<目次>へ戻る
XZの  日中メディア批評  第10号
          
.2009.3.13発行

胡錦濤系若手ホープ、実は江沢民後ろ盾のおい?

 インターネット百科事典「ウィキペディア」(Wikipedia)は有意義なプロジェクトだが、分野によっては正確性に不安のある記事もある。中国指導者関係の記述(3月8日の時点)をざっと眺めて、気がついた点を以下に上げる。
◆根拠は「族姪」説
 ウィキペディアは中国共産党広東省委員会の汪洋書記(党中央政治局員)について「海峡両岸関係協会会長などを務めた汪道涵は伯父」としている。事実とすれば、胡錦濤国家主席率いる共産主義青年団(共青団)派の若手ホープが実は、同派にとって煙たい存在である江沢民前国家主席の後ろ盾といわれた人物(故人)の親族だったということになる。
 中国メディアは、現役指導者が誰の子だとか、誰の親戚だとか報じることが少ない。汪洋は2007年末、広東に赴任して以来、「科学的発展観を実践する先兵になろう」「生産力が立ち遅れた企業は淘汰されて当然」などと目立つ発言が多いので、その言動は香港などの非大陸系中国語メディアでも頻繁に報道されているが、「汪道涵のおい」という話は出ていない。
 また、汪洋が汪道涵のおいであれば、李源潮(党中央組織部長・政治局員)や劉延東(国務委員・政治局員)と同様に「共青団派だが、太子党でもある」と評されるはずだが、そのような論評はない。
 ネット上で調べたところ、一部の香港紙が過去に「汪洋は汪道涵の『族姪』である」と書いている。しかし、「族姪」(zuzhi)は「おい」ではない。普通は、遠い親せきで、世代が下の者を指す。この報道は「汪洋は汪道涵と同族だ」と言っているだけで、「おい」とは特定していない。そもそも同族説も確かなものかどうか分からない。
 習仲勲元中央書記局書記の息子である習近平が共青団派のスーパーエリート、李克強を追い抜いて、若手ナンバーワンの座に躍り出たことからも分かるように、太子党は政治的に独特の強さを持つ。つまり、中国政界では、有力者と血縁があるかどうか、それがどの程度近いかどうかが重要な要素になっている。それだけに、指導者の血縁関係に関する記述には特に注意が必要であろう。

◆台湾WHO加盟容認の事実なし
 胡錦濤の欄では、上海閥(江沢民派)の影響力維持を示す事例として、胡が08年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)で共青団の後輩である李克強を国家副主席に起用できなかったことが挙げられている。しかし、実際には、次の総書記レースで先頭を走っていた李が習近平に抜かれたのは全人代ではなく、07年10月の第17回党大会だった。
 習と李はいずれも政治局常務委員に昇格したが、序列は習が6位、李が7位。しかも、習は党務を仕切る中央書記局常務書記(胡が総書記就任前に務めた)に就任したが、李は政治局常務委で唯一、具体的な担当がなく、この時点で「習副主席」「李副首相」の政府人事は固まっていたとみられる。常務委員ポストの筆頭副首相が黄菊の死去で空白のままになっていたからだ。転機は全人代ではなく、党大会だったのである。
 また、ウィキペディアはこの欄で、胡が08年5月、呉伯雄国民党主席と会談した際、台湾の世界保健機関(WHO)加盟を容認したと記しているが、これは全くの間違い。中国の公式報道によると、胡は会談で、いずれ台湾の国際活動参加問題について話し合う時に「WHOの活動への参加問題を優先的に討議する」という既定方針を口にしただけで、台湾側でも「胡が台湾のWHO加盟を容認した」という発表や報道はなかった。
 中国共産党政権にとって、台湾当局が「中華民国」として国際機関に加盟するのは「二つの中国」をつくり出すこと、「台湾」として加盟するのは「台湾独立」であり、いずれも容認できるはずがない。

◆朱鎔基は4段飛び
 このほか、字句の誤りは以下の通り。
 「温家宝」の欄の「地質鉱山部」(誤)→「地質鉱産部」(正)
 「賈慶林」の欄の「慰健行」→「尉健行」
 「曽慶紅」の欄の「党中央委員会弁公室」→「党中央弁公庁」
 同「北京市長・陳希同」(1995年当時)→「北京市党委書記・陳希同」
 「朱鎔基」の欄の「中央委員から三段跳びで政治局常務委員に抜擢される」の「中央委員」→「中央委員候補」
 中国高官の格は主に共産党員としての地位で決まる。一歩一歩進んだ場合、中央委員候補→中央委員→政治局員候補→政治局員→政治局常務委員と出世する(政治局員候補を経るケースは少ない)。中央委員→政治局常務委員でも珍しいのに、朱は92年、本来次官級でしかない中央委員候補から一気に常務委入りして最高指導部の一員となったことから、非常に注目されたのである。
  (ジャーナリストXZ)
Page Topeへ