真意を記者会見から拾おう。
 大統領は「日本の施政下にある全ての領域が(日米安保)条約の適用対象」と述べた後、次のように言う。
 私は安倍晋三首相との会談で、この懸案の平和的解決の重要性を強調した。状況をエスカレートさせず、冷静な発言を保ち、挑発的な行動を取らず、どうすれば 日本と中国が協力して取り組めるのかを決めようとすることが重要だと力説した。
 われわれと中国の間には強い関係がある。中国は地域だけでなく世界にとって 重要な国だ。巨大な人口を抱え、経済成長しており、中国の平和的な台頭を促し続けたい。貿易や発展の膨大な機会があり、気候変動のような共通の問題で中国と取り組む機会もたくさんある。

 続いて米国記者が「(中国に対し)レッドラインを引くつもりはないか」と質問したのに対し、こう答えた。
 日米安全保障条約は、私が生まれる前に結ばれた。越えてはいけない一線を私が引いたわけではない。 日米同盟に関し、これまで歴代の政権がしてきたのと同じ標準的な解釈だ。 日本の施政権下にある領域は全て条約の適用範囲ということだ。私たちは単に条約を適用しているにすぎない。
 この発言を読めば、安倍に対し、対話による外交アプローチを求めていることがよく分かるだろう。大手メディアは、発言をどう読み込んだか。「朝日」は4月26日付けの「時時刻刻」で「ただし『尖閣諸島への安保適用』が、どう具体化されるかは不明だ。この問題に詳しい日本政府高官は『米国が有事に本当に守ってくれるか、はっきりしなかった。手放しで評価できない』と語った」と書く。また「共同」は25日の「表層深層」で「外務省関係者は『中国との対話解決を求めているかのようなオバマ氏の提案は、安保条約適用発言の効果を減殺した』と肩を落とした」と落胆ぶりを表現し、「『尖閣条項』の明記は、TPP交渉をめぐる対日カードにすぎなかったのか ―。政府内の一部にはこうした疑念の声もくすぶる」と結んだ。
 「画期的」という絶賛とは裏腹に、官邸や外務省当局者は、TPP交渉で日本から大幅譲歩を引き出すための「餌」だったのかと落胆したというのが本音であった。
晴れない日本防衛への懐疑
 では、安倍周辺はどうみたか。櫻井よしこ氏は「週刊新潮」(5月8日付)コラム「同盟があっても大事な自主独立の気概」で、大きな「読み誤り」をしている。田久保忠衛氏のTVコメントを引用ながら、米国が領有権と施政権を分けてきた従来の政策を見直して「日本の施政権の及ぶ全ての領土に安保条約第5条を適用すると宣言した。離れていたふたつをひとつにした」ことを「画期的」と評価したのである。オバマ発言を読めば、「ふたつはひとつに」なっていないことは一目瞭然である。彼女の引用誤りかもしれない。
 ただ、このコラムで彼女は「日米関係は、孤掌鳴らし難しというのが安倍晋三首相とオバマ大統領の会談を通して抱いた印象である」と、鋭い視線を投げている。きちんと両者のギャップを見ぬいていたのである。寿司屋(写真 Whitehouse HP「The President's Trip to Asia」)ののれんでの前で見せたオバマの満面の笑みを彼女は「自然発生的というより~中略~ビジネスライクな印象だった」と読む。さらに、日本訪問の後、韓国で見せたオバマスマイルは、「自然な風情を漂わせ」、「『日本を取り戻す』と頑張っている安倍首相より、歴史問題で被害者の立場を訴える朴大統領と波長が合うのではないかと感じた場面である」と書いた。ビジネスライクなオバマが、国家主義的姿勢を隠そうとしない安倍と肌合いが合わなかったことは、以前から指摘されてきた。
 安倍周辺の国家主義的傾向の強い論者は、日米安保強化による中国への対抗は支持している。しかし彼らの多くは、米国が本当に日本を守ってくれるかどうかについては懐疑的だ。だから「自主防衛」強化を主張する一方、集団的自衛権の行使容認によって日本が米軍事力の補完役を果たし、その見返りとして米国の日本防衛を期待する「二つの軌道」を用意している。今回の首脳会談におけるオバマ発言は、彼らの疑念を晴らすことはできなかった。
米国を引っ張り合う日中
 冒頭で、首脳会談の隠れた主役は中国であり尖閣問題だったと書いた。繰り返すが、安倍外交は「中国の脅威」に世論を向けさせることには成功したが、「外交アプローチ」を求めるオバマと、「安保アプローチ」の安倍との落差が浮き彫りになった。東アジアでは今、大国間の重心移動が始まっている。冷戦時代は日米安保の存在を「容認」してきた中国は、21世紀に入り日米同盟を対中封じ込めの「冷戦思考」と批判、米国との戦略関係構築を最重視している。
 中国は日米首脳会談をどうみているのか。中国外務省の 秦剛報道局長は25日の定例記者会見で「地域の安定に良くない影響をもたらすもので、重大な懸念を示す」と批判。中国外務省は同日、日本の木寺昌人駐中国大使と米国のボーカス駐中国大使を呼び「厳正な申し入れ」を行い抗議した。新華社電によると、崔天凱・駐米大使は25日、ハーバード大での講演で、首脳会談について「日米安保条約は第三国の利益に影響すべきでない」と批判。日米同盟が冷戦時代のものだとした上で「21世紀の課題にふさわしいだろうか。このような同盟(日米安保を指す)はわれわれ(中国と米国を指す)の助けにならない」と主張した。櫻井よしこは、これらの反応を「中国は激しく反発した」とみるが、異常な反発というより「型通りの反応」であろう。
 崔天凱が「このような同盟はわれわれ(中国と米国を指す)の助けにならない」と言うように、中国は米国の影響力後退を見ながら、日米中の三角形の中で日米同盟を「骨抜き」にし、それに代わって米中の「新たな大国関係」を基軸にして、日本を米中関係の「副次的変数」にしたいところだろう。一方、日本政府は日米同盟を基軸にした三角形を必死で維持ようとしている。東アジアの新旧の大国である中国と日本が、米国を「引っ張り合う」構図が見える。尖閣では「施政権・主権分離」の立場をとり続けているのと同様、大国間の重心移動の中でも、米国は日中間でバランスを保つ絶好のポジションにいる。
米国の価値高める結果に
 では米中の「新たな大国関係」とは何か。日米同盟に替わり三角形の基軸に成り得るだろうか。この関係に明確な定義があるわけではない。中国の検索エンジン「百度百科」は「相互尊重と相互利益の協力パートナーシップを核心的特徴とする大国関係。台頭する大国と既成大国の間で、衝突と矛盾を処理する新たな方式」と書いている。2012年5月3日、北京で開かれた中米戦略・経済対話で「新たな大国関係」構築に向けた中米の協力拡大を確認したとされる。
 識者の声も聞いてみよう。ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授は、先のインタビュー記事の中で「一種のスローガンだ。習近平国家主席の言い方では、大国同士が争う不毛なゼロサムゲームに陥るのを避けることを意味しているようだ。だとすれば、良いことだ。国際金融の安定化、地球温暖化、感染症対策などで米中が協力し、さらに日本など各国の力を借りることは大切だ」と語っている。
 ナイはさらに「ただし、『新しい大国関係』がいわゆるG2(米中による覇権)を意味するのなら、受け入れられない。米国側はG2を目指すつもりはない。太平洋を米中で分割するなどとんでもないと、はっきり言ってきた。これからどう展開するか、見定めていく必要がある」「米国は中国の覇権主義を許すつもりはない。東アジアの安定の基礎は日米安保であり、日米は同盟国であり続けることを忘れないでほしい」などと述べ、日米同盟基軸論を展開した。
 ナイの頭の中では、経済的に台頭する中国の存在を重視しながらも、米中の「新しい大国関係」が日米同盟に替わる存在とは考えられてはいない。言うまでもないが、それは三角形の米中の辺の比重が高まっていることを否定するわけではない。冷戦期のように日米同盟だけが、日米中の三角形を規定できる時代は終わった。
 日米首脳会談を終え、三角形の変化を総括するなら、次の2点を指摘したい。
 1、日本と中国が米国を「引っ張り合う」構図がよりはっきりし、バランサーとしての米国の価値を高める結果となった。当面、米国は日中のバランスをとりながら三角形を規定する役割を演じることができる。
 1、安倍政権には、三角形のもう一つの辺である日中関係の視点が欠落している。世論を「中国の脅威」に誘導することに成功したとしても、それは日中間の「安保のジレンマ」を加速するだけであり、結果的には日中双方にとってマイナスどころか危機的な状況を生む結果を招くだけである。日中間で中断したままの対話の再開と関係改善に向けた取り組みこそが、地域の緊張を和らげる道であることを強調したい。(了)

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